こんにちは、ティーダです。
突然ですが、皆さん、ビオンテック社ってどんな会社か知ってますか??
もちろん!mRNAワクチンの会社でしょ?
mRNAワクチンでガン領域に注力してることは知ってるよ!
実は、mRNAワクチンはもちろん、他のmRNA創薬や細胞療法、抗体、低分子医薬も活用して、ガン領域全体に注力する巨大ベンチャーなんです!
mRNAワクチンが世界的に有名で、他モダリティを所有することを知らない方も多いですよね?
また、2022年7月時点で、時価総額も5兆円 (390億ドル) を超えており、国内で言うと中外製薬とアステラス製薬の間の規模です。
成長性を考えると、将来的にメガファーマの仲間入りが期待されています。
そこで、今回は、ビオンテック社のR&D説明会資料を読み解き、自社独自技術と将来性について徹底解説していきます。
さらに、ビオンテック社の紹介を通じて、最先端のmRNA創薬技術のトレンドも知ってください!
参考にしたのは、156ページのR&D資料やHP等です。
スライド多くて、まとめるの大変すぎたので、かなり省いて紹介します。。。。
今回は特に、ビオンテック社のmRNA創薬技術に重点を置いて解説します!
ビオンテック社の沿革
ビオンテック社は、現CEOであるUgur Sahin氏と彼の妻を含めた3名によって、2008年にドイツで設立されました。
2013年のmRNAガンワクチンを皮切りに、個別化mRNAワクチンなど治験を徐々に開始しています。
2018年には、mRNAワクチン技術を用いたインフルエンザワクチンの研究開発契約をファイザーと締結しました。
そして、2019年にナスダックに上場を果たしています。
それ以降に、バイスペシフィック抗体や細胞療法などの複数のモダリティについて研究開発を開始し、ガン免疫を包括的に狙う企業として成長しています。
現在では、Genentech社、Genmab社、Sanofi社、Regeneron社などのメガファーマを初めとする複数企業と提携を結んでいます。
- 1,000人以上の研究者
- 200件以上の特許出願
- 300以上の論文
を保有しており、特にmRNA創薬については世界的なプラットフォーマーとして君臨しています。
今回は詳しく説明しませんが、「コロナワクチン」については以下の書籍で非常に詳しく、ドラマティックに紹介しているので是非読んでみてください!
カリコー博士はいつ来たの?
mRNAといえば、2005年にシュードウリジンに関して研究を発表したカリコー・カタリン博士を連想する方も多いと思います。
彼女は、米ペンシルベニア大にて上記の発見をしたのちに、RNARx社という会社を立ち上げました。
その後、RNARx社は事業を停止し、2013年よりビオンテック社に加わり、上級副社長に就いています。
ビオンテック社のマルチモダリティ戦略
ビオンテック社はmRNA医薬を中心に大きく4つの創薬モダリティを所有しています。
これらは基本的にガン領域をターゲットとした開発品がメインですが、近年では感染症ワクチンについてもコロナウイルスの経験を生かして、展開しようとしています。
以下ではmRNA創薬について、特徴的な技術を紹介しています。
世界最高レベルのmRNA創薬プラットフォーム
やはり、ビオンテック社といえばmRNA創薬でしょう!!
ビオンテック社が所有するmRNA創薬の技術一覧は以下です。
非修飾ウリジン含有mRNA (uRNA)
こちらは、シュードウリジンを用いたウリジン置換等を行っていないmRNAワクチンです。
以下の2種類のプラットフォームに使用されています。
- FixVAC:
患者間で共通のガン抗原を組み込んだガンワクチン - iNeST:
患者固有の変異を組み込んだ個別化ガンワクチン
FixVACは、同社で以前から保有しているプラットフォームで、各ガン種ごとで患者間で幅広く共有されているガン抗原をmRNAワクチンに組み込んでいます。
逆に、iNeSTは、各患者のガン検体から患者独自のガン変異を見出し、それらをmRNAワクチンとして組み込んだ個別化ワクチンです。
同社では、iNeSTのmRNAワクチンを自社工場から配達するまでを約5週間以内で実現しています。
iNeSTでは、AIや機械学習を用いて、各患者で抗原性が高いネオアンチゲンを同定する技術を活用しています。
AIを用いた似た取り組みはNECも用いて行っており、当ブログでも紹介しています!
ヌクレオシド修飾mRNA (modRNA)
このmRNAは、シュードウリジン等のmRNAに様々な修飾を加えているフォーマットです!
