【世界一ホットな最先端モダリティ】ガンマ・デルタT細胞療法の現状と世界の企業を徹底解説

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです。

皆さん、ガンマデルタT細胞療法って知ってますか??

T細胞は知ってるけど、ガンマデルタT細胞ってなに?

なんでガンマデルタT細胞なんてマイナーな細胞を使うの?

ガンマデルタT細胞療法は最近台頭してきた超最先端の細胞療法なんです!
絶対に近い将来に皆さんの目の前に現れます!

最近、武田薬品がガンマデルタT細胞療法を開発するベンチャーを買収したことや、BMS社がガンマデルタT細胞療法のベンチャーと提携拡大を進めていることから注目度が高くなっています。

そこで今回は、ガンマデルタT細胞療法の現状と将来性を、先行ベンチャーのプラットフォーム紹介を通して徹底解説します。

この記事を通じて、細胞療法の世界的トレンドや、最先端プラットフォームについて勉強してください!



ガンマデルタT細胞療法 (γδT細胞療法) の概要と強み

まずは、基本的なガンマデルタT細胞療法の概要とその強みを解説していきます!

ガンマデルタT細胞とは?

ヒトの末梢血中のT細胞のうち、γδ鎖のT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞のこと

ヒト末梢血中のT細胞のほとんどは、αβ鎖のTCRを発現しており、γδT細胞の存在比率は少ない。

現在上市されているCAR-T細胞療法はαβ型T細胞を利用しています。

なぜ、ガンマデルタT細胞なのか?

そもそも、ガンマデルタT細胞を使用する利点は何なのでしょうか?

ガンマデルタT細胞の利点
  • ガン細胞に多く発現するガン抗原以外の様々な標的 (IPP、MIC A/B、HMB-PP、ICAM-1、CD166 ) によって、ガン細胞を認識できる
  • HLA非依存で細胞を標的とするため、HLA-lossのガン細胞も標的にできる
  • 様々な組織に自然にホーミングして免疫監視を行うため、固形ガンに対する薬効が期待できる
  • HLA不一致による移植片対宿主病(GvHD)を引き起こすリスクがないため、他家移植 (既製品化) が可能

具体的な作製プロセス

以下には各社で共通したγδT細胞の作製プロセスを示しています。

CAR遺伝子やTCR遺伝子を導入するか否かや、iPS細胞化するなど各社で多少違いはあるものの、大まかには同じようなプロセスです。

世界最先端のγδT細胞療法プラットフォーマーはこいつらだ!

ここからは世界的に注目を集めている各ガンマデルタT細胞療法を行っているバイオベンチャーを紹介していきます。

各社での少しずつ違いがありますが、まだ最も進んでいる開発品でもPh1なので、どのプラットフォームが成功するのかは未知ですね!

各社の違いをまとめて以下に示します!

Adicet社 (唯一のPoC獲得企業)

Adicet社は、ガンマデルタT細胞のサブセットである「Vδ1+ T細胞」に、キメラ抗原受容体 (CAR) またはT細胞受容体 (TCR) を導入した細胞療法を開発しています。

なぜVδ1+ T細胞なのか?

そもそも、γδT細胞にはVδ1, Vδ2の2つのサブセットが主に存在します。そして、通常はVδ2の方が末梢血中に多く存在します。

しかし、Vδ1+ T細胞の方が抗ガン作用としては優れていることが近年報告されています。

Vδ1+ T細胞の強み ( vs Vδ2)
  • 低酸素、低栄養な腫瘍内環境でも活性が高い
  • 腫瘍組織への移行性が高い (CCR5 high)
  • ガン抗原に対するクローン拡大効率が高い
  • 細胞障害活性が高い etc…

さらに、同社では、自社Vδ1+ T細胞を改良するために独自のT細胞受容体様抗体 (TCRL )プラットフォーム技術を開発しました。

このTCRLを自社Vδ1+ T細胞に発現させることで、より抗腫瘍効果を増強する戦略です。

TCRLプラットフォーム技術

腫瘍細胞内の腫瘍抗原(細胞内タンパク質)を認識するCARを作製することができるモノクローナル抗体技術です。
HLA-Ⅰに提示された腫瘍抗原を直接認識することで、γδT細胞内にシグナルを流します。

固形がんには腫瘍特異的な表面抗原が少ないため、細胞内タンパク質に特異的に由来する腫瘍抗原に選択的に結合する能力は、細胞療法にとって重要な利点となります。

2022年6月、B細胞性非ホジキンリンパ腫(B-NHL)適応でPh1試験を実施しているADI-001 (CD20 CAR γδ T cell) について、有力な中間解析結果を得たと発表しました。

  • 最終評価患者は8例
  • 安全性に大きな懸念は無し
  • 投与量レベル2および3の患者を合わせると、80%のORRおよびCR率を達成
  • 自家 抗CD19 CAR-Tの治療歴がある患者3例において、ORRおよびCRが100%を達成

