こんにちは、ティーダです。
皆さん、CRISPR技術を用いた治療応用が現在どこまで進んでいるか知ってますか?
全然専門じゃないから知らないな〜
まだまだ実臨床までは遠いんじゃないの?
比較的新しい技術ですし、なかなか情報も入ってきにくいですよね!
そこで今回は、独自のCRISPR技術を用いて、次世代遺伝子治療の最先端を走る「モダリス」の現状と将来性について徹底解説します。
同社は、自社独自のCRISPR技術「CRISR-GNDM®」を開発し、希少疾患に対して遺伝子治療を進めているバイオベンチャーです。
技術プラットフォーム型のベンチャーとしては、非常に注目されている企業の一つです。
(そーせいグループやペプチドリームと似たタイプですね)
モダリスの企業研究を通じて、最先端の遺伝子治療の現状について学んでいきましょう!
参考にしたのは、モダリスのIR資料とHPです。
モダリスの成り立ちと沿革
モダリスは、2016年に設立されました。 (当時の社名はエディジーン)
設立1年程度でアステラス製薬と共同研究を結び、3年目にはエーザイと共同研究契約を締結しています。
そして、2020年にマザーズへの上場を果たしました。
アメリカ・マサチューセッツ州近辺で研究所を設立・拡大して、本社は日本という形を取っています。
- 平均年収は1091.4万円 (平均年齢45.0歳、平均勤続年数1.9年)
従業員数が2021年時点で27人 (国内4人, 海外23人) なので、少数精鋭という感じですね。 - 時価総額は146億円 (2022年6月時点) で、創業約6年にして時価総額では他社に全くひけをとりません!
ビジネスモデル
モダリスでは2つのビジネスモデルを主軸に考えています。
- 自社モデルパイプライン:
自社でCRISPR-GNDM®技術による治療薬開発を行い、ある段階でライセンス契約によって、パートナーにその後の開発・販売を委託するモデル - 協業モデルパイプライン:
パートナーとCRISPR-GNDM®技術を使って治療薬開発を行い、一定の段階でパートナーにその後の開発・販売を委託するモデル
また、モダリスでは、自社モデルと協業モデルを組み合わせることで「ハイブリッドモデル」としてバイオベンチャー事業が持つ弱点を克服しようとしています。
確かに、自社モデル型の企業では長年開発品が出せず、赤字が続き経営が厳しい企業もあります。
一方で、他のサービスを提供したり、導入品を販売するなどで赤字期を短くして、基礎研究に時間をかけている企業も多いですよね。
自社モデルの深く長い赤字期はイメージできるけど、協業モデルで実際に収益が頭打ちになるか?
そーせいグループもペプチドリームも結果的にハイブリッドモデルになっている気がしますね!
狙いは希少疾患!
ヒト疾患はおよそ1万種類あると言われており、そのうち患者数が少ない希少疾患は約7000種類、患者数4億人と言われています。
しかし、医薬品開発はコストがかかるため、希少疾患ではコストがペイ出来ず、これまでに創製されてきたものは患者数の多い疾患が中心で、希少疾患の95%以上にはまだ治療法がありません。
しかし、モダリスが注力する遺伝子性遺伝子疾患 (ほとんどが希少疾患) は、一つの疾患に対して用いた方法がほぼそのまま他疾患に転用できるため、十分収益化が期待出来ます!
モダリスの強み:「切らないCRISPR」CRISPR-GNDM®技術
そもそも遺伝子治療とは?
