【研究所の将来は厳しい!?】なぜ内資製薬は自社創薬する必要があるのか?

製薬研究職の就活

こんにちは、ティーダです。

皆さん、自社創薬って大事だと思いますか?

内資製薬のIR資料を見ると「自社創薬力」を強みにしている企業も多いですよね?

でも、よく考えると自社創薬ってかなりハードル高くないですか?

ましてや、ブロックバスター級の創製なんて凄いハードルですよね?

そこで、そもそも「なぜ内資製薬は難易度の高い自社創薬をしているのか?」を、近年の製薬業界のトレンドや外部環境を踏まえて考えていきます。

今後、「製薬企業で研究職を目指す学生」「現在企業で創薬研究している方々」に大事な話だと思うので是非読んでください!

確かに、そもそも自社創薬する必要性は深く考えたことなかったな〜

モチベーションやキャリア形成の考えにも関わる根源的な話だと思います!
自身の考えをまとめるためにも書いてます!



近年の製薬企業のトレンド (内資、外資)

まずは外資製薬 (主にメガファーマ) と内資製薬のそれぞれの近年のトレンドを簡単に紹介します。

外資製薬 (メガファーマ)

メガファーマはほぼ完全に自社創薬ではなく、外部からの導入が中心になっています。

具体的には、バイオベンチャーから開発品を導入することが非常に増えています。

実際以下のデータを見ると、開発品目数シェアの80%がベンチャーであり、創薬開発の中心がベンチャーに傾いていることが分かります。

(転載元:経済産業省・厚生労働省 創薬ベンチャーの育成(案)(令和3年公開))
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/iyakuhin/dai5/siryou1-3-6.pdf

確かに、数年に1回で訪れる数千億円単位でのパテントクリフを、自社創薬だけで継続的に補うのは現実的に難しいでしょう。

研究所自体も自社だけでなく、アカデミアやベンチャーとコラボしやすいように、バイオコミュニティ (エコシステム) にヒト・モノ・カネを集めてイノベーションを生み出しています。

ボストンやロンドンに並ぶエコシステムを…東西で始まったコミュニティ形成の動き|連載:バイオコミュニティの萌芽(1) | AnswersNews
◆連載:バイオコミュニティの萌芽 国内で今春、世界的なバイオクラスターの形成に向けた動きが本格化します。政府は4月をめどに東西2地域を「グローバルバイオコミュニティ」に認定して重点的に支援を行う方針で、ボストンやロンドンなどと肩を並べるエコシステムの構築を目指します。世界からヒト・モノ・カネを引きつけるイノベーションハ...

内資製薬

武田薬品以外の大手内資製薬は、自社創薬を中心に開発品を構成しています。

また、中堅以下では自社創薬力がなく、外資製品の国内販売代行をすることで収益を確保している企業も多いです。
(田辺三菱、持田製薬、キッセイ薬品 etc…)

パテントクリフを乗り越えられない企業が増加

内資製薬で最も注目すべきトレンドは、パテントクリフを乗り越えれない企業が散見されることです。

  • 住友ファーマ:ラツーダ (2023年特許切れ)
  • 塩野義製薬:ドルテグラビル (2028年特許切れ)
  • アステラス製薬:イクスタンジ (2027年特許切れ)
  • 小野薬品:オプジーボ (2030年特許切れ)

これらは全てブロックバスター級で、1製品で各社総売上高の半分近くを占めている製品です。

上記各社は数年以内に訪れるクリフを埋める算段が付いておらず、投資家に説明する必要迫られています。

研究所の必要性が問われている

また、一部投資家からは「内資製薬も効率の悪い自社創薬なんて辞めて、外資製薬のように導入品を開発したらいい」と最近言われることがあります。

例えば、小野薬品工業のR&D説明会において、「自社創薬の生産性」についての話題で、研究所の必要性について取り上げられています。

私の周りの各製薬会社で勤務している友人に聞いても、社内で「研究所の必要性/生産性」について度々話題にあがるそうです。

なぜ内資企業は自社創薬する必要があるのか?

さて、外資/内資製薬の近年のトレンドについて簡単に見てきました。

ここで、「なぜ内資企業は自社創薬をしなくてはならないのか?」について私の持論を述べます。

自社創薬する最大の理由

内資製薬のクリフ回避方法 (ブロックバスター獲得方法) としては自社創薬が一番有効だから

以下で、この結論に至った背景を説明します。

ブロックバスターを獲得する方法は外資と内資で異なる

現在多くの大手内資製薬は、ブロックバスター級を1製品以上持っています。

そして、クリフを乗り越えて安定的に成長するためには、ブロックバスター級を約10年に一度周期で継続的に獲得しなくてはなりません。

そもそも、製薬企業がブロックバスター級を獲得する一般的な方法は以下の2択です。

① ブロックバスターになる可能性のある製品を導入
② 自社でブロックバスターを創製

ここで、①の方法を細かく考えてみましょう!

