【AI特許数世界4位がヘルスケアに参戦】NECのAI創薬事業を徹底解説

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです。

突然ですが、
最近、AIを売りにして創薬事業に参入しているベンチャーって多いですよね?

そんな中、実は、AI特許出願数世界4位の大企業が創薬事業に参入しています!!

その企業こそがNECです!

NECはAI関連の特許出願数が世界ランキング4位なんです。(2019年当時)

WIPO Technology Trends 2019 Artificial Intelligence より引用
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_1055.pdf

もちろん、そんじょそこらのAIベンチャーなんかよりも確かな技術力と資金力を持ちます!

そこで今回は、製薬業界に参入してきたNECについて、AIによる創薬研究への応用やその将来性について徹底解説します。

是非、NECの創薬事業の現状と、AI創薬の今後の展開を理解するためにも読んでみてください!



NECのAI創薬事業の沿革

現在、NECは創薬事業の中で、がん治療用ペプチドワクチンに絞って研究開発を進めています。

以下でNECの創薬事業の沿革を簡単に紹介します

  • 2001年6月:
    機械学習とウェット実験を組み合わせて新薬候補物質を発見する独自のAI技術「免疫機能予測技術」を開発。
  • 2014年10月:
    複数のガンで発現している2種類のがん抗原を対象に免疫を活性化するペプチドの探索を行い、日本人約85%をカバーする複数HLA型に汎用的に結合するガンペプチドを発見。
  • 2015年4月:
    ペプチドワクチンの効果を増強する新規アジュバントを山口大学と共同で発見。
  • 2016年1月:
    上記ペプチドとアジュバントを用いて、ガン治療用ペプチドワクチンの臨床研究を行うとともに、初期の安全性・有効性を山口大学で実証。
  • 2016年12月:
    NECの「免疫機能予測技術」で発見したペプチドや、山口大学との共同研究により発見した革新的アジュバントから構成されるがん治療用ペプチドワクチンの実用化に向け、治験用製剤の開発、非臨床・臨床試験、製薬会社との事業化検討を行うサイトリミック社を設立。
  • 2018年10月:
    固形がんの治療を目的とするネオアンチゲンによる個別化免疫療法において、NECのAI予測技術と、Transgeneのmyvac™ウイルスベクタープラットフォームの組み合わせを臨床的に評価することに合意
  • 2019年7月:
    ノルウェーOncoImmunity社を買収。同社は独自AIで、個別化がんワクチンや細胞治療のターゲットとなるネオアンチゲンを同定するソフトウェアを開発。
  • 2019年11月:
    スイスVAXIMM社と、ネオアンチゲンによる個別化がんワクチンの開発に向けた共同治験契約を締結。NECのAI技術とVAXIMMの経口T細胞免疫療法を活用し、個別化がんワクチンを共同開発。
  • 2022年3月:
    NEC子会社のOncoImmunity社がVaximm社のネオアンチゲン個別化がんワクチン事業を買収したと発表。

NECは最先端のAIを創薬分野に活用し、本創薬事業の事業価値を2025年に3,000億円まで高めることを目指します。

NECの強み:AIを用いたガン治療ワクチンのペプチド同定

ガン治療用ペプチドワクチンとは?

近年、ガン治療戦略として宿主の免疫機能に着目した薬剤が注目されています (PD-1抗体等)

その免疫機能を活用した治療法の一つとして、「ガンを攻撃する免疫」を活性化するガン治療用ペプチドワクチンがあります。(以下図が概略)

NECではガン治療用ペプチドワクチンの中でも、さらに患者個々の腫瘍特異的変異抗原 (ネオアンチゲン) を標的としたワクチン治療の開発を進めています。

ネオアンチゲン:
腫瘍特異的に発現する特有のタンパク質のこと。これを狙うことで、正常組織への免疫による攻撃が起こらず、より腫瘍特異的に免疫の賦活化が可能。

しかし、ガン治療用ペプチドワクチンを作る上での課題もあります。

ガン治療用ペプチドワクチンの課題

がん治療用ペプチドワクチンでは、

  • 約5,000億通りのアミノ酸組合せの中から、免疫を活性化するペプチド配列を同定する必要がある
  • 患者それぞれで異なるHLA型に対して適合するペプチド配列が異なるため、最適化・汎用化が必要がある
  • ペプチドの効果を促進するアジュバントとの最適な組合せ決定する必要がある

NECの強み:患者ごとの最適なガンペプチドを同定

そんな上記の課題を解決するのが、NECのAIによるガンペプチドの予測技術です。

NECが考えるワクチン開発プロセスは以下になります。

  1. 患者から腫瘍組織及び正常組織を採取し、次世代シーケンサーによって全エクソームシーケンスデータ及びRNAシーケンスデータ取得する
  2. 腫瘍組織と正常組織の全エクソームシーケンスデータを解析し、それぞれの結果を比較することで、腫瘍特異的な遺伝子変異を検出。
  3. 上記の遺伝子変異を含む9残基のペプチドを、候補エピトープとする。
  4. 候補エピトープに対する免疫応答に関連する複数のスコアを機械学習等で算出する。
    スコアには、「候補エピトープとHLAとの結合強度の予測値」、「免疫反応を引き起こすかどうかの予測値」、「候補エピトープが細胞表面に提示されるかどうかの予測値」、「自己相同性」、「変異の頻度」、「RNA発現量」などが含まれます。
  5. 最終的に最も有望な候補エピトープを決定し、それをNEC独自のアジュバントと混ぜて患者へ投与

従来のガンワクチンでは、比較的複数のガンに共通するガン抗原を複数種類混ぜて、アジュバントとともに投与しているだけでした。
(先日失敗した塩野義のワクチンはDEPDC1、Mphosp1、URLC10、CDCA1、KOC1の5種類を混合)

しかし、それでは患者それぞれのガンに対して最適化されておらず、HLA型もバラバラで、効果が出る患者と出ない患者がいました。
(さらに、HLA型をかなり限定してリクルートしていました)

NECの方法は個別化医療の先駆けとなる取り組みで、従来のガンペプチドワクチンを超える可能性は十分にありますね!

開発パイプライン

現在NEC関連で開発中 or 前臨床段階の公表されているガンワクチンは3つあります。

個別化ネオアンチゲンワクチン : TG4050

TG4050は、Transgene社のウイルスベクター技術 (myvac™) をベースに開発した治療用ワクチンです。
ウイルスベクターの中に、NECのAI技術で同定した患者ごとのネオアンチゲンの配列を組み込み、患者の免疫システムを最適に活性化します。

手術後の再発リスクのある頭頸部がん患者と、手術・アジュバント療法後の卵巣がん患者を対象に、米国と欧州でPh1を実施しています。

Transgene社の独自技術 myvac™とは:
myvac™はTransgene社が開発したウイルスベクター (改変ワクシニアアンカラ) を元にした、固形がんに対する個別化免疫療法のプラットフォームです。

myvac™を用いた治療法では、患者さん自身のがん特有の遺伝子変異を利用して、患者さんの免疫系を刺激し、腫瘍を認識・破壊するよう設計されています。

2021年11月24日にPh1試験の途中経過が公開されています。
卵巣がんおよび頭頸部がんの6例の患者から得られたデータです。

  • 評価可能な患者全て (4例中4例) で、複数の標的ネオアンチゲンに対し抗腫瘍細胞性免疫応答を誘導を確認しました。
  • 臨床的効果の初期的徴候を示しました。
  • 忍容性は良好であり、これまでのところ2件の臨床試験において、関連する重篤な有害事象は報告されていません。
  • 現在、2件の多施設臨床試験全体で最大43例の治療を目標に追加の患者登録を継続中です。
Transgene社とNEC、画期的な個別化がんワクチンTG4050の第Ⅰ相臨床試験において良好な予備的データを報告
TG4050の治療を受けた最初の6例の患者さんから、卵巣がんおよび頭頸部がんに対する個別化免疫療法の大きな可能性を示す初期データが得られました。