自然免疫系の受容体 (TLR7、8) によるワクチンRNAの認識が低下し,自然免疫による影響が低下することで翻訳効率が増加します。
何点かの核酸修飾の結果、Th1型の抗原特異的濾胞性ヘルパーT 細胞 (Tfh) の発現が誘導され、強力で持続的かつ高親和性の抗体反応がもたらされると期待されています。
コロナワクチンで使用されているのは、このフォーマットのmRNAワクチンです!
自己増幅mRNA (saRNA)
このmRNAは、投与したmRNAが自己増殖を起こすようデザインされています。
その結果、少量のmRNAワクチン投与でも、目的タンパク質を高発現させることが可能です。
トランス増幅RNA (taRNA)
このフォーマットは、上記のsaRNAと同様の目的で、投与したmRNAが自己増殖を起こすようにデザインされています。
しかし、増殖デザインが少し異なり、投与RNAが2つに分割され、1つ目は「レプリカーゼ」をコードし、2つ目は「目的遺伝子」をコードします。
そして、細胞内に別々で導入され、発現したレプリカーゼによって、目的遺伝子が増幅されます。
ガン領域の開発品現状
現在、同社のガン領域では4つのモダリティで約19個の開発品・開発候補品があります。
その中でも個人的に興味深い開発品を2品目、簡潔に紹介します!
BNT152, BNT153:RiboCytokines
この開発品は「BNT152:IL-7」、「BNT153:IL-2」をコードするmRNAで、併用投与を計画しています。
通常IL-2単体だとTregも増殖を起こしますが、BNT152と併用して加えることで、CD8T活性化のみを優先的に引き起こすことが可能になるそうです。
非臨床モデルにおいて、mRNAガンワクチンと併用することで完全寛解 (CR) が認められています。
先日、Nektar社のPEG化IL-2とPD-1抗体の併用Ph3試験が失敗したこともあって、単純なIL-2だけでは成功確度は低いと感じています。
BNT211:CAR-T + CARVac
こちらはCAR-TとmRNAワクチンを同時に投与する開発品です。
CAR-T単体よりも、CARVac (mRNAワクチン) を併用することで、CAR-Tの増殖や持続性、効率が向上するそうです。
興味深いことに、Ph1で、精巣腫瘍患者に対して、腫瘍退縮が認められています。
固形ガンではCAR-T療法が奏功しにくいことが大きな課題でしたが、BNT211では固形ガンに対しても薬効を示す可能性を示唆しています!
固形ガンに対するCAR-T療法では近年γδT細胞療法もホットなので以下の記事も見てみてください!
個人的な見解
R&D資料に引用される圧倒的な自社論文の数!
やはり自社発の特許数や論文投稿数が多いことから、R&D資料の中にも自社発の高インパクトジャーナルからの引用が非常に多い印象でした。
特にmRNAについてはReviewも複数書いており、世界的なプラットフォーマーとして圧倒的な地位を確立していることが分かります。
内資企業で、これほど基礎研究や技術開発に特化して論文を出している企業は少ないですよね。
個人的に思いつくのは、ベンチャーなら「そーせいグループ」、大手製薬なら「中外製薬」がかなり高インパクトな論文を投稿している印象です。
(特にそーせいはNatureの表紙を何度も飾っていますよね)
技術力という面では世界に遅れを取っていることを自覚出来ました。。。
もちろん、論文だけが大事ではないですよ!
でも、年間特許出願数等も海外と内資ではかなり違います。。。笑
感染症ワクチンへの展開を非常に期待!
今回はガン領域に着目して紹介してきましたが、資料の中では感染症に対するmRNA技術の展開も強く押し出されていました。
3大感染症である「HIV、マラリア、結核」を始め、「HSV2の予防/治療」、「多剤耐性菌 (AMR) 」、「インフルエンザ」など、世界的にニーズの高い感染症に対してmRNA技術を駆使して取り組んでいく戦略です。
mRNA創薬技術も発展しており、コロナで使用されたmodRNAより発展したmRNAワクチンが出ることで従来の課題を乗り越えることが期待出来ますね!
最後に
今回は、世界的なmRNA創薬技術を持つ「ビオンテック社の技術と現状、将来性」を紹介してきました。
正直、R&D資料が156ページもあってまだまだ紹介し切れてない部分も、言葉足らずな部分もありますが、概略は理解して頂けたと思います。
mRNA創薬技術は日進月歩で、今世界中の企業が参入している領域です。
関連特許が一部企業にかなり抑えられているとは聞きますが。。。
今後も一緒に勉強し、世界のトレンドに追いついて行きましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント