【メタバース・VR・ロボットを実践】アステラス製薬のDX戦略を徹底解説

アステラス製薬のDX 製薬企業分析

先日2022年1月21日にアステラス製薬デジタルトランスフォーメーション (DX) に関する取り組みについて説明会が開催されました。

そこで今回は、どこよりも最速でアステラス製薬のDX説明会について、個人的な見解も含めて解説していきます。

近年、DXは様々な業界で叫ばれている取り組みですが、アステラス製薬独自のDX戦略について特に注目して紹介していきます。

この記事を読むことで、製薬業界全体のDX戦略の未来についても理解を深められます!



デジタルトランスフォーメーションに取り組む理由

まずはここで、アステラス製薬がDXに取り組む理由について説明しています

アステラス製薬は先日発表した2021~2025年の中期経営計画で、

最先端の「価値」主導型ライフサイエンス・イノベーターを目指すアステラスの変貌への新たな一歩

という目標を掲げています

そして、その目標を達成するための「達成の要」となるのがデジタルトランスフォーメーション戦略だと考えています。

デジタルトランスフォーメーションが製薬業界に及ぼすインパクト

製薬産業は莫大な「費用」と「時間」がかかる産業と言われています。

しかし、DXを上手に活用することで、以下のようなコスト・時間の削減を実現できると考えています。

アステラスのDX戦略
アステラス製薬説明会資料から引用

さらに、製薬業界は以下に示すように高度な情報産業でもあります。

  • バリューチェーン全体で、膨大なデータを扱う
    • 創薬から開発、製造、販売まで常に医薬品に関する様々な情報がついて回る
  • 世界中で、膨大なデータを取り扱う
    • アステラス製薬はグローバルの製薬企業として世界 70 カ国以上でビジネス展開

製薬の過程で必要な膨大な情報を管理するため、要所にDXで改善出来るポイントが存在すると考えています。

アステラス製薬のデジタルトランスフォーメーション

以下からは実際にアステラス製薬が「既に導入しているDXシステム」から「導入予定のDXシステム」までバリューチェーンに沿って実例とともに紹介していきます。

【創薬】人×AI×ロボットの医薬品創製プラットフォーム

  • 超大規模バーチャルスクリーニング

低分子化合物のバーチャルスクリーニングプロセスにクラウドAI (機械学習) を導入しました。

従来の方法

社内高性能サーバーを活用して、一度に 100 万レベルの候補化合物ライブラリからの評価して、標的分子に結合しやすい化合物を探索していた

新規の方法

クラウドと「結合しやすさ」のシミュレーションを行う機械学習ツールを組み合わせることによって、一度に数億レベルの化合物をスクリーニング可能。
しかも、ライブラリに登録されている化合物だけではなくて、論理的に合成ができる、ライブラリに登録されていない化合物も含めて評価可能

従来の環境であれば 1, 2年かかったであろう計算が、最短で 1, 2 週間で結論を出せることが示されてきています

  • 人×AI×ロボットを統合した“Human-in-the-Loop”型の医薬品創製プラットフォーム

上記の大規模バーチャルスクリーニングで取得した化合物について、医薬品としての適正を高めた化合物に進化させるプロセスが、この「医薬品創製プラットフォーム」で行うことです。

最適化プロセス
  1. ヒット化合物をスタートとして、AI を使って、この化合物に似た構造の化合物をたくさんデザインする
  2. そのデザインした多くの化合物を、また AI が水への溶けやすさなど、様々な特性を予測する
  3. 数万種の化合物の種類にスコアを付けて、そこから医薬品としての適性が高そうなもの選抜する
  4. スコアをつけた化合物をロボットで自動合成をして、合成をした化合物をまた別のロボットで細胞アッセイを行って、その結果を見て評価する
  5. これを繰り返していき、化合物を最適化していく

しかし、AIは連続性のあるデータの予測をすることは得意でも、そこに意思を持って非連続性を加えるということはできません。
そこで、研究者が非連続性のある考えを加えて、より精度を高めていくことが必要です。

従来であれば約 2 年はかかったであろう、このヒット化合物から医薬品候補化合物の取得までの期間を、最短半年できたという実績がある

  • 世界に類のない細胞創薬プラットフォーム「Mahol-A-Ba」

まほろ」というロボットを導入して、iPS細胞の操作、細胞培養等の操作をロボットが自動で行います。

同時に数千から数万の規模の実験ができ、高い精度、また高い再現性で実験を繰り返すことによって、今までの 100 倍から 1,000 倍規模の実験を同じ時間で可能。
しかも、ロボットがやるので、24 時間 365 日実験可能

「まほろ」ってなに?:
バイオ関連実験を自動的で行ってくれるロボットです。
理研など一部の施設では既に導入されており、現在のバイオ実験ロボについては最先端で、有名なロボットです。

https://www.aist.go.jp/aist_j/highlite/2015/vol3/index.htmlの記事より引用

【開発】患者体験を変える 患者中心のリモート臨床試験〜Decentralized Clinical Trials (DCT)〜

臨床試験に参加する患者にとっては、治験自体が負担であることは避けられません。
そこで、その負担をできるだけ小さくして、患者にとっても良い臨床試験にするというのが、患者中心のリモート臨床試験です。

具体的には以下の取り組みを考えています。

  • 治験参加の同意取得をオンラインで実施する
  • 自宅にいる患者さんに、その治験薬、臨床試験で使う医薬品の候補を送る
  • 日常生活の中でのデータをアプリやデジタル機器を使って取得する
  • 医師の診察もオンラインで行う

