【細胞医薬/再生医療のシン・プラットフォーマー】ヘリオス社の強みと将来性を徹底解説

バイオベンチャー分析

こんにちはティーダです。

今回は、細胞を用いた再生医療に注力するバイオベンチャー「ヘリオス社」について、現状と将来性を徹底解説していきます!

同社は、iPS細胞を活用した細胞療法/再生医療に注力するバイオベンチャーで、他社・アカデミアとの協業も多く、面白い取り組みをしています!

是非ヘリオス社の分析を通じて、iPS細胞の商業化、再生医療の最先端の取り組みを学習しましょう!

参考にしたのは、ヘリオス社のHPやIR資料です。



ヘリオス社の成り立ちと沿革

理化学研究所の高橋政代先生から話を受けた「創業者・鍵本忠尚」によって、2011年に福岡県に設立されました。

当初は、「iPS細胞由来網膜色素上皮細胞移植による加齢黄斑変性治療法」の実用検討から始まりました。

その後、本社東京移転や社名変更を経て、2015年にマザーズ上場を果たしています。

ビジネス戦略:短期と長期を見据えた計画

やはり、バイオベンチャーにとっては、製品をライセンスアウトして安定的なロイヤルティ収入を得るまでが非常に困難です。

数多くのバイオベンチャーが初期段階の資金繰りに困っています。
(オンコセラピー社やブライトパス社など)

しかし、ヘリオス社では「短期のコア収益になる事業」「長期のプラットフォームになる事業」を分けて戦略を立てています。

ヘリオス社のIR資料を参考に作成

短期:導入品による早期上市/収益化

短期的には、比較的早期に製品化が見込める製品を導入し、新規治療法の実現と収益化を進めます。

具体的には、HLCM051に関して、2016年の脳梗塞急性期治療法開発ライセンスの取得、2018年の急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) に対する治療法の開発ライセンス取得、などはその実例です。

「短期的な収益確保」と「商用化・開発のノウハウ獲得」を期待しています。

長期:プラットフォーム技術による基盤構築

長期的には、再生医療産業を革新的に発展させ、新たな基盤となり得る「プラットフォーム技術」を構築していくことも重要と考えています。

「プラットフォーム技術」はすぐには具体的な製品には応用できないかもしれませんが、長期的な成長に不可欠と考えています。

ヘリオス社では、具体的に、iPS細胞を用いたプラットフォーム構築に取り組んでいます。

  • 平均年収は704万円 (平均年齢41.7歳、平均勤続年数3.2年) 
    中途採用で、アカデミアなどから再生医療の研究をしていた人材を引き抜いているような印象ですね!
  • 時価総額は430億円 (2022年4月時点)

ヘリオスの強み:2つのiPS細胞プラットフォーム

細胞医療/再生医療とは?

再生医療とは、幹細胞やiPS細胞を用いて、臓器や組織の欠損や機能障害・不全に対し、臓器や組織を再生する医療方法です。

既存薬では治療が難しいものや、治療法が確立されていない難治性疾患に対して新たな治療法となる可能性があります。

特にiPS細胞は、様々な器官・細胞へと分化できる多能性と、ほぼ無限の増殖能を持ち、再生医療の可能性を飛躍的に拡大させることが期待されています。

日本では、ヒト細胞を用いた再生医療等製品においては、その有効性が推定され、安全性が確認された場合には、条件及び期限を付して早期に承認されるという、世界に先駆けた迅速承認を実現する新たな制度が整備されています。

そこで、ヘリオスはまずは国内で開発を進めることで、この迅速承認制度を活用して、早期の収益化を計画しています。

eNK Platform

ヘリオス社ではiPS細胞由来のNK細胞を用いて、ガン治療に活用する試みが行われています。

この取り組みを通じて、ガン免疫領域に対してiPS細胞のプラットフォームを構築しようと計画しています。

ヘリオスの強み
  • ヘリオス独自のiPS細胞を構築、マスターセルを樹立済み
  • 分化誘導したNK細胞に独自の機能分子を導入することで有効性を向上
  • GMP基準の製造プロセス
  • 様々な細胞医薬を生み出すCARの技術

