こんにちは。ティーダです。
バイオベンチャー紹介企画の第4弾となる今回は、創薬型ベンチャー成功例として「ラクオリア創薬」について徹底解説します。
今まで紹介してきた「そーせいグループ」や「ペプチドリーム」、「カルナバイオ」と大きく違うのは既に上市品が存在するベンチャーという点です。
そこで、ラクオリア創薬が持つ強み、現在の販売・開発品の現状、今後の将来性などを徹底解説します。
さらに、以下の書籍はラクオリア創薬の歴史を学ぶ上で必読です!
ラクオリア創薬とファイザーを題材に、ベンチャーとメガファーマの強み弱みを考察しています。
この記事を読むことで、国内創薬型バイオベンチャーとしての成功例を学ぶ機会にしてください!
参考にしたのは、ラクオリア創薬のHPと中期経営計画資料などです。
ラクオリア創薬ってどんな会社?
ラクオリア創薬は、ファイザーの日本法人を元に2008年に創業した創薬型バイオベンチャーです。
(日本ファイザーの研究所自体が2008年に閉鎖して、建物を借りる形で始まっています)
2008年の創業以来、2011年にJASDAQ上場を果たし、2017年および2019年にそれぞれ動物用とヒト用の医薬品を上市し、さらに2021年度に創業以来初となる営業黒字化を果たしました。
自社製品のロイヤルティ収入と外部へのライセンスアウトにより年々着実に売上高を伸ばしています。
- 平均年収は751万円 (平均年齢47.3歳、平均勤続年数8.1年) なので、ガチガチのバイオベンチャーよりは比較的勤続年数が長い傾向にありますね。
- 時価総額は170億円です。 (2022年3月時点)
ビジネスモデル
ラクオリア創薬自体は、自社のことを
疼痛・消化器領域の創薬シーズとイオンチャネル創薬技術をコアとするパイプライン型創薬ベンチャー
と表しています。
実際、技術プラットフォームを売りにするバイオベンチャーとは異なり、新薬を創製・開発・導出することで得られる収益を中心しています。
基本的な収益構造は以下の4点です。
- 契約一時金収入:
ライセンスアウトや共同研究開発の契約締結時に得られる収入 - マイルストン収入:
導出先企業での導出品の研究開発の進捗に応じて得られる収入 - ロイヤルティ収入:
導出先企業での導出品の売上高に応じて分配される収入 - 研究協力金収入:
新薬の早期基礎研究において、共同研究を行う際に得られる収入
現状のバイオベンチャーで、ロイヤルティ収入を得られている企業は非常に少ないです!
多くのベンチャーはまだ一時金かマイルストン収入です。
この形態は年によって収入が不安定になりがちですね。。。
ラクオリアの強みはイオンチャネル創薬だ!!
イオンチャネル創薬とラクオリアの強み
イオンチャネル:
細胞の内外へイオンを透過させる膜タンパク質の総称
知覚神経や運動神経における情報伝達や様々な組織での神経伝達物質の放出を調節する役割を担う
イオンチャネルは生体内で重要な働きをし、様々な疾患に関与する魅力的な創薬ターゲットであるにもかかわらず、これらをターゲットとした医薬品は全体のわずか5%程度にすぎません。
その要因として以下のような創薬での難点が考えられます。
- 正確な評価を実施するために熟練した高度な技術が必要
- 細胞の取り扱いが難しいなどの理由から効率のよい評価系を構築することが困難
上記理由から、創薬難度が高く、参入企業が少ない創薬ターゲットです。
しかし、ラクオリア創薬には、高度な技術と豊富な経験を有するスペシャリストによって、多くのイオンチャネルをターゲットとした創薬研究の実績があります。
名古屋大学との強固な提携
ラクオリア創薬は名古屋大学と包括的に強い連携を結んでいます。
2018年より、名古屋大学内に複数の研究科で横断的な「ラクオリア創薬産学協同研究センター」を設立しています。
この研究センターの利点は以下の3点です。
- 名古屋大学病院の臨床検体やデータにアクセス可能
- アカデミアの研究力を吸収・活用が可能
- 3つの異なる研究科の間に入り、それぞれの技術を有機的に組み合わせることが可能
こういった大学・大学病院との共同研究センターの設立というのは国内外で非常に活発に行われています。
最も有名な例は、中外製薬と大阪大学の大阪大学免疫学フロンティア研究センター (IFReC) ですね。
こういった取り組みをベンチャー企業で行っているところは私はラクオリア創薬以外に知りません。
ラクオリア創薬は2019年12月13日、初の海外拠点となる米国拠点をカリフォルニア州サンディエゴに開設すると発表しました。複数有名企業や有名大学との連携を活用するためとのことでした。
しかし、2021年6月にその研究所の閉鎖を発表しています。
原因は、新型コロナによる活動制限と、リモートでの会議の普及によるとのことでした。
