【遺伝子治療は大丈夫?】アステラス製薬のR&Dミーティング (遺伝子治療) を徹底解説

製薬企業分析

こんにちは、ティーダです。

今回は、2022年3月9日に行われたアステラス製薬のR&Dミーティング (遺伝子治療への取り組み) について、個人的な見解も含めて徹底解説します。

遺伝子治療の中でも、希少な遺伝子性疾患にフォーカスして、アステラスは研究を進めています。

こちらを読むことで、アステラスがイクスタンジクリフを乗り越えるための柱の一つとしている遺伝子治療の戦略と将来性が理解出来ます!

また、アステラス製薬についての過去投稿は以下になります。
就活や投資の際に、アステラス製薬を理解するのにお役立てください!



遺伝子治療で、アステラスが目指すもの

アステラスは現在研究戦略として、Focus Areaアプローチ戦略を採用しており、その中で遺伝子治療をPrimary Focus (優先的に取り組む領域) として選定しています。

現在のPrimary Focus領域は

  • 再生と視力の維持・回復
  • ミトコンドリアバイオロジー
  • 遺伝子治療
  • がん免疫

になります。

アデノ随伴ウイルス (AAV) を活用した遺伝子治療に注力

アステラスの遺伝子治療戦略はAAVベクターを用いた生体内への直接投与を想定しています。
(Ex vivoでの組み替え細胞療法については今回は遺伝子治療としては紹介されていません)

AAVとは

アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト細胞に感染する天然由来のウイルスです。
病原性は今まで報告されておらず、魅力的な遺伝子治療用ベクターと考えられています。

主な利点は以下です。

  • AAVが持つゲノムを容易に除去し、目的の治療用遺伝子に置き換えることが可能
  • 高い導入効率で、特定の組織特異的への発現が可能
  • ゲノムに組み込まれることなく遺伝子導入するため、挿入変異のリスクがない
  • 非分裂細胞内で長期的な安定性および持続的なタンパク質産生が期待できる

AAV製造施設を自社で保有

AAVは、生きた細胞を用いて機能的な遺伝子をウイルスに挿入するという複雑なプロセスで製造されます。

そのため、製造には高度な技術が必要で、効率的かつ大規模に生産することには大きな課題があります。

そこで、アステラスは自社でAAV製造工場を保有することに決めました!

「研究」と「製造」がアジャイル型組織として同一拠点で協働し、有機的な連携と知識の共有を可能にするアステラス独自の製造インフラは、遺伝子治療薬の課題を克服するアステラスの強みになります

その結果、プロセス改良と知識・経験の蓄積により、製造能力は5年間で100倍近くに飛躍しました。

遺伝子治療を成功させるためのコラボレーションとパートナーシップ

アステラスは遺伝子治療を成功させるために、新規遺伝子デザインやより優れた送達ベクター、再投与を可能にする技術など、 遺伝子治療の課題を解決するためのパートナーシップを積極的に探索しています。

最初の大規模改革として、2020年に買収したAudentes社と協同でASTELLAS GENE THERAPIESを設立しました。

ASTELLAS GENE THERAPIESはバイオテックと製薬会社の強みを併せ持つ組織です。

アステラス製薬R&Dミーティング資料から引用

さらに、Dyno Therapeuticsとの共同研究についても紹介されています。

Dyno社のCapsidMap™プラットフォームによって、アステラス独自の新規AAVカプシドを創製することが可能になります。

CapsidMap™プラットフォーム

CapsidMapは、2つのプロセスを踏みます。
① 次世代シーケンシングにより非常に高い効率でカプシドの特性を測定
② 膨大な in vivo データをもとに、機械学習を活用した高度な検索アルゴリズムを適用して、改良されたカプシド配列を生成

Dyno社の包括的なカプシド配列マップとAIを活用したツールにより、製造効率やより幅広い疾患への適用などの特性が最適化されたAAV遺伝子治療法の設計が加速されます。