実際に、他社でもiPS細胞を用いたガン免疫細胞療法取り組みは実施されており、他社との競合優位性を示すことも重要になります。

しかし、ベンチャーにも関わらず既にGMPレベルの製造プラントを所有していることは珍しく、非常に大きな強みであると考えられます。

ユニバーサルドナーセル Platform

ユニバーサルドナーセル(Universal Donor Cell)とは、誰にでも移植に使用できる他家細胞のことです。

免疫拒絶反応 (HLA不適合による拒絶) が抑えられている細胞で、移植される患者の白血球型抗原 (HLA) 型に適合させる必要なく移植可能となっています。

通常の自家細胞移植の場合は、非常に時間とコストが大きい上に、限られた施設でしか実施できません。(CAR-T細胞など)
しかし、他家細胞では細胞製剤のストックが可能で、使用範囲が広がります。

ヘリオスでは、iPS細胞を用いてヘリオス独自のユニバーサルドナーセル (UDC) を完成させました。

ヘリオス社の強み
  • 他家iPS細胞から拒絶反応を引き起こす複数のHLA遺伝子を除去
  • 免疫抑制関連遺伝子の導入
  • 安全装置としての自殺遺伝子の導入

ヘリオスでは、UDCを「次世代がん免疫療法 (iPS-NK細胞) 」、「眼科領域」、「臓器原基」等に活用することを目指しています。

既に膵臓β細胞や視細胞はUDCからの分化誘導に成功しており、 将来的にはRPE細胞や肝臓原基への応用も考えています。

開発品の現状

現在のヘリオス社のパイプラインは以下の通りです。

導入品であるHLCM051がPh2/3に入っている他は、他社との共同研究を通じて、自社発の細胞医薬プラットフォームを用いた開発候補品を所有しています。

HLCM051 (MultiStem®)

2016年に、米アサシス社とライセンス契約を締結し、体性幹細胞再生医薬品 (HLCM051) の開発を開始しました。

アサシス社の創製した幹細胞製品MultiStem® (HLCM051) は、ヒト骨髄由来の細胞製剤です。

アサシス社が特許を保有し、複数の治験が進められ、既に一定の安全性が認められています。

HLCM051は、

  • 凍結保存により長期保管が可能
  • 免疫抑制剤が不要
  • 静脈注射で投与された細胞は体内へ蓄積することなく消失

といった特徴を有しています。

現在国内では、脳梗塞急性期とARDSに対する治験を実施しています。

2015年に、中外製薬もMultiStem®の虚血性脳梗塞において、日本における開発販売のライセンス契約を締結しています。

脳梗塞急性期

脳梗塞急性期に対するHLCM051の作用については、アサシス社が治験を実施し、患者に対する安全性と、一定条件の患者において治療効果が期待できることが示されました。

HLCM051は、脾臓から抗炎症メディエーター放出を促進させることで、BBB破壊を軽減し、中枢系の炎症を軽減することで、神経細胞再生の環境作りを促進すると考えられています。

アサシス社によるPh2試験追加解析の結果、MultiStemを投与された患者群で、プラセボと比較して、90日後、365日後ともにExcellent Outcomeを達成した割合が統計学的に有意に増加していました。

現在、国内で脳梗塞急性期の患者を対象にPh2/3試験を実施しています。
(110例:110例のプラセボ対照二重盲検試験)

2022年5月中にトップライン結果を公表予定です

急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)

ARDSは、重症患者 (主な原因は重症肺炎・敗血症・外傷等) において、突然起こる呼吸不全の総称です。
非常に死亡率が高いですが (30~58%) 、薬物療法はなく、対症療法しかありません。

ARDSを発症患者に投与されたHLCM051は、肺に集積して過剰炎症を抑制し、さらに損傷を受けた組織を保護し、修復を促進することで肺機能を改善すると考えられます。