GammaDelta社 (組織からも単離可能)

ガンマデルタT細胞のサブタイプである「Vδ1+T細胞」に基づく既製品化した細胞療法の開発を進めています。(Adicet社と同じコンセプト)

同社は17年から血液由来と組織由来のガンマデルタT細胞プラットフォームについて、武田薬品と開発提携を結んでおり、2021年に武田薬品による買収が発表されました。

同社のVδ1+ T細胞プラットフォームでは、ヒト血液や組織 (皮膚など) から高品質のVδ1+ T細胞を分離・増幅することが可能です。

また、Vδ1+T細胞にCARなどの遺伝子コンストラクトを導入し、ガンやその他の重篤な疾患をターゲットにすることも検討しています。

2021年9月には、血液由来の非改変Vδ1+ T細胞療法「GDX012」について、急性骨髄性白血病を対象とするPh1試験を開始しています。

組織からVδ1+ T細胞を単離することに何かメリットがあるのでしょうか??
他社は血液由来がメインのようですが。。。

Immatics社 (TCR導入に強み)

Immatics社は、ACTallo®というプラットフォームを用いて、同種移植を目指したγδT細胞療法の開発に取り組んでいます。

同社は、まだγδT細胞療法については大きな進捗は認められませんが、TCR-T細胞療法では複数開発品とメガファーマとの協業を持っています。

特に、「独自の強力なTCRを探索・同定技術」を活用して、γδT細胞に同定したTCRを導入することで他社との差別化を狙っています。

2022年6月、BMS社との間で2019年に締結された戦略的提携契約を拡大を発表した。

これにより、Immatics社の他家γδT細胞を用いた基盤技術「ACTallo」を活用した、ガンに対するTCR-T療法やCAR-T療法の開発で協力していきます。

Century社 (iPS細胞利用)

Century社は、iPS細胞を用いたγδ iT細胞 (Vδ2+) を創製することで、細胞療法の開発を目指しています。

同社では、γδT細胞療法の開発品についてまだ大きな進捗は認められませんが、iPSA CAR-NK細胞療法などで複数の前臨床開発品を保有します。

具体的なプロセスは以下です。

  1. 血液由来からVδ2+ T細胞を単離
  2. iPS細胞化
  3. CAR遺伝子等を導入
  4. 単一細胞化してDNA変異などを検査
  5. マスター細胞として保管
iPS細胞化する強み
  • 単一細胞化することで、まれに起こるDNA変異などを避けられる
  • マスター細胞ストックが均一であるため、Lot間差が生じにくい

また、Adicet社と同様に「ガン抗原特異的に認識するTCR様受容体」をデザインし、γδT細胞に搭載する戦略です。

2022年1月、Century社とBMS社は、他家iPS細胞由来のNK細胞(iNK)、γδT細胞(iT)の共同開発とライセンスに関する契約を締結したと発表しました。

個人的な見解

固形ガンに対する薬効がターニングポイントになる!

従来の細胞療法が完全に普及しない最も大きな原因の一つに「固形ガンに対する薬効が低い」ことが考えられます。

固形ガンへの薬効を示すために世界的に研究が進んでいますが、未だ固形ガンに対する薬効は難しい問題です。

そのため、BiTE抗体 (二重特異性抗体) に少し押されている印象です。

BiTE抗体は比較的低価格で、免疫細胞とガン細胞を近づけることで細胞療法と似たメカニズムで抗腫瘍効果を示しています。

もし、γδT細胞療法で固形ガンに対して有効性が示せるのならば、細胞療法全体のブレイクスルーに繋がる可能性があります!

既製品化が可能なら細胞療法がよりメジャーなモダリティに

細胞療法が普及しない原因のもう一つに「既製品化が出来ず、手間と価格が割に合わない」ということがあります。

その課題を解決するためにiPS細胞やユニバーサル細胞化など行われています。

そこで、γδT細胞はHLA非依存で細胞障害性を示すため、他家細胞を移植が可能です。

もし、γδT細胞で細胞療法の既製品化が可能なら細胞療法全体にとってブレイクスルーに繋がるでしょう!

最後に

今回は、世界的に注目され始めた「ガンマデルタT細胞療法の現状と将来性」について、徹底解説してきました。

細胞療法はまだ十分に普及していないと思います。

それは「価格的な問題」や、「薬効的な問題」が複数存在するためです。

しかし、ガンマデルタT細胞療法それら全ての問題の解決を期待される非常に先進的な技術です。

今後、世界的なガン領域メガファーマの参入も想定されるので、世界に遅れないように付いていきましょう!

今回も、最後まで読んで頂きありがとうございました!

【絶対読むべきの書籍紹介】

バイオベンチャー分析
スポンサーリンク
ティーダをフォローする
ティーダの製薬業界研究blog ~製薬の全てをそこに置いてきた~

コメント

タイトルとURLをコピーしました