開発品の進捗
現在、ラクオリア創薬の開発品は「導出済みプログラム」と「導出準備プログラム」の2種類に分けられます。
導出済みプログラム
テゴプラザン:
韓国での販売好調。中国では承認審査中で2022年に上市見込み。
米国ではHKイノエン社が第Ⅰ相臨床試験(P1試験)を実施中。
2021年12月、HKイノエン社とBraintree社(米国)の間で米国およびカナダを対象としたサブライセンス契約締結
EP4拮抗薬:
Ikena Oncology社(米国)とNewBay MT社(中国)がP1試験を実施中
ジプラシドン:
Meiji Seikaファルマ社との契約解約を合意
当社は国内における開発・販売権利を実施許諾元であるViatris社(米国)に返還することを決定
CB2作動薬:
OCT社(英国)が前臨床試験を実施中
選択的ナトリウムチャネル遮断薬:
マルホ社にて引き続き開発中
P2X7受容体拮抗薬:
Eli Lilly 社(米国)が第Ⅱ相臨床試験(P2 試験)以降のグローバル開発を準備中。
P2 試験の開始時にマイルストン収入が発生する見通し
特定のイオンチャネル:
EAファーマ社にて引き続き開発中
TRPM8遮断薬:
Xgene社が前臨床試験を準備中
ナトリウムチャネル遮断薬:
久光製薬社が前臨床試験を準備中
導出準備プログラム
テゴプラザン:
日本国内での早期の上市に向け、Ph1を準備中
5-HT4部分作動薬、5-HT2B拮抗薬、モチリン受容体作動薬:
次段階の臨床試験の実施を検討していたが、テゴプラザンの臨床薬理試験を優先することにより、導出活動に注力
グレリン受容体作動薬:
前臨床試験用の原薬製造完了。外部委託による前臨床試験を実施中
TRPM8遮断薬:
Xgene社への導出後も日本国内の権利は当社が保有。検討中。
今後の成長戦略
ここではラクオリア創薬の今後の成長戦略を紹介します。
全体としては、2021年12月期に赤字を脱却し、初の黒字化を達成しました!!
上市品の将来収入は年数百億円
テゴプラザン(K-CAB®)の韓国販売が好調です。
2021年の販売額が約105億円に上りました!!
さらに、ライセンス先であるHKイノエン社は2028年までに100カ国への進出を目指します。
また、韓国のほか27ヵ国において開発・承認審査が進行中です。
テゴプラザンは長期的な投資回収期に入ると考えています。
計画通りにいくとテゴプラザンだけで年間約100億円の利益が出る可能性があります。
これは万年赤字だったラクオリア創薬にとって非常に大きな躍進です!!
- 日本・中国・米国ではタケキャブ®が先行(非びらん性胃食道逆流症の適応未取得)
- 非びらん性胃食道逆流症の適応を持つP-CABはテゴプラザンのみ
- Fexuprazon (同じP-CAB) の参入によりP-CABの競争が活発化すると予想
更なる創薬研究での強み形成
さらに、創薬技術面からでもイオンチャネル創薬を中心とした強みの構築を進めていく計画です。
実際に、ラクオリア創薬は、そーせいグループとの共同研究を通じて、イオンチャネルの立体構造について同定を進めています。
個人的な見解
導出品がロイヤルティ収入を稼ぎ始めているベンチャーは珍しい
薬を一つでも出すことは非常に難しいです。
多くのバイオベンチャーは製品を出せずに潰れてしまいます。
そんな中、ラクオリア創薬はテゴプラザンを上市することに成功しています!
さらに、現在も非常に多くの開発品で導出に成功しています。
今後は海外での開発・販売も進むため収益は益々大きくなるでしょう。
将来的にはベンチャーを抜け出す日も近いかも知れません!
下手な中堅企業よりも創薬力は高い
開発品や技術を見ていると、下手な内資中堅企業よりも遙かに充実しています!
自社由来品が2, 3個しかない内資企業も沢山あるので、それらよりも遙かに将来性はあるでしょう。
あとは現状では後期開発に入っている開発品がほとんどないためテゴプラザンに次ぐ上市品がいつ出るかは気になりますね〜
最後に
今回は上市に成功したバイオベンチャーとしてラクオリア創薬を紹介しました。
結論としては、
研究力については、下手な中堅内資以上で、ユニークな創薬技術と名古屋大学との強い共同研究を通じて今後も開発品創製に期待が出来ます。
さらに、テゴプラザンが収益回収段階に入ってることから今後しばらくは継続的に利益は増加していくでしょう。
こちらを読むとさらに深く理解出来ます!オススメです!
今後に期待ですね!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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