こんにちは、ティーダです。
2023年2月24日に、小野薬品の2022年度R&D説明会が開催されました。
ぬるっと開催されてて、気付くのが遅くなってしまいました。。。
今回も注目ポイント等も含めて、ぎゅっと解説していきたいと思います。
前回の2021年度R&D説明会のような開発品群の紹介ではなく、基礎研究寄りの発表でした。
2021年度R&D説明会や過去決算もまとめているので、是非ご覧下さい!
小野薬品の研究開発戦略
現在小野薬品の最大の収入柱になっているオプジーボは2031年に特許満了が見込まれています。
さらに、メルク社やロシュ社からのロイヤルティも2025~2026年度で終了することが予想されています。
近い未来のオプジーボクリフを乗り越えるために、今から次の柱を探さなくてはなりません!
そこで、2022~2026年で生み出すキャッシュ等を活用して、次世代開発品の創製と導入をしていく計画です。
化合物オリエントという創薬方針を改め、バイオロジー理解から創薬するという方針にしたそう
創薬の基本戦略および最近の創薬提携
ここからは、小野薬品が取り組む具体的な創薬戦略について紹介します。
創薬戦略の概観は以下の通りです。
この中でも、特にオープンイノベーションに力を入れています!
独自の創薬シーズの獲得
ここでは、創薬シーズの探索に関する外部連携の例を出しています。
- 米国LabCentral・MBC BioLabsとスポンサーシップ契約
:スタートアップベンチャーへの投資 - 米国カリフォルニア大学創薬コンソーシアムへの参画
:UC 8大学との共同研究の機会を探る - ナレッジパレット社とデータ駆動型の新薬創出基盤の構築に関する共同研究
:データ駆動型創薬の基盤作り - 英国PrecisionLife社と中枢神経領域で新規標的同定に関する共同研究
:臨床データとバイオインフォを活用した中枢領域でのシーズ探し - 米国KSQ Therapeutics社からがん創薬プログラム取得
:CRISPR 技術を使用したがん領域での標的探索
大型化すると買えなくなるので、早期シーズを狙うのは最近トレンド。オプジーボを見出した成功体験もありますし。
最適な創薬モダリティの利用
ここでは、実際に創薬シーズからターゲットが見つかったときに、使用するモダリティについて、外部提携を紹介しています。
多重特異性抗体
多重特異性抗体はかなり力を入れている技術で、それぞれ特徴を持つ4社と提携しています。
ONO-4685:PD-1×CD3二重特異性抗体
特に、Merus社との提携においては、Ph1入りした開発品ONO-4685も出てきています。
ONO-4685は、CD3とPD-1に対する二重特異性抗体で、以下の二つのメカニズムを想定しています。
- 活性化T細胞をPD-1刺激により抑制する (シス作用):自己免疫疾患
- 活性化したT細胞を傷害するエンゲージャー的な作用 (トランス作用):T細胞リンパ腫
同じ抗体にシス/トランス作用を持たせるのは中途半端では?
シスとトランスそれぞれで高活性の抗体を作れば良いのに。。。
通常の抗体技術
通常抗体についても外部提携は進んでいます。
- Memo Therapeutics社とがん免疫
:機能性抗体の迅速スクリーニング - Neurimmune社と神経変性疾患
:高齢健常者の B 細胞クローンを利用した抗体ライブラリー - Monash大学と自己免疫・炎症性疾患
:高難度であるGPCRへの抗体創製
Memo Therapeutics社のやつは自社でも出来そうだけど。。。
その他
上記以外にも様々なモダリティを外部提携で活用しようとしています。
- Fate社とiPS由来他家CAR-Tの創薬提携&オプション契約
- Cue社と二重特異性融合タンパクCUE-401のオプション契約
:自己免疫疾患におけるTreg誘導 - ペプチドリーム社と特殊環状ペプチド創薬プラットフォームに関するライセンス契約
- Captor社と神経変性疾患のタンパク分解誘導剤の創薬提携
ONO-8250:HER2 指向性の iPS 由来 CAR-T
CAR-Tについては既に開発番号が付いているモノ (ONO-8250) があります。
この細胞では、7つの遺伝子編集 (TCR, CD38欠損など) を施したOff-the-ShelfのiPS由来CAR-T細胞で、実際固形がんに対してもマウスモデルで腫瘍退縮効果を示しています。
iPSの細胞療法とか生産とかどこまでFate社を頼れるんだろう?