今後のフォーカス

さらにアステラスは今後の遺伝子治療に対する戦略として以下を考えています。

特に、アステラスは外部から技術を買ってくることが多いため、今後も積極的な大型投資が見込まれます。

アステラス製薬R&Dミーティング資料から引用

前臨床プログラム紹介

現在アステラス製薬では、神経筋疾患を対象とした全身投与プログラム、および中枢神経疾患・眼疾患を対象とした局所投与プログラムを含む開発候補品を所有しています。

アステラス製薬R&Dミーティング資料から引用

今回はその中でも、2つの前臨床プログラムが紹介されていました。

DAD (アンジェルマン症候群)

アンジェルマン症候群とは
  • 重度の認知障害、運動失調、発作、自閉行動などを特徴とする神経発達障害
  • 寿命は正常だが、一生涯のケアが必要
  • 患者数は約6万~10万人と推定(欧州、米国、日本)
  • 父方UBE3Aは通常は発現しないため、母方UBE3Aの後天的な欠損または変異により発症

アンジェルマン症候群に対して、アステラスでは以下の3つのアプローチで、通常は発現しない父方UBE3Aを再活性化することで治療を目指そうと考えています。

  1. ジンクフィンガータンパク質を「父方UBE3Aを抑制しているDNA」に結合させ、父方UBE3Aの発現抑制を解除
  2. miRNAにより「父方UBE3Aを抑制しているDNA」を切断し、父方UBE3Aを発現させる
  3. Modified single guide RNAにより「父方UBE3Aを抑制しているDNA」を分解する

現段階でまだ探索研究なので、全くコンセプト段階の研究になります。
こんな基礎レベルの研究プログラムをR&D説明会で出すというのは他社ではあまり見られません。

アステラスの中でそこまで遺伝子治療研究が進んでいない様子が見受けられますね。。。

AT808 (フリードライヒ運動失調症)

フリードライヒ運動失調症とは
  • 進行性の神経変性運動障害で、10~15歳で発症することが多い
  • フラタキシン(FXN遺伝子)の機能喪失変異が原因
  • 患者数は、約1.5万~2万人と推定
  • 承認薬はなく、主な死因は疾患由来の心筋症

そんなフリードライヒ運動失調症に対して、原因遺伝子であるFXN遺伝子を患部組織で発現させるAAV遺伝子治療を目指そうと考えています。

非臨床モデルでは、FXNノックアウトマウスにおいて、AAV投与群において生存率の改善が認められました。
さらに、タンパク質の発現をIHCやWBによって確認しています。

臨床プログラム紹介

AT132 (X連鎖性ミオチュブラーミオパチー)

X連鎖性ミオチュブラーミオパチー (XLMTM) とは
  • 患者の半数は18カ月以上生存できない
  • 新生男児4~5万人におよそ1人の割合で発症
  • 極度の筋力低下、呼吸不全が特徴
  • 90%の患者は出生後すぐに呼吸補助を必要とし、生涯にわたって人工呼吸器が必要
  • 効果的な治療法は存在しない

X連鎖性ミオチュブラーミオパチーに対して、原因遺伝子である全長のヒトMTM1遺伝子を筋細胞に送達することで治療を目指そうと考えています。

こちらはPh1/2試験において、

  • 人工呼吸器離脱を含め、人工呼吸器使用時間の短縮が複数例で認められました
  • 臨床的意義のある運動機能を改善しました

しかし、ASPIRO試験において4名の被験者が肝臓関連の重篤な有害事象により死亡しました。。。。
(他の全身投与型のAAV治療薬では認められていない症状でした)

AAV遺伝子治療薬が持つ肝臓への障害性と疾患独自の胆汁うっ滞症状が組み合わさることで、重篤な肝機能障害が引き起こされたと考えています。

以下の改善策を現在検討中であり、投与再開は2023年度以降に、承認申請は2025年度以降に移行すると考えています。

  • 病態における胆汁うっ滞がAAV投与によって増悪するか否かを非臨床で検討
  • 空カプシドを減らすことでカプシドの総投与量を低減して、肝障害性を低減
  • 肝毒性リスクを軽減できるようにリクルート患者の基準を変更

AT845 (ポンペ病)