開発品導入はギャンブルみたいなもので、主に治験成功確率と売上ピーク予想で導入価格が決まります。(以下図)

導入品市場の超簡略イメージ図

導入品市場では、資金力の差が外資と内資で大きく異なります。

  • 外資製薬 (莫大な資金力):
    PoC獲得済で開発成功確率が高く、売上予想も高い開発品①を、圧倒的な資金力で導入可能
  • 内資製薬 (少ない資金力):
    開発成功確率が未知で、売上予想も不確定な開発品②を、比較的安価で導入

内資製薬のブロックバスター獲得方法は自社創薬だけ

つまり、内資製薬の場合、実際にブロックバスターを獲得する方法は以下の2択です。

① ポテンシャルや成功確率が不確定な導入品を安く買って、祈る!
② 自社製品でブロックバスターを創製

こうなると、過去にブロックバスターを出した経験から、内資製薬は②の方法でブロックバスター創製を目指します。

  • 協和キリン:
    クリースビーダ ⇒ KHK4083
  • 塩野義製薬:
    クレストール ⇒ ドルテグラビル
  • 第一三共:
    リクシアナ ⇒ ADC3品目
  • エーザイ:
    レンビマ ⇒ アデュカヌマブ & レカネマブ
  • アステラス製薬:
    ベシケア、タルセバ、シムビコート ⇒ イクスタンジ

上記製品は各社のクリフを乗り越える製品として自社創出されました。

しかし、例えば、住友ファーマは「自社創薬力の低下」から①の方法に最終的に頼るしかなくなり、結果的に導入品の失敗/市場浸透遅延に陥っています。

もちろん、①の方法でも、ブロックバスター級を安定的に目利き出来るなら良いと思いますが、なかなか現実的には難しいですよね。。。

ロイヤルティファーマみたいな企業はそうやって経営していますが、凄いです

あとは、武田薬品みたいに資金力を無理矢理上げて外資並の資金力を持つ戦略もありです!

自社創薬を継続的にするための戦略は?

プラットフォーム型創薬戦略がメガトレンド!

ここまでの話から、大手内資製薬は自社創薬でブロックバスター級を継続的に創出し、成長していく戦略が王道であることが分かりました。

では、自社創薬でブロックバスターを継続的に創出するには内資製薬はどうすれば良いのでしょうか?

その一つの答えが、

自社独自の具体的な創薬プラットフォーム構築

だと私は考えています。

プラットフォームってそもそも何?
最近聞くけど、なぜそんなに大切なの?

プラットフォーム構築による創薬戦略は製薬業界のメガトレンドなので知っておきましょう!

プラットフォーム型創薬の強み

モダリティや技術等でプラットフォームが一度確立出来れば、同じプラットフォームを転用して継続的に新薬創出が可能

つまり、従来の単発的なターゲット&疾患ベースの戦略ではなく、技術ベースで疾患に切り込んでいくイメージです。

(もちろん、必ずしも技術中心でなくても良いです)

アステラス製薬のFocus Areaアプローチは分かりやすくプラットフォーム型の創薬戦略を説明してくれています。

Just a moment...

もちろん、大手各社もプラットフォーム構築の重要性を認識しています。
以下に各社のプラットフォームを紹介します。

  • 中外製薬:抗体技術 & 中分子創薬
  • 第一三共:ADC技術
  • エーザイ:アルツハイマー全般
  • 協和キリン:抗体技術
  • JCRファーマ:J Brain Cargo技術
  • (構築中) アステラス製薬:細胞療法、遺伝子治療
  • (構築中) 塩野義製薬:感染症ワクチン & 治療薬

例えば、JCRファーマのJ Brain Cargo技術を用いて、ハンター症候群への治療薬が近年一つ承認されましたが、同じ技術で別のライソゾーム病全般 (50種類以上) に対してアプローチが可能です。

第一三共でも、世界トップクラスのADC技術によって、1つの技術で複数のガン抗原を標的にすることが可能です。

中外製薬では、血友病治療薬で確立した二重特異性抗体技術を転用して、今まで経験のない眼領域への参入を成功させています。

そもそもパテントクリフが起こらない事業体制を目指す

医薬品ビジネスって実は非常に特殊で、特許が切れた瞬間に数千億円が吹き飛ぶことが当たり前の自転車操業的なビジネスです。

そんなの全然サステイナブルな事業ではないですよね?
業界中の皆さんは当たり前になっちゃってますけど。。。

塩野義製薬の手代木社長も医薬品ビジネスの危うさに言及しています。

塩野義・手代木社長 持続的成長に向けて「HaaS企業」への変革に意欲 パートナーシップの重要性強調 | ニュース | ミクスOnline

そこで、近年は各社は医薬品以外の事業を所有」することで、パテントクリフから脱却した安定的な収益構造化を目指しています。

各社の医薬品以外の事業
  • 小野薬品:健康食品事業
  • 住友ファーマ;フロンティア事業
  • アステラス製薬:Rx事業
  • 塩野義製薬:ワクチン事業、アプリ治療
  • 中外製薬:診断薬事業

上記の事業で共通する特徴は、パテントクリフによる収益の大きな変動がないことです。

各社、こういった新たな事業を確立することで医薬品開発に継続的に投資する基盤を構築しています。

まとめ

今回は、「なぜ内資製薬は自社創薬する必要があるのか?」を起点に、現代の製薬業界のトレンドや課題、それに対する対応策について紹介しました。

まとめると私のロジックは以下になります。

もちろん、中型製品複数でクリフを乗り越える戦略もありだと思うので、全てが当てはまるわけではないですが、それでも大枠の理由は変わらないと思います。

少し説明不足の点や分かりにくい点もあったかも知れないです。すみません。

個人的には、この記事を書いて自分の考えをまとめられたので良かったです。

是非皆さんのご意見もTwitterで引用リツイートして教えてくれると嬉しいです!

反対意見、賛成意見お待ちしております!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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