デジタル/AI/ロボティクス
上記以外の点についても外部連携を進めています。
- Iktos社とのAI創薬技術を活用した低分子創薬
- キュライオ社とクライオ電顕による構造解析
- iPS細胞を用いたヒト疾患モデルの活用
- αシヌクレイン病変を画像化するPET薬剤
イトリズマブ(抗CD6抗体)について
ここでは、2022年末にEquillium社と契約したイトリズマブについて、紹介しています。
メカニズム
CD6はT細胞に発現し、抗原提示細胞に発現するALCAMと結合することで、抗原提示細胞によるT細胞の活性化を促進します。
自己免疫疾患では、その活性化されたT細胞が様々な臓器で過剰な免疫反応を起こしています。
イトリズマブは、CD6とALCAMの結合を阻害することで、T 細胞の「異常活性化」や「増殖分化
」を抑制して、自己免疫疾患を制御します。
臨床結果
現在、イトリズマブは以下の臨床試験を実施中です。
- 急性移植片対宿主病 (GvHD) :Ph3試験
- ループス腎炎:Ph1b試験
それぞれの疾患で既に試験結果は出てきているものもあります。
- 急性移植片対宿主病 (GvHD)
- ステロイド+イトリズマブの治療によって、一般的なステロイドのみの奏効率に比べて、上乗せが示唆された (Ph1b)
- Ph3の中間解析結果で、オプション権行使を判断する
- ループス腎炎
- 既存療法+イトリズマブの治療によって、中間解析だが、有効性を示唆するデータが得られている (Ph1b)
個人的には綺麗で、画期的なメカニズムだと思う!上手くいくといいね!
投資家質疑への返答
- イトリズマブについて、GvHD とループス腎炎の臨床結果から、オプション権行使を判断するタイミングは2024年頃を想定
- 化合物オリエントで以前は上手くいっていたが、今後はバイオロジー側へのコミットメントが創薬において重要な時代に入ってきていると考えている
- プラットフォームが育たないという考えもあるが、外から新たな技術を取り入れて、フィットするモノを社内で掘り下げることで、最終的に強みを育てていきたい
- イトリズマブについては、別会社が乾癬の適応をインドで取っているが、小野としては考えていない。潰瘍性大腸炎やクローン病などは競合が激しいが考えてはいる。
- 提携先は多数あるが、社内の体制は案件ごとで様々な形になっている。今の現場で十分対応が出来ている
個人的な見解
一発屋を生み出すだけでは?
こんなに基礎研究レベルで外部提携している内資企業ないんじゃないですか?
アステラスも多いけど結局買収しちゃってる印象
武田とかぐらいになると開発品買っちゃうし、小さいところはこんなにお金も人も出せないし。
でも、外部提携の対応に忙しすぎて、社内に技術が育たないのでは?という懸念もあります。
結局、一発屋が生まれるだけで、継続的な創薬力 (プラットフォーム) が培われないのでは?
実際、オプジーボ以降でがん領域の薬はほぼ無いわけで
小野薬品の中の人の意見を聞いてみたいですね!
技術だけ取り込んで頭でっかちになってないか?
いくら「最先端モダリティ」と「創薬ターゲット」を世界中から取り入れても、それらを繋いで開発品にするノウハウがないと上手くいかない!
「ターゲット抽出」と「最適なモダリティ選択」をつなぎ合わせて、創薬コンセプトにする作業がどこまで出来ているのでしょうか?
これだけある提携先を全て把握して、最適を選択するのって超難易度高いと思います。
ただでさえ、最先端技術なんて理解してる人は限られるし、それぞれで専門性が高くて、他技術は知らない人も多そう。
社内コミュニケーションとかどうやってやってるんですかね??
中外なら抗体!第一三共ならADC!塩野義なら低分子!とかで、ある程度モダリティは絞った方が現場は楽かな〜
実際、中外や第一三共は得意技術以外にも、じっくり別プラットフォームを自社で構築している。
それかアステラスみたいに会社ごと買うか!
徐々に立ち上げるなら理解出来るけど、急に「細胞療法」と「二重特異性抗体」と「PROTAC」と「改変サイトカイン」の中から選んで下さい!ってしんどそう笑
最後に
さて、今回は小野薬品の2022年度R&D説明会を解説しました。
オープンイノベーションが小野薬品の強みと言うだけあって、多数の外部提携の例が列挙されていました。
個人的には、現場の人たちがどこまで対応出来ているのか!?が気になるところです!
中の人いたら教えてください!
今回も読んで頂きありがとうございました!
コメント