こんにちは、ティーダです。
今回は、2022年3月16日に行われたエーザイの事業説明会について、個人的な見解も含めて解説していきます。
特に、最近アデュカヌマブについて様々なニュースがあります。
そこで、現状を整理することと共に、将来的なエーザイの認知症治療に対する取り組みについても重点的に触れていきたいと考えています。
こちらを読むことで、認知症領域のトップ企業として成長を目指すエーザイの現状と将来的な取り組みについて学ぶことが出来ます
アルツハイマー治療薬について
アデュカヌマブに関する重要なニュースが連日取り挙げられております。
詳しくはAnswersNewsさんの記事で分かりやすく時系列でまとめられているので、そちらをご覧ください。
結論から言うと以下のような点に落ち着いています
- アデュカヌマブの開発はバイオジェンに任せた!売上が出たらロイヤルティだけもらう。
- エーザイはレカネマブに全集中!今秋にPh3データ発表
- レカネマブは、FDAへの迅速承認を2022年度初めに出して、2023年中に承認を獲得予定
中期経営計画で掲げている目標に対しては「レンビマ」だけでは届きません。
しかし、レカネマブの売上が立てば、過去最高の成長フェーズを迎えることが出来るでしょう!
エーザイの得意技
ここでは今後の事業に向けてエーザイが強みとして活用していく点について紹介されています。
天然物化学ベースの有機合成技術
エーザイは昔から天然物化学をベースとした有機合成技術に強みを持っています。
本資料では、海洋生物クロイソカイメンから単離された「ハリコンドリンB」から合成した「ハラヴェン」を例に、高難度の有機合成技術を所有することを紹介しています。
ハラヴェンを抗体と結合したADCを、BMSと現在共同開発中です (MORAb-202)
他にもE7090、E7386といったレンビマから派生した優れた抗がん剤を継続して創出できる技術に誇りを持っています。
治験データと臨床検体の蓄積
エーザイは特にアルツハイマーとガン (レンビマ) の治験を非常に複数実施しています。
- アルツハイマー:Randomized Controlled Trial 7本:約10,000例の患者
- レンビマ:Regulatory Study 39本:約19,000例の患者
つまり、「膨大な治験データ」と「データに付随した臨床検体」を多数所有するということです。
実際に、アルツハイマー患者のPBMCなどを用いて、予後バイオマーカーの研究等を進めています。
これらの検体を将来のための研究に使用できることはエーザイ独自の強みです。
世界トップの研究施設に拠点を持つ
多くの他社も行っている取り組みですが、エーザイも世界トップクラスのアカデミア研究所の中に拠点を置き、アカデミアからの創薬シーズの獲得を目指しています。
内藤CEOが強調しているのは「研究員がそこにいることに意味がある」という点です。
やはり、フラッときた日本の会社の研究員と共同研究を結んだり、協力関係を築くことは難しいと言います。
そこで、現地に研究員を派遣し、その研究所の一員として生活することで世界最先端を学べるという理念です。
- ケンブリッジ (US):
Eisai Center for Genetics Guided Dementia Discovery (G2D2)
H3 Biomedicine - エクストン (US):
Epochal Precision Anti-Cancer Therapeutics - ハットフィールド (UK):
European Knowledge Centre
認知症へのトータルケアに向けた取り組み
エーザイのアルツハイマーへのトータルケアは単なるレカネマブの上市だけには終わりません。
レカネマブの適応拡大から、次世代のアルツハイマー治療薬、予防法の開発など多岐に渡ります。
レカネマブの適応患者の拡大戦略~治療投与から予防投与へ~
レカネマブ自体は2022年度に承認申請を目指しています。
そこで、レカネマブでは、現在5つの臨床試験が進行しています。
これらの試験を成功させることでレカネマブの適応拡大を狙っています。
さらに、将来的には以下の様な展開を想定しています。
- 個別での疾患関連情報を提供
- アプリによる認知機能確認 (のうKNOW)
- 血中バイオマーカーによる検査
- 他剤との併用による治療効果の向上
- 発症前段階のアルツハイマーに対する予防投与
次世代治療薬~慶應大とのコラボレーション~
エーザイは2017年から慶応大学医学部キャンパス内にEKIDという研究所を設置しています。
(EKID:Eisai-Keio Innovation Lab for Dementia)
慶応大学医学部の強みとしては以下が挙げられています。
そこで、エーザイは高品質な臨床検体を用いて、マルチオミックス解析を実施し、臨床データとオミックスデータを統合解析することで、新たなアルツハイマーの仮説の構築と創薬標的探索を実施しています。
さらに、構築された仮説はヒトiPS細胞を活用した脳オルガノイドモデルを用いて、検証を行うことが可能です。
現在、エーザイが着目している全く新しい創薬ターゲットとしては、
- 脳内クリアランス機構の強化
AD患者の脳では脳リンパ系に障害が起こり変性タンパク等の蓄積につながることが示唆されている。これを正常化することで脳内環境維持機能を強化する。 - 脳内恒常性の改善
- 脳内微小環境を整える役割を果たすアストロサイトをターゲットとして、恒常性を維持する機能の改善をめざす。
- ADのリスク因子であるAPOE4遺伝子多型に対し、抵抗性をもたらす因子を同定し新薬創出につなげる
- 神経ネットワークの賦活
変性した神経細胞の機能を補うために、神経幹細胞の分化促進や神経回路の強化をめざす
中外製薬も大阪大学内にIFReCという研究所を持っていますが、エーザイのEKIDはより創薬に特化した研究の取り組みな印象です。
基礎研究を重視する中外と、創薬を明確に狙った協業をするエーザイどちらが正解なのでしょうか?
