【さらなるGPCR創薬の高みへ】そーせいグループの2022年R&D Dayと将来性を解説

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです。

先日2022年10月13日にそーせいグループのR&D説明会が開催されましたね。

資料は以下です!
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4565/announcement/83086/00.pdf

今回はそーせいグループの2022年のR&D Dayをまとめて、解説してきます!

GPCR研究技術では世界トップクラスである同社が、いかにプラットフォームを強化しているのかを説明しています。

さらに、開発品についても今注力している品目について解説されています。

また、以下の記事ではそーせいグループ全体の特徴や将来性についてまとめています
まだ見ていない方は是非ご覧下さい!



2022年3月~9月の主要イベント

まずは直近で起こったイベントについて紹介されています。

そーせいグループR&D Day資料を改編

個人的にはニューロクライン社からのPh2開始のマイルストンが大きかったです

トランスレーショナルメディシン (TM) 戦略

ここでは、そーせいが研究開発の戦略として掲げているトランスレーショナルメディシンについて説明されています。

トランスレーショナルメディシンとは?

薬物動態学、薬力学、バイオマーカー、ゲノムデータなどの前臨床データや臨床研究の成果を活用して、患者さんの転帰を予測し、最適化することを目的とする
(引用:https://www.parexel.com/japan/solutions/clinical-development-services/translational-medicine)

トランスレーショナルメディシン (TM型) では、「従来型の開発戦略で生じていた問題」を解決出来ると考えています。

従来型での問題
  • POC判断まで10年以上かかる
  • 資本集約型で、時には数十億ドル単位の損失
  • 「プログラムの存続」を重視する企業が多い
  • 低い成功確率

TM型では以下のような形で改善が見込めます。

TM型の利点
  • より早く重要な臨床データを獲得
  • 意思決定を速め、損失を最小化
  • 意思決定を速めた分を新規プログラムの「スイートスポット」に再投資
  • 「仮説の検証」を重視
  • より高い成功確率

そーせいはTM型の研究開発によって、今後10年のパイプライン価値を高めることが出来ると考えています。

ニューロクライン社とのムスカリンM4作動薬はTM型らしいですね

強み構築:GPCR創薬プラットフォームの強化

ここでは、同社の根幹であるGPCR創薬プラットフォームの強化について紹介されています。

現在の40以上のプログラムが進行中で、主に3つの疾患に注力しています。

そーせいグループR&D Day資料を改編

同社のGPCR研究プラットフォーム基盤は以下の2つです

  • STAR技術:
    GPCR構造を安定化させ、構造を決定する技術
    70品目以上の安定化受容体作動薬または拮抗薬を創製
  • SBDD技術:
    解明した結晶構造を活用した化合物の選定技術
    自社・提携プログラムを含めこれまで25品目以上の前臨床候補化合物を同定

以下のブログでも詳しく解説しています。

しかし、同社は既存技術だけに満足していません。

複数の新規技術を取り込み、組み合わせ、強固なプラットフォームの構築を目指しています。

そーせいグループR&D Day資料を改編

クライオ電子顕微鏡(Cryo-EM)

標的タンパク質の立体構造を決定するための最先端の技術

  • 日常的なCryo-EMによる構造決定によりSBDDをサポート
  • X線結晶解析とCryoEMの両方を用いてGPCRのファミリーA、ファミリーB、ファミリーF受容体を含む15以上のGPCRで45以上の構造を解析し、 SBDDに活用

プロテインバインダーツールキット

立体構造決定のために標的タンパク質に導入するタンパク質ドメインを選定する技術

  • CryoEM構造の大半の解析には、様々なタンパクドメインの追加導入が必要
  • タンパクドメインにはStaR®タンパク質への結合や、発現、精製中の導入が含まれている
  • GPCR以外の膜タンパク質の構造決定に特に有用

DELスクリーニング(DNAエンコードライブラリ)

標的タンパク質に対して新たな結合部位を同定するための技術

  • 創薬初期段階でヒット化合物を得るための新たな戦略
  • 150億~1兆を超える化合物ライブラリーが活用可能
  • StaR®タンパク質は、既知のテストツール分子を用いてパニングして、新たな結合部位が特定可能
  • これまでに10以上のStaR®タンパク質がDELスクリーニングに活用されている

ケモゲノミクスGPCRライブラリースクリーニング

リガンドとして機能する活性化合物をプローブとして用いて、標的タンパク質のプロテオーム機能を解明する技術

  • ケモゲノミクスGPCRライブラリスクリーニング(野生型タンパク質)
  • GPCR構造を活用した独自のケモゲノミクスと薬理学の知識に基づく最大5万の化合物セット
  • 390以上のGPCRとリガンド機能を網羅する化合物をセットを含む
  • 10以上のGPCRターゲットがスクリーニング済

新規技術自体は他社も所有しているものですが、StaR技術と合わせることで優位性を出していますね!

GPCR以外の膜タンパクに対する研究

そーせいは、GPCR以外の膜タンパク質へのアプローチにも積極的に展開していく計画です。

イオンチャネルなどへのアプローチは以前から言っていますが、まだ形にはなっていないですね



開発品の進捗

ここでは、今回紹介された開発品の中でも注目すべき製品を紹介します。

経口GLP-1作動薬(PF-07081532)

PF-07081532はファイザー社と提携している開発品です。

Ph1の結果をファイザー社が公開しています。

  • 2型糖尿病患者で投与患者において、体重が5.5%減
  • 肥満症患者で投与患者において、体重5.2%減

GLP-1に対する開発品群の中で、ベストインクラスの薬効と考えているそうです。

この結果を受けてPh2へ進み、投与量の最適化を行う計画です。

GLP-1作動薬はリベルサス錠が存在し、他社の競合も激しいと思います。注目を集めるドル箱領域ですが、他社との差別化が非常に大切ですね!

EP4拮抗薬 (がん)

様々な免疫機能に関わることから、複数の製薬企業によってEP4は標的になっています。

EP4とは?

EP4はPGE2 (プロスタグランジンE₂) が作用するGPCRの一種です。様々な免疫細胞に発現しており、免疫環境の構築に関わっています。

同社ではStaR®プラットフォームを活用して、有効性の高い拮抗薬作動薬の同定に成功しています。

ターゲットとなる疾患のうち、最もホットな疾患領域はがん免疫領域です。

がん細胞から産生されるPGE2が免疫細胞に作用することで、免疫環境をがん細胞の増殖に優位な環境に傾けることが報告されています。

そこで、PGE2の受容体の中でも重要なEP4に対する拮抗薬を用いることでがん免疫環境を編集し、抗がん作用を高めようと考えています。

小野薬品が同様のターゲットで自社での開発を実施していますね!

そーせいがSBDDプラットフォームを用いて同定した化合物はHTL0039732と名付けられています。

EP4拮抗薬HTL0039732の分子プロファイル
  • EP4に対する高い選択性
  • 優れたin vitro安全性・ADME特性、PKプロファイル
  • 低用量で高い受容体占有率
  • in vivoマウスモデルにおいて、PD-1抗体との併用投与による優れた薬効

本化合物について、Cancer Research UKがPh1/2b試験の資金拠出、デザインおよび実施を行います。

小野薬品のEP4拮抗薬はBMSから返還されて、自社で開発しています。
そーせいの開発品の優位性が気になりますね〜

EP4作動薬 (炎症性腸疾患)

EP4受容体はがんで環境では炎症を抑制すること負の作用を持ちますが、慢性炎症環境では炎症を抑えることで正の作用を示すことが可能です。

また、EP4によって腸粘膜修復を促進する効果があることも報告されているため、炎症性腸疾患に対する活用を進めています。

実際に小野薬品のEP4作動薬では、潰瘍性大腸炎患者における投与後2週間で組織学的な初期の有効性が確認されています。

そこで、同社はEP4作動薬を自社プラットフォームから創製しました。

同定したEP4作動薬の分子プロファイル
  • 高親和性、強力な完全作動薬、優れたEP受容体選択性
  • 透過性が低く、経口吸収が少ない
  • 良好なin vivo有効性
  • 良好なin vitro安全性プロファイル

従来の開発品では腸管から早期に吸収されてしまうことから、腸管修復作用が弱く、全身暴露によって神経系に副作用が生じる可能性がありました。

しかし、同社では腸管透過性が低く、腸管での薬剤濃度を高く保てる製剤工夫を行っています。

in vivo試験の結果がなかったように見えるけど、、、??

機関投資家からの質問

他社EP4拮抗薬と比べて優れた点

EP4拮抗薬については、他社の多くは古いプログラムからリポジショニングしているが、自社では独自に作製しているため、優位性を出せると考えている。

また、複数会社が参入したとしても、がん併用市場は非常に大きいので問題はない。

PF-07081532のPh1で出た毒性はPh2で回避出来ると考えているのか?

ファイザー社の会見では、よりスローなタートレーションによって毒性回避が出来ると言っている

トランスレーショナルメディシンの実例は?

同社実施する具体的な取り組みとしては、

  • 前臨床と臨床での協力を高める (同じ建屋にいる)
  • ヒトでの効果を頑強に予測出来る前臨床モデルを活用する
  • ヒトでの仮説を早期に検証出来る臨床デザイン
  • バイオマーカーの探索、患者の層別化を重視する

ここで挙げられている取り組みは多くの会社で常識的にやっている気がするけど、、、

個人的な見解

相変わらず素晴らしいプラットフォーム群

既出の内容もありましたが、全体的にGPCR創薬プラットフォームの話がサラッと説明されていましたね。

おそらく他社なら細かく説明する新規技術をサッと説明している点から、そーせいの研究技術力の高さが感じられました笑

ペルセウスプロテオミスク社なら多分それぞれにめっちゃスライド割いてますからね!

イオンチャネルなどの研究成果についてはそろそろ芽が出てくるとより良いと思います。

あとは、低分子開発品が全体的に多いので、既に提携している抗体創薬企業との研究結果も出てくると良いですね!

ターゲット探索とか前臨床からは他社に任せたほうが良い気がする

今回の話では新規創薬ターゲット探索については触れられてなかったです。

また、トランスレーショナルメディシン手法も古くから実施されている方法の説明なようでした。

やはり、そーせいの強みとしては「既に疾患関連が分かっている有望な標的タンパク質に対して有効な化合物を同定する技術」だと思います。

なので、標的探索や前臨床以降の研究を全てやらずに提携先に任せても良いのではないでしょうか?

メガファーマが開発出来ない膜タンパク質に作用する化合物を見つけるだけで、世界有数のバイオベンチャーになれると思うのですが。。。どうでしょう?

メガファーマが勝手にバイオマーカーとか見つけ欲しいですわ!

最後に

今回は、そーせいグループの2022年のR&D Dayを解説していきました。

相変わらずプラットフォームについてはより頑強なものが構築されつつあり、世界に誇る技術力だと思います。

開発品については、Ph2の開発品が始まったばかりのムスカリンM4作動薬(NBI-1117568)だけで少し寂しい気もしますね。。

Ph2にあったアデノシン A2a 拮抗薬 Imaradenant(AZD4635)はアストラゼネカの臨床パイプラインから外れたため、返還の可能性もあります。

今後のしばらくは提携やマイルストンによる収入が中心で、ロイヤルティ収入はまだ少し先になりそうです。

今後も大型提携などを注視していきましょう!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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