最終的には、上記のプロセス全体を一つのアステラス独自のアプリで完結するようなプラットフォームとして構築をして、それをグローバル展開していきたいと考えています。

・アステラス製薬での実施例

遺伝性筋疾患に対する治療薬 ASP0367 (選択的PPARδ調節剤) の臨床試験において、患者リクルートにデジタル化・オンライン化を導入いたしました。

アステラスのDX戦略
アステラス製薬説明会資料から引用

【製造】安定供給を可能とするデータマイニング

  • 自社創成モノづくりデータマイニングシステム「DAIMON」

信頼できる医薬品を安定して届け続けるためのモノづくりを、データを活用することによって高度化するシステムになります。

具体的には、医薬品の品質データを回帰分析などを駆使して、統計的に基準から外れていないかを判断し、生産を安定化するシステムです。

ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』の大門未知子がシステム名の由来なんじゃないか?
「私、失敗しないので。」という名言に、製造で失敗しないための管理プラットフォームをかけたネーミングな気がする (笑)

  • 医薬品製造の革新に向けた挑戦(検討中)

VRを用いた無菌作業教育訓練
訓練に時間と場所が必要な工業の無菌作業について、VR環境で教育訓練を実施するシステム

MR (Mixed Reality) を用いた製造作業支援
リアルの視野中に、デジタルでの案内を映し出すスマートグラスを組み合わせることで、製造作業を正確・適切に行えるようにサポートするシステム

【営業・販売】革新的なデジタルチャネル開発

  • 顧客体験を革新するオムニチャネルコミュニケーション

従来の対面での面談だけでなく、デジタル・オンラインでの医師へのアプローチを組み合わせることでより効率的なコミュニケーションを実現します。

  • 専門性の高い情報提供、収集活動ができる、オンラインに特化した MR
  • チャットで 24 時間製品についてのコミュニケーションが取れるチャットボット
  • 医療関係者向けの製品情報を提供しているアステラスメディカルネット
  • メタバースを活用した先進的な情報提供手法の構築 (検討中)

現状で場所や時間を選ばないオンラインコミュニケーションは進みました。
しかし、双方向のコミュニケーションという点ではまだ課題があります。

そこで、以下の最先端技術を活用して、医療関係者との双方向のコミュニケーションを目指します。

  • 仮想空間上 (メタバース) での研究会・講演会
    • 参加者同士の偶発的な情報交換など、コミュニケーションの高質化
  • バーチャルとリアルの融合 (リアルとバーチャルの参加者同士のコラボ)
    • 会場参加者とオンライン参加者の自由なコミュニケーションを実現

【市販後調査】医薬品安全性監視業務の自働化

  • ファーマコヴィジランス業務の自動化

市販後調査において、安全性情報を受領してから、決められたデータベースに登録するところまでを AI や RPA、Robotic Process Automation を活用して自動化を行いました。

将来的には年間数億円レベルの経費削減が効果として期待できます。

機関投資家の質問

Q:デジタル人材の確保や外部人材の登用などについての考えをお聞かせください。
A:
・データサイエンティストに関しては、社内の専門家を登用して、その人たちが活躍できる環境を提供したい。
・デジタル変革を推進する人材は、ビジネス部門の人材をリーダーとして教育していく必要性と外部の専門家を活用する必要性がどちらもある。

Q:プラットフォーム構築について、外部から買ってくるものと自社独自で創り上げるものの区別はどうつけているのか?
A:規制がかかっている業務については、業界標準のクラウドに乗って業界全体で進化していく。
創薬研究については、独自のものをアステラス独自の組み合わせてプラットフォームを作っていく。

Q:アステラスの多くの治験で、このリモート治験が主流になっていく予定か?
A:臨床試験で、このリモート臨床試験が適しているもの、そうでないもの、その組み合わせがある。
しかし、プラットフォームが整備されていればケースバイケースで対応することが可能だと考えている。

Q:リアルワールドデータの活用について、独自の取り組み、あるいは考えている価値創出があれば教えてください
A:希少疾患において、実薬を投与されている被験者に対応して、非常にさまざまな背景がマッチしたリアルワールドデータを比較対象例であるかのように、臨床試験に組み込んでいけたら理想だと考えている。

個人的な見解

創薬活動のバリューチェーンに沿って、それぞれで活用されるDX事例を紹介してくれたため、非常に理解しやすかったです。

上層部が思うほど現場の研究員はDXに付いていけないのでは?

創薬のプロセスの中で、「AI×ロボット×ヒト」というワードがありましたが、このサイクルにヒトが効率的に介在するためには、その人自身もAIやロボットに関してある程度理解している必要があると思います。

その場合は、現場で今までウェットしかやってこなかった研究員のうち、どれだけが適切にDXに付いていけるのかが懸念点です。

やはり、今後インフォマティクスを出来る人材になることが生き残る鍵になりそうですね!

以下では「バイオインフォのはじめの一歩」についてまとめているので、是非読んでみてください!

今後ますます自分で考えられる研究者のみが生き残る世界に

現段階でもテクニカルスタッフやCROなどに実験を委託する研究所が増えてきています。

そこにこれだけのDXが進むと、益々研究員自身が自分の手を動かす機会は減って、思考する活動が増えてくることが考えられます。

その場合は、今までのように上司やプロジェクトリーダーに言われるがままに動いていたなんちゃって研究員は仕事が奪われてしまうことでしょう。

自分で研究を思考して提案できる人材になっていく必要性が増していきますね!!

最後に

中外製薬に引き続き、アステラス製薬がDX戦略について説明会を開催しました。

今後は他の製薬企業もDX戦略を具体的に社外発表していく流れになるのでしょうか?

言葉だけのDXを歌っている企業は中身がないと徐々にバレてしまうかもしれませんね〜。

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