こんにちは、ティーダです。
バイオベンチャー紹介企画の第5弾となる今回は、ガンゲノム創薬企業として「オンコセラピー・サイエンス社」について徹底解説します。
オンコセラピー社はガン遺伝子解析を起点に独自のガン治療薬を創製するベンチャーです。
正直、この会社については結構将来性が厳しいのではないかと感じました。。。。
そこで、今回はオンコセラピー社の独自のガン創薬技術、開発品の現状、将来性などを徹底解説します。
参考にしたのは、オンコセラピー社のHPやIR資料です。
オンコセラピー・サイエンスってどんな会社?
オンコセラピー・サイエンスは、元東京大学教授の中村祐輔教授のがん遺伝子に関わる成果を元に2001年に設立されました。
がん関連遺伝子を標的としたがん治療薬開発を目的とする大学発ベンチャーです。
中村祐輔教授は、遺伝的多型マーカーを開発し、これを応用した「個別化がん治療」の先駆けとなった研究に大きく貢献しており、毎年ノーベル賞候補として名前が挙がります!
そのため、オンコセラピー社の株価は毎年ノーベル賞の時期に大きく変動します (笑)
2003年にマザーズに上場を果たし、2つの連結子会社を持つ比較的大きなグループに成長を遂げています。(遺伝子解析の子会社、抗体医薬の商業化に向けた子会社)
- 平均年収は602万円 (平均年齢42.2歳、平均勤続年数8.5年) です。研究員の募集要項も博士卒以上を求めていることからも中途採用が比較的多そうですね。
- 時価総額は130億円です。 (2022年3月時点)
ビジネスモデル
- 医薬品の研究開発
医薬品開発に関する収益としては通常のバイオベンチャーと同じで以下が挙げられます。
- 契約一時金収入:
ライセンスアウトや共同研究開発の契約締結時に得られる収入 - マイルストン収入:
導出先企業での導出品の研究開発の進捗に応じて得られる収入 - ロイヤルティ収入:
導出先企業での導出品の売上高に応じて分配される収入
- 遺伝子解析サービス (連結子会社Cancer Precision Medicine社)
研究機関、医療機関、企業からガンに関して遺伝子解析を受託するサービスを行っています。
- 免疫反応解析 (レパトア解析、ELISPOT解析 etc…)
- リキッドバイオプシー
- ガン免疫治療研究開発
について受託し、解析を実施しています。
オンコセラピー社の強み:独⾃の抗がん剤標的の同定技術
オンコセラピー社の目的である「副作用の少ない新しい抗がん剤」を開発するためには最適な標的遺伝子を同定することが重要となります。
そこで、オンコセラピー社はガン特異的遺伝子を大規模な臨床検体から選抜し、それらを複数のモダリティで狙うという戦略を取っています。
また、オンコセラピー社では以下の3つの独自の技術で標的遺伝子を同定し、創薬に繋げています。
具体的なガン標的遺伝子の探索フローは以下になります。
LMM (Laser Microbeam Microdissection)
ガン組織にはガン細胞だけでなく、間質細胞や正常細胞などのガン細胞以外の細胞が多く混在しています。
そのため、ガン組織全体をそのまま試料として遺伝子発現解析を行っても、正確なガン細胞の遺伝子発現情報を得ることは困難です。
そこで、LMMを用いてガン組織からガン細胞だけをほぼ100%の純度で回収することで、精度高くガン細胞特異的な遺伝子発現の解析を可能にしています。
cDNAマイクロアレイ
感度と特異性が高く、ヒトのほぼ全遺伝子の遺伝子発現を一度に解析できる、独自cDNAマイクロアレイシステムを活用しています。
独自のプライマーで増幅したPCR産物を、特殊なスライドガラス上に高密度にスポットすることにより、遺伝子特異的で感度が高いシグナルを得ることが出来ます。
この「cDNAマイクロアレイ」と「LMM」を組み合わせることで、精度・信頼性共に非常に高い遺伝子発現解析を実現しました。
また、このcDNAマイクロアレイを用いて、正常臓器における遺伝子発現解析も解析を行っております。
標的遺伝子の同定 (siRNAによるノックダウン)
cDNAマイクロアレイとLMMを用いた遺伝子発現解析により、ガン細胞で高発現し、正常臓器での発現が極めて低い遺伝子群を同定しています。
しかし、これらの遺伝子群の中には、
- 結果的にガン細胞で発現が高くなっている遺伝子
- その遺伝子の高発現がガン化・増殖に必要とされる遺伝子
の2種類が考えられます。
そこで、遺伝子発現で選ばれた候補遺伝子について、真にガン細胞の増殖・生存に重要かどうかをRNA干渉法 (siRNAを用いたノックダウン) を用いて選抜します。
RNA干渉法を用いたノックダウン実験により、その遺伝子を特異的に阻害した時にガン細胞増殖が阻害される、あるいはガン細胞が死ぬような遺伝子を創薬標的として進めていきます。
開発品の進捗
現在のオンコセラピー社では以下の複数の開発品が治験に進んでいます。
特に、ガンワクチンについては塩野義と全面的に協力関係で、複数開発品を導出しています。
ガンペプチドワクチン
塩野義製薬に導出したS-588410について、食道がんを対象としたPh3試験を完了しました。
その結果、無再発生存期間(RFS)に関して、S-588410投与群とプラセボ投与群で、RFS延長について統計学的有意差は認められませんでした。
しかし、「食道がん発生部位別」or「リンパ節転移グレード別」の部分集団解析では、
- 一定の発生部位の患者集団で全生存期間(OS)の有意な延長を確認
- リンパ節転移が多い患者集団ではRFSやOSの改善傾向を確認
また、細胞傷害性Tリンパ球の誘導に関しては、S-588410投与により高い誘導率が確認され、重篤な副反応は認められませんでした。
本試験結果をより詳細に解析し、今後のがんペプチドワクチン開発方針を決定する予定です。
他のガンワクチンについても以下のように進んでいます。
- 頭頸部がんを対象としたS-488210は、欧州でPh1/2試験を実施中
- 固形がんを対象としたS-588210は、英国でPh1試験を実施中
- 胃がんを対象としたOTSGC-A24とオプジーボの併用Ph1試験をシンガポールと韓国で実施中
MELK阻害剤 (OTS167)
OTS167は、健常成人を対象とした経口投与によるバイオアベイラビリティ試験において、良好な経口吸収性が確認されています。
現在2つガンに対する臨床試験が動いています。
- トリプルネガティブ乳がんに対する Ph1試験をUSと日本で実施中。
OTS167の経口投与における安全性及び投与量の確認を主目的とし、副次的にトリプルネガティブ乳がんに対する有効性を確認する計画。 - 急性骨髄性白血病に対するPh1/2試験をUSにて実施中。患者登録完了。
OTS167の静脈内反復投与における安全性及び投与量の確認を主目的とし、副次的に各種白血病に対する有効性を確認する計画。
2022年3月時点で、MELK阻害剤を開発している競合他社はなく、オンコセラピー社の単独です。
もしこれが当たるのならばMELKに着目した抗がん剤としてファーストインクラスになり得る可能性がありますね!
抗FZD10抗体 (OTSA101)
フランスにおける滑膜肉腫患者を対象とした医師主導Ph1試験において、安全性、腫瘍集積を確認しました。
2020年1⽉より、滑膜⾁腫患者を対象としたPh1試験を日本で開始。
放射性同位元素を結合したOTSA101投与における安全性及び体内薬物動態の確認を主たる目的としています。
OTSA101‐90Yは、EMAとFDAによるオーファンドラッグ指定推奨勧告を取得しています!!
個人的な見解
創薬技術の独自性・新規性が弱い!!
オンコセラピー社の独自技術と言われる3つの技術 (LMM, cDNAマイクロアレイ, siRNAによる選抜) が、かなり古い技術ですよね〜
15年前なら新しかったかもしれないですけど、10年間なら普通の技術だし、今なら完全に時代遅れ。。。
標的として見つかっているタンパク質自体は他社がやっていないタンパク質なので一発逆転あるかも知れないですけど、技術プラットフォームや戦略的提携の面からすると成功している他ベンチャーより弱いですよね。。。
不思議なのは、NGSとか使った解析受託をしているのになぜ今もまだマイクロアレイをしてるんですかね??
何か特別な隠された技術があるのか??
導出品が少ないな〜
ガンワクチン以外の開発品について導出品が少ないように見えます。。
例えば、ラクオリア創薬なら開発品のうち、かなりの割合が導出されています。
特にガン領域は治験に非常にお金がかかることから早めに導出しないと開発費が研究費全体を圧迫する恐れがあります。
そのことを考えるとオンコセラピー社の開発品は他社から見て魅力が低いのでしょうか??
最後に
今回はガンゲノム創薬の代表企業としてオンコセラピー社を紹介しました。
個人的に現代のガンゲノム創薬技術に比べて、オンコセラピー社の技術は古典的な印象がありました。
バイオベンチャーと言えば大手が出来ない技術や強み (そーせいやペプチドリームなど) を持って、創薬研究を進めるイメージですが、オンコセラピー社の技術は今では普通のラボでも行われているような古典的な手法です。
また、創業から20年以上経つのに未だに黒字転換が出来ておらず、上市品や強力な技術提携もなく、資金も近年はかなり減少しています。
正直なかなか難しい経営ではないでしょうか?
一発当たれば大きいバイベンチャーなので、今後の開発品の治験結果に注目です!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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