ポンペ病とは
  • ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の欠損を原因とするライソゾーム病
  • GAAが欠損することで、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、筋細胞が障害される
  • 乳児型ポンペ病 (IOPD) および 遅発型ポンペ病 (LOPD) の発症率は、合わせて約40,000人に1人程度
  • 現在承認されている酵素補充療法は、継続的に点滴投与で酵素を補充する方法だが、長期的には有効性が低下したり、病態進行を完全には防げないためニーズが残っている

ポンペ病に対して、原因遺伝子であるGAA遺伝子を筋肉で特異的に発現させることで治療を目指しています。

こちらは遅発型ポンペ病 (LOPD) に対するPh1/2試験において、

  • 投与患者全てで、重篤な有害事象は認められなかった
  • AT845投与後12週において、被験者の筋肉内で1~2個/二倍体ゲノムの目的遺伝子の導入が確認された

今後は、安全性データを確認しながら、患者リクルートを継続します。
また、Ph3への移行に先立ち、臨床PoCの評価を2022年度早期に予定しています。

機関投資家の質問

Q:DAD (アンジェルマン症候群) について、3つのアプローチが紹介されているが、それらを組み合わせるのか?それとも1つを選ぶのか?
A:それぞれ3つのメカについて非臨床で検討して、どの方法が最も良いのかを選択しようと考えている。

Q:AT132について、有害事象に対する3つの改善策の中で、最も重要と考えている方法はどれか?
A:まずは3つ全ての対応策についてFDA向けに資料を揃えていく予定。全て大事だと考えている。

Q:AT845 (ポンペ病) について、導入された目的遺伝子が1~2個/二倍体ゲノムというのは臨床改善効果に十分な導入量なのか?
A:現状ではまだ分からない。動物モデルからも分かっていない。

Q:2025年時点で、PoCを迎える7つあるという話だったが、その見通しは変わっていないのか?全体的な遺伝子治療プログラムの進捗についても教えて欲しい
A:AT132で認められた肝毒性が他で認められるという最悪の状態ではない。全体のタイムラインについては随時発表させてもらいたい。

Q:空カプシドを減らす方法は何を考えているのか?
A:独自な方法なので詳細は話せない。既にやっている密度勾配はやる予定。また、追加の技術を新たに加える可能性もある。

個人的な見解

現開発品の多くは他社由来で、自社品の臨床入りは遠い

現在の2つの臨床入り製品 (AT132, AT845) はオーデンテス社由来です。
また、他の後期前臨床品もオーデンテス社のものです。

まだ、アステラスとして創製した遺伝子治療プログラムで形になっているものはありません。

そのため、まだ全然基礎研究レベルのプログラム (DAD、AT808) をR&Dミーティングで紹介してるのでしょう。。。

まだほとんど全然進んでいない遺伝子治療をこの時点でR&Dミーティングで紹介するのは、なぜなんでしょうか?
投資家から本当にイクスタンジクリフを乗り越えられのか心配されているからなのか?

遺伝子治療って難しいな〜

まだ遺伝子治療自体で分かっていることが少ないため、一つの治験薬で重篤な副作用が出た際に、他の開発品にも同じ懸念が生じるのは遺伝子治療開発を難しくしていますね。。。

少しでも懸念が出ると、製造プロセスや遺伝子デザインについて大幅な変更が必要になる可能性がありますよね

低分子や抗体ではこんなことはほとんどないです。

しかし、だからこそ参入障壁が高いため、アステラスが上手くいったらブルーオーシャンに飛び込むことが出来るのでしょう!

最後に

今回はアステラスの遺伝子治療に関するR&Dミーティングを解説してきました。

結論から言うと、
まだアステラスの遺伝子治療が形になるのには時間がかかりそうという現状だと思います。

しかし、治験で死亡者が複数出たにも関わらず治験を中止せずに継続申請をするのは非常にタフな決定だと思いました。

Focus Areaアプローチの特徴で、一つでも上市できたら後続品も複数上市出来ることが期待されるので最初の1品が頑張りどころですね!

今後の展開に期待です!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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