こんにちは、ティーダです。
今回は、2019年5月に公開された「大塚製薬の第3次中期経営計画 (2019~2023年度) 」について徹底解説します!
既に本中計は残り1年半となっているため、現状の進捗確認と共に解説していこうと思います。
本解説を通じて、大塚HDの近年の動向と将来性について一緒に理解して行きましょう!
今回は特に医療関連事業についてフォーカスして解説していきます。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4578/ir_material/155006/00.pdf
2022年7月時点では順調に進んでいるようです!
第3次中期経営計画の概要
第3次中期経営計画の骨子
大塚HDとしては、この中計の期間を、
独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進する5年間
として位置づけています。
その上での骨子として以下の3つを上げています。
- 業績目標:年平均10%以上の事業利益成長
- 事業戦略:既存事業の価値最大化と新たな価値創造
- 財務方針:資本コストを意識した経営
特に医薬品事業については、グローバル4製品 (エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ) の成長と、次世代品の創製を目標に取り組んでいく計画です。
業績目標
財務的な目標としては以下を設定しています。
2014年度にエビリファイに支えられた最高売上収益1兆5718億円を今中計で乗り越える計画です。
一度はパテントクリフで、1兆1955億円まで落ち込みましたが、4つの自社創製品で再び最高益を叩き出す胸熱な展開ですね!
医療関連事業の戦略
ここからは、医薬事業の具体的な戦略を紹介します。
今中計では、以下の2点が大きな目標になります。
- 既存製品の価値最大化 (グローバル4製品)
- 第4次中期経営計画以降の成長を担う新製品の創製
グローバル4製品については、2018-2023年度の間に現在売上高2800億円を4800億円まで成長させる計画です。
以下では、大塚HDの注力3領域の戦略について解説していきます。
本中計では、 グローバル4製品の売上だけで売上目標はおおよそ達成出来る見込みですね
精神・神経領域
エビリファイの販売を通じて構築してきた、精神・神経疾患領域を深化させ、パイプラインや製品ラインを強化していきます。
具体的には、大きく2本の柱を立てています。
- 未充足な治療ニーズへの対応
- 医療の最適化
- 服薬アドヒアランス向上
- 治療アプリ
未充足な医療ニーズの一例として、レキサルティとAVP-786によるアルツハイマー病のアジテーション改善を上げていました。
2022年6月、レキサルティによるアジテーションのPh3試験が成功したため、近日中に承認されるでしょう!
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4578/tdnet/2148072/00.pdf
売上予想は年間300~400億円を見込んでいます。
大塚は精神・神経領域におけるグローバルプレイヤーとして、2013年には6000億円という世界トップクラスのシェアを誇っていました。
その実績を基盤に、“精神・神経領域の大塚”としての地位を確立していく戦略です。
がん領域戦略
がん領域では大鵬薬品やアステックス社の連携を高め、以下の3つの柱で研究開発をしていく計画です。
- 代謝拮抗剤
- 他剤・免疫療法との共存
- 分子標的薬
- 新モダリティ・新技術
- 細胞療法
- がんワクチン
- 腫瘍溶解性ウイルス (2022年現在は提携中止)
KRAS創薬 (SHP2阻害剤) や脳転移創薬というワードがスライドには含まれていますね。
循環器・腎領域の戦略
循環器・腎領域は、第2次中計期間中に、もう一つのコア領域として育成し、投資されてきた領域です。
循環器領域においては、抗血小板薬プレタールや利尿薬サムスカの創出に成功しています。
また、医療機器ビジネスも進めています。
2022年7月、ブレークスルーデバイス指定されている「超音波腎デナベーションシステム」のRADIANCE-II 試験にて、PoC獲得しました。
早期上市に向けて邁進中です!