遺伝子治療は以下の3つに大きく分類されます。
- 遺伝子自体または遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与
- 特定の塩基配列を標的として人の遺伝子を改変
- 遺伝子を改変した細胞を人の体内に投与
また、体内で治療を行う「In vivo」と、体外で加工した細胞を投与する「Ex vivo」とに大別されます。
In vivoではゾルゲンスマ (脊髄筋委縮症治療薬) などが、Ex vivoではキムリア (CAR-T細胞療法) などが承認されていますが、いずれもベクターによって遺伝子導入したもので、ゲノム編集自体を使った治療法はまだ承認されていません。
CRISPR-GNDM®技術の簡単解説
CRISPR-GNDM自体は、
- 切断活性の無いCas9 (dCas9)
- 遺伝子のスイッチを制御するタンパク質 (モジュレーター)
- 目的遺伝子に対するガイドRNA (gRNA)
を組み合わせたタンパク質で、AAVを用いて目的組織に送達するシステムです。
モジュレーターには、
- ターゲット遺伝子の転写ON:
VP64とRTA転写活性化部位からなる転写活性化タンパク質 (特許取得済) - ターゲット遺伝子の転写OFF:
Kruppel associated box (KAB) 等を含む転写不活性化タンパク質
が使用されているようです (特許情報を元に調査)
「タンパクの量が出すぎて病気になっている場合」にはスイッチをオフに、「タンパクが足りなくて起こっている病気の場合」にはスイッチをオンにすることで治療を行います。
CRISPR-GNDM®技術の強み 4選
CRISPR-GNDM®技術には複数の強みが存在します
- 成功確率の高い予測性:
一つの原因遺伝子しかない遺伝子疾患の場合、動物モデルでのターゲット遺伝子の正常化の結果が良好であれば、ヒトでのPoC獲得の確度も高い - 移転可能性:
ガイドRNAのみをターゲット遺伝子ごとにデザインするだけで、他のパーツは共通なので、効率よく複数の遺伝子治療薬を開発可能 - 安全性:
従来のCRISPR技術と違って、切断を含む遺伝子改変を行うことなく「遺伝子スイッチ」のオン・オフのみを制御するものであるため、オフターゲット効果が起こっても、重要な問題になりにくい - 高い知財性:
CRISPR技術の基本特許を持つ米エディタス・メディシンと東大の改変酵素特許の上に、独自の自社技術知財を確立
現状の開発品
こちらではモダリスの現状のパイプラインを示しています。
2022年6月現時点では、臨床試験に入っている開発品はまだありません。
以下では、注目開発品を何点か紹介いたします。
MDL-101 (CMD1A:先天性筋ジストロフィータイプ1A)
CMD1Aに対して、原因遺伝子の姉妹遺伝子である「LAMA1遺伝子」を筋肉細胞で発現させることで治療しようと考えています。
疾患モデルマウスでの評価の結果、
- LAMA–1遺伝⼦・タンパク質の発現上昇を確認
- ⽣化学的、機能的パラメーターの改善および⽣存延⻑を確認
- 2年間にわたるGNDM分⼦の発現持続を確認
- サルでの安全性試験を実施中
またそれ以外の進捗としては、
- GMP製造に向けたプロセス開発を進行中
- GNDMカセットの更なる最適化と製造に向けた最適化を実施中
2023年の下期にはFDAへの治験届 (IND) を計画しています。
MDL-206 (エンジェルマン症候群)
エンジェルマン症候群に対して、父系遺伝子側のUBE3A遺伝子を発現させることで治療しようと考えています。
既に疾患モデルマウスにおいてコンセプト実証を確⽴しているそうです。
MDL-206については、以前はアステラス製薬と共同研究を結んでいましたが、2021年8月に契約を終了しています。
現在は自社での開発を進行させ、並行してパートナリングを進めているところです
MDL-105 (DCM)
TTN遺伝子が欠損変異した拡張型心筋症に対して、TTN 遺伝子の発現促進によって正常なサルコメラ量を回復させ、治療しようと考えています。
TNN遺伝子自体が大きすぎるタンパク質であるために他のモダリティでは全く出来ていませんでした。
そこで、遺伝子治療による優位性を生かしてアプローチしたい考えています。
個人的な見解
成功している国内バイオベンチャーと同じ方針?
専門性が高い・具体的な技術プラットフォームで他社との協業を狙っているバイオベンチャーとして、そーせいグループやペプチドリームと似た成長戦略だと感じました。
こういった技術ベースのベンチャーは、海外には成功例も結構多いんでしょうけど、国内にはここまで明確な技術プラットフォームを持っている企業は少ない印象です。
将来的にはそーせいやペプチドリームのように海外メガファーマとの協業も出来るかも知れませんね!
非常に期待です!(そしたら株価はハネ上がるだろうな〜)
他のモダリティとの差別化も重要
遺伝子疾患に対するアプローチとしては、JCRファーマの「J-Brain Cargo技術」と似た雰囲気を感じましたね!
(あっちはタンパク質の供給で、こちらは遺伝子発現調製)
そうするとやはり、TTNみたいなタンパク質補充療法ではアプローチできない遺伝子治療独自のターゲットで優位性を出していくとより価値が高まると思いました。
最後に
今回は、次世代遺伝子治療ベンチャー「モダリス」について技術の詳細と現状と将来性などについて徹底解説していきました。
こちらの記事を通じて、遺伝子治療の最前線の一つを知って頂けたら幸いです!
世界的なプラットフォーマーとして成長していけるのか楽しみですね!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!!
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