【大化け?大コケ?】ステムリムの強みと将来性を徹底解説

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです。

今回は、再生医療に対して独自アプローチをする「ステムリム社」の現状と将来性について徹底解説します。

同社は、近年社運を賭けた1剤でPh2~3をしているバイオベンチャーです

ここで成功して大型化するのか?失敗して敗走するのか?が近日中に判明します

治験データが出るたびに乱高下する株価こそがバイオベンチャーの醍醐味!!

本記事で分かること
  • ステムリムの成り立ちと現状
    • 創設者・従業員・給与など
  • ステムリムの強み:再生誘導医薬
    • 再生誘導メカニズム
    • 再生誘導医薬の強み
  • 開発品の現状
    • レダセムチドの開発状況

参考にしたのは、以下のIR資料とHPです。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS81771/47ae2436/1cf3/41fa/ab76/a55ebfd94c48/140120221027550970.pdf

 



ステムリムの成り立ちと沿革

同社は、大阪大学医学部の玉井克人教授らが同定した骨髄多能性幹細胞動員因子を基に、2006年に設立されました。

2010年に塩野義製薬と契約し、大型共同研究にこじつけ、研究施設などを拡大しています。

2015年から自社品の医師主導治験を開始しました。

2019年には、マザーズ (今はグロース) に上場を果たしています。

  • 平均年収は667万円 (平均年齢38.4歳、平均勤続年数3.7年) 
    職員は74人ですが、60人が研究員で、その半数がPh.D持ちとのことですね (2022年8月時点)
  • 時価総額は621億円 (2023年3月時点)

創薬戦略とビジネスモデル

同社は、他のバイオベンチャーと同様に候補物質の同定や、作用メカニズムの解明など、基礎的な部分を担当し、非臨床試験などからは製薬企業にライセンスアウトする戦略です。

現在はレダムセチドについて、塩野義製薬と大型契約をしています。受領済みの総額は約48億円

主な収入源
  1. 契約一時金
    共同研究やライセンス許諾の契約時に一時金として得られる収入
  2. マイルストーン収入
    医薬品の開発段階/販売の目標達成時に得られる収入
  3. ロイヤリティ収入
    製品が上市された後に売上高に応じて得られる収入
  4. 共同研究収入
    当社の知的財産を活用した共同研究の実施と対価として得られる収入

純粋な医薬品研究だけで生計を立てているストイックな企業です!

ステムリムの強み:再生誘導医薬

ここでは、同社の基盤技術である再生誘導医薬の基礎となるメカニズムを紹介します。

再生誘導医薬の作用メカ

再生誘導医薬投与により、血中に動員された間葉系幹細胞が損傷組織に集積し、機能的再生を誘導

ステムリム社のIR資料を改変

発見経緯&メカニズム

玉井先生は、表皮水疱症 (皮膚で水ぶくれや潰瘍が生じる病気) 患者で、表皮幹細胞が一度喪失したにも関わらず、表皮が再生することに着目しました。

ここから、欠損皮膚組織に表皮幹細胞を供給するメカニズムを解明し、その中でも重要な因子HMGB1を見出しました。

再生誘導医薬の優位性

適応症の拡大余地が大きい

再生誘導医薬で誘導されるのは、外胚葉性由来の間葉系幹細胞なので、外胚葉由来の臓器に対しては発生学的には適応拡大出来ると考えています。

外胚葉由来の臓器と疾患
  • 神経 (脳梗塞)
  • 表皮 (表皮水疱症)
  • 骨 (変形性膝関節症)
  • 筋肉 (心筋症)

これ以外にも、NASH、ALS、脊髄損傷などにも適応出来ると考えています

細胞療法に対する優位性

再生医療として似て考えられるのは、iPS細胞などを用いた細胞医療かと思います。

細胞医療に比べて再生誘導医薬の優位な点としては以下があります。

    再生誘導医薬の利点
    • 治療効果が見込める幅広い疾患領域がターゲットになり得る
    • 体外培養を行う過程での機能低下が起こらない (がん化、免疫拒絶リスクもない)
    • 工業生産可能な化合物医薬品であるため、生産面やグローバル展開で有利

確かに、ペプチドなら工業生産出来るし、コストなどのハードルは大きく下がりますね。

開発品の現状

ここでは、注目すべきパイプラインを簡単に紹介します。

レダセムチド

ステムリム社の命運を握っているのはレダセムチドです!!

レダセムチド以外は正直まだまだ前臨床すぎて、何も分かりません。

表皮水疱症 (追加Ph2実施中)

表皮水疱症では、医師主導Ph2試験が終了しており、全9例見ると有意な改善が認められています。

特に4例で、画像でも明確に潰瘍部分が閉鎖していることが分かります!

プラセボがおけないのが難点ですが、明確に閉鎖しているのは凄い!!

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS81771/3a592ac9/753d/4d9c/8c31/fb59b15342e6/140120230310528694.pdf

この疾患は希少疾患であることから、追加Ph2試験を踏まえて、申請を見込んでいます。

現在は3例以上を目標に追加試験を実施中です。

急性期脳梗塞 (グローバルPh3準備中)

急性期脳梗塞では、塩野義製薬主導でPh2試験 (150例) が完了しています。

結果としては、有意差は認められていませんが、レダセムチド投与群で脳梗塞後の介助不要患者が増加する傾向が認められました。

それを受けて、現在症例数を約10倍にしたPh3試験を実施する予定です。

投与条件が難しいけど、成功すれば需要はありそう!

変形性膝関節症 (医師主導Ph2準備中)

この疾患では、Ph2試験 (10例ずつ) の速報が出ています。

  • 安全性の確認がOK
  • 手術後の欠損部位の縮小と軟骨再生の所見が認められた

まだまだ症例数が少ない試験なので有効性は見えていませんが、今後を期待出来る状態だと思います。

個人的な見解

正直、再生誘導なんて出来るわけない!と思ってた

再生医療とか、iPS細胞とかって実用化はまだまだ先で、実用化しても超特殊な病気・患者にしか使えないと思ってました。

実際、ミューズ細胞も似たような疾患をターゲットにしてるけど、開発中止してるし。。。

Muse細胞とは
 Muse細胞は、人の体の様々な組織に含まれる幹細胞。間葉系幹細胞に混じって血中や結合組織などに分布し、SSEA-3蛋白質をマーカーとして選別できる。外胚葉系、中胚葉系、内胚葉系のいずれにも分化できるという特徴を持ち、自家細胞による医療への応用が期待されている。

しかし、表皮水疱症が治っているのを画像で見ると本当に効いてるのかな?って思っちゃってます。

もしこれが上手くいったら世界的にこの分野への参入も増えるんですかね?

レダセムチドが転けたら終わり、、、

逆に、ステムリム社のパイプラインはレダセムチド一択なので、これが転けたら再起は大変でしょう。。。

再生誘導医薬を基本コンセプトに掲げている時点で、その試金石が転けたら後続品も転けそうですよね。

さて、最初の表皮水疱症の追加試験終了後に申請が通るかどうかが大きなターニングポイントになります!

最後に

今回は、再生誘導医薬のステムリム社について、解説してきました。

本記事で分かること
  • ステムリムの成り立ちと現状
    • 創設者・従業員・給与など
  • ステムリムの強み:再生誘導医薬
    • 再生誘導メカニズム
    • 再生誘導医薬の強み
  • 開発品の現状
    • レダセムチドの開発状況

レダセムチドが化ければ成長、コケれば転落という非常にスリリングな状態にいる企業です。

是非、今からの動きを注視していってください!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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