腎領域においては、サムスカ/ジンアークのADPKDへの適応拡大による売上拡大や、ビステラ社買収に伴うパイプライン拡充を強化してきました。
今後も既存アセットと組み合わせて、強固なコア領域へと育成する計画です。
注力していたバダデュスタットの開発中止は腎領域にとってはかなりの痛手でした。。。
2022年第二四半期の途中経過
大塚HDでは、毎第二四半期に「中計の途中経過」と「今後の見通し」についてまとめてくれます。
そこで、先日公開された2022年7月時点での中計の途中経過を用いて、現時点の「ポジティブな話」と「ネガティブな話」に分けて紹介します。
ポジティブな話
グローバル4製品が第3次中計を2年前倒しで達成
当初、グローバル4製品 (エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ/ジンアーク、ロンサーフ) は2023年度までに4800億円を計画していました。
しかし、2021年度時点で2年前倒しで達成しています。
(2022年7月時点では、5810億円に目標再設定)
住友ファーマとの精神神経領域での大型提携
次の第4次中計を支える次世代製品群として、精神・神経領域に6品目の開発品を追加しました。
その内の4製品は住友ファーマとの提携で獲得しています。
特に、SEP-363856は住友ファーマの超重要開発品で、ブロックバスターを期待している開発品です。
成功したら大塚製薬にとってもかなり価値が高い製品だと思います。
ネガティブな話
バダデュスタットは開発中止
腎領域で、かなり注力していたバダデュスタットの開発は中止になりました。
それにともないアケビア社との契約終了による71億円の減損損失が出ています。
循環器・腎領域のパイプラインの拡充は必要になると思います。
AVP-786のリスクは残る
AVP-786は、アルツハイマー病に対するアジテーションを対象とした2本のPh3のうち1本で失敗しています。
2019年11月には開発を続ける方針を発表し、追加のPh3を始める予定ですが、減損リスクへの懸念は残ります。
追加のPh3である15-AVP-786-305は2023年度の第3Qで完了する予定です。
個人的な見解
グローバル4製品の次の製品は?
今中計で大事なのは、2024~2028年度の第4次中計を支える開発候補品の創製です。
現状で次世代品で注目なのは、「SEP-363856 (ulotaront)」 と「フチバチニブ」、「レキサルティのアジテーション適応」かと思っています。
開発品を見る限りでは、他社に比べて後期開発品・適応拡大が多いので、大きなクリフに見舞われるリスクは低いのかと思います。
1剤だけじゃなくて、グローバル4剤で売上を支えているのもリスク分散になっているようです!
なんで新卒にそんなに人気ないのかな?
ふと思ったのは、ここまで経営も順調で、将来的にも比較的安泰な企業なのに、新卒からはそこまで人気ではないのか?です。
これは完全に研究所の立地だけが問題だと思います。
やはり、首都圏の優秀な人材を徳島まで引き寄せるほどの魅力はまだないのでしょう。
そりゃ、中外製薬や第一三共に行く就活生が多いでしょうよ。都会ですもん。
もし、大塚製薬の研究所が東京・神奈川にあったら、今ならアステラスやエーザイよりも人気になるんじゃないでしょうか?
阪大の近くに新しく研究所出来るっぽいけど、絶対に東京に作った方がいいって!!
NC事業が経営基盤を底支えている
製薬ビジネスで一番怖いのはパテントクリフですよね。
しかし、一部の企業では持続的な製品群でパテントクリフによる打撃を緩和している企業もあります。
例えば、GSK社のワクチン事業などです。
大塚製薬もNC事業 (ポカリやソイジョイ、サプリ) が売上全体の1/4を占めることで、安定的な収益構造になり、持続的に研究開発を投資出来る環境にあると思います。
この事業体系は他社も目指していて、
- 小野薬品:機能性表示食品
- 塩野義:ワクチン事業
- アステラス:Rx事業
等でも見られます。
既に持続的な製品で全体の1/4を占めているのは、大塚HDにとっては非常に大きな強みですよね!
最後に
今回は、大塚HD (大塚製薬) の第3次中計とその現状について解説してきました。
今中計自体は非常に順調で、次期中計用の次世代品もある程度は揃っている印象です。
あとは後期開発品の治験の成功を祈るばかりですね!
今回は触れませんでしたが、NC事業も堅調で、大塚の基盤となる非常に大切な事業です。
今後も大塚HDの動向について一緒に見ていきましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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