個別化ネオアンチゲンワクチン: NECVAX NEO1

NECVAX NEO1はVaximm社の経口T細胞免疫治療プラットフォームに、NECのAI技術によって同定された患者ごとのネオアンチゲンの配列を組み込んだ、バクテリアベースの治療用ワクチンです。

固形がんを対象に、今年中のP1試験開始を目指しています。

経口T細胞免疫治療プラットフォームとは:
弱毒生細菌ワクチン株Ty21をベースにしています。
この株は、非常に安全で忍容性が高いことが証明されています。

標的ガン抗原をコードするTy21a菌を経口投与することで、胃を通過して小腸のパイエル板へ到達します。そこで、マクロファージに細菌が取り込まれると、コードされたガン抗原が発現し、ガン抗原特異的な細胞性免疫応答を起こします。

個人的には、経口のワクチンのプラットフォームには結構興味深くて、腸管って免疫寛容に向かいやすいのに、腸管を経由して免疫誘導を起こすって凄いですよね!!

一応既に臨床でT細胞誘導は確認されているらしいけど、ほんまに出来るんかな??

CYT001 (個別化ワクチンではない!!)

サイトリミック社が開発するCYT001は、NECのAI技術で同定された複数患者共通のがん抗原ペプチドと、独自の組合せアジュバント( (Poly ICLC (Hiltonol®) 、LAG-3Ig) の組合せによって「Coldな腫瘍をHotにする」効果を目指したものです。

現在2つのPh1試験を実施しています。(YNP01試験、YNP02試験)

しかし、YCP02試験の途中経過を見ていると、Hotなガン患者でのみT細胞浸潤が認められて、Coldな症例では浸潤が認められないことから、当初のコンセプトを達成することは困難じゃないかと思います。。。。
(AACR2020でのポスター発表より https://www.cytlimic.com/news/20200622.html)

これは従来のガンワクチンの問題を解決できてないのでは??

個人的な見解

ガン治療用ペプチドワクチンは世界で一度も成功してない難攻不落

ガンワクチンとしては樹状細胞ワクチン「Provenge」が唯一承認を受けていますが、特別な設備が必要だったり、スループットが悪いことから浸透はしていません。

そして、塩野義や大日本住友の従来型ガン治療用ペプチドワクチンはPh3でことごとく失敗しています。

Ph2まではT細胞浸潤の効果は認められますが、Ph3で症状改善が達成出来ません。
NECワクチンもPh3までは行くでしょうが、Ph3のPoC結果が重要になるでしょう!!

海外ではモデルナ社やバイオンテック社、ジェネンテック社が進めているので、そちらの結果次第でガンワクチンへの風向きが変わるかも知れません!

今後の展開に注目です!!
特にmRNAワクチンは非常に注目すべきトピックですよね!

ペプチド予測技術自体はガン以外も使えそう!

NECのAI技術は感染症ワクチンにも応用が可能です。

新型コロナで既にリリースが出ていますし、他のウイルスにも応用可能ではないでしょうか?

「新型コロナウイルス」のワクチン開発に乗り出したNECの新たな挑戦
NECはAI創薬の一環として、新型コロナウイルスに対するワクチンの開発に着手しました。なぜ、NECがワクチン開発に乗り出したのか。その経緯と開発状況について、AI創薬のキーパーソンたちに話を聞きました。

海外では、AI解析やドライ解析で有望な感染症ワクチン抗原を予測するプラットフォームは存在するので、優位性が示せたら感染症ワクチンに注力している他社から声がかかるかも知れませんね〜

そしたらガンワクチンよりは少し確度の高い事業を進められるんじゃないでしょうか?

最後に

今回はヘルスケア産業に参戦してきた他業種企業としてNECのAI創薬事業を紹介しました。

まだ内資企業でNECと本格的に提携している企業はないようなので、AI事業がより本格化してきたらヘルスケアのAIプラットフォーマーとして台頭してくる可能性はありますね!

また、AIの創薬への使い方として色々な可能性を勉強しておくことで、今後のDX化について行けるように一緒に学んでいきましょう!

最後まで読んでいただきありがとうございました!!

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