現在、肺炎を原因疾患とするARDS患者を対象にPh2試験を実施しています。

その結果、投与180日時点で、プラセボに比べてVFD (人工呼吸器の非装着期間) と死亡率が改善傾向にありました。

さらに、過去の臨床データと比較した際には、HLCM051群において、VFDが有意に低下していることを見出しました。

2022年3月に、PMDAとの再生医療等製品申請前相談を実施し、データ補強の必要ありと助言がされ、継続協議予定しています。

HLCN061 (eNK細胞):eNKプラットフォーム使用

HLCN061としては、まず以下の遺伝子を導入して通常のNK細胞以上の活性を獲得しようと試みています。

  • CD16:ADCC活性の強化
  • IL-15:増殖・生存維持・活性化
  • ケモカインレセプターA:がん組織への遊走強化
  • ケモカインB:他の免疫細胞を呼び込む

その結果、in vivoでのマウスモデルにおいても腫瘍の退縮・増大抑制効果が確認されています。

今後は、Pre-IND/治験前相談 (2022年度予定)、IND/治験開始 (2024年度予定) を計画しています。

HLCR011 (RPE細胞)

ヘリオス社は理化学研究所との間で、RPE (網膜色素上皮) 細胞を活用した再生医療製品を対象とする独占的ライセンスを受けています。

また、国内におけるiPS細胞由来RPE細胞による加齢黄斑変性治療法開発に関して、大日本住友製薬株式会社と共同開発契約を締結しています。

大日本住友製薬から提供される開発資金をもとに、開発を共同で行い、ヘリオスが製造販売承認の取得及び販売を行う予定です。

さらに、RPE細胞医薬品の製造や販売促進を共同で行うため、大日本住友製薬と合弁会社である株式会社サイレジェンを設立しています。

HLCL041 (肝臓原基)

この製品は、ヘリオス社が目指す治療法「3次元臓器」です。

ヘリオス社は、2014年から横浜市立大学と機能的なヒト臓器 (3次元臓器) の作製に関する共同研究を開始し、肝臓機能の改善を目的とした再生医薬品の開発に取り組んでいます。

iPS細胞から作製された肝細胞や腎細胞などに分化する前の前駆細胞を、間葉系幹細胞と血管内皮細胞と混合して培養することで、血管構造を持つ立体的な臓器を作製することができます。

ユニバーサル細胞と合わせることで、本格的な臓器置き換えの時代への展開を期待しています。

個人的な見解

ビジネスモデルと迅速承認制度の有効活用は頭良い

通常の有望なバイオベンチャーでは、「技術/試薬/サービスを売る」ことで自社創製品の上市までの資金を確保していました。

しかし、「導入品で短期資金確保と開発経験を獲得し、平行して、次世代プラットフォームの構築を進める」という計画は非常に賢いと思います。

NECとかも同じような戦略ですね。

しかも、既にPh2で安全性・有効性が分かっている導入品なので比較的確度も高いですし、よい戦略だと思います。

また、日本特有の再生医療に対する制度を活用した戦略も非常に理に適っています!

iPS-NKについては差別化が不安

iPS細胞を用いたNK細胞やNKT細胞、T細胞の創薬は世界的に多くの企業で実施されています。

果たして、ヘリオス社がどこまで優位性をアピールして開発を進められるのかが気になるところです。

また、マウスモデルの薬効データについてはそこまで顕著な薬効ではない印象なので、本当に臨床で効果が出るのかが心配ですね。。。。

しかし、プラントと製造プロセスを現時点でFix出来ているのは素晴らしい点だと思います。
ここに非常に時間がかかるので。。。。

最後に

今回は、細胞医療/再生医療に注力している「ヘリオス社」について徹底解析してきました。

細胞医療自体は近年注目されていて、まさにベンチャーが切り開くべき領域だと思います。

iPSはまだ薬になっているものがないので、是非日本企業に頑張ってもらって作れたらと思います!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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