認知症予防への取り組み~外部企業との提携~
ここでは認知症予防や診断、治療/アフターケアに向けた外部連携が紹介されています。
エーザイユニバーサルプラットフォームとして、他業種からの認知症医療への参入の窓口になる戦略です。
自然経過予測/治療効果予測アルゴリズム
治験、コホートデータ等を活用しアルツハイマーの進行を予測するアルゴリズムを開発しています。
さらに、レマネマブを投与した場合の治療効果予測モデルも示すことで治療モチベーションを向上させる目的です。
ギリシャコホート研究
ギリシャ国民を対象に行われている大規模アルツハイマー研究プロジェクトに参画しています。
プロジェクトの中では、3500名を対象とした観察研究や、患者検体を用いた検査、ウェアラブルデバイスの試用など様々なアルツハイマーに関する知見を得ることを期待しています。
発展途上国への進出戦略
エーザイは中国、インド、アフリカへの投資も加速しています。
中国では、約25年をかけて1000億円のビジネスに育てています。
今後も、中国、インド、アフリカに事業所・工場を設立し、投資を継続する計画です。
さらに、現地企業とのJVや協業を通じてエーザイのプレゼンスを向上させていく計画です。
- JD HealthとJVを作り、健康情報・認知機能評価・脳の健康度のセルフチェック・オンライン診療・オンラインモールの5つを柱とする高齢者向けのワンストップ健康サービスプラットフォームを作製
- アルツハイマー病、睡眠障害に特化したデジタルプラットフォームを構築することで、インドにおける地方都市や所得水準の低い方々への医療アクセスの改善目指す
- Allm社との協業により、アフリカにおいても高質な遠隔診療を実現し、医療格差の解消に貢献する
個人的な見解
発表とスライドが独特過ぎる (笑)
内藤CEOの夢を語る感が凄いです。
確かにアルツハイマーという非常に高難度な疾患に挑む企業のCEOとしてはピッタリな発表でした!
全体的にアルツハイマーに対する世界トップランナーである自負が強く、プライドを持って研究をしている印象です。
あと、資料がめっちゃ見づらい〜社内の資料もこんな感じなの??
1領域への集中投資は内資が見習うべき点も多い
アルツハイマーだけのために非常に多くの研究や事業投資を行っています。
ここまで1疾患に全力投資している企業はこの規模では珍しいのではないでしょうか?
というか、世界でも有数のアルツハイマー特化型企業だと思います。
メガファーマでもアルツハイマーだけ見たら敵わないのでは?
そうなると世界中が「アルツハイマーをするならエーザイへ」というプラットフォームを構築出来ている様子です。
この世界的なプラットフォームは内資製薬で持っている企業は少ないですし、持っている企業は全て成功している企業だと思います。
(中外の抗体技術、第一三共のADCなど)
最後に
今回はエーザイの2021年度の事業説明会についてまとめました。
エーザイのアルツハイマーへの情熱が再認識出来る説明会だったと思います。
しかし、これも全てはレカネマブの売上が立ってから始めるストーリーなので、今年度内のPh3試験結果に注目ですね!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント