【世界一のADC技術】第一三共 R&D Day 2021を徹底解説

第一三共のR&D Day 2021 製薬企業分析

先日2021年12月15日に第一三共がR&D Day 2021を開催しました。
今回はその説明会について詳しく解説し、投資家からの質問や、個人的な見解も踏まえて書いていきたいと思います!

このブログさえ読めば、説明会に行ったように詳しく第一三共R&D説明会を知れる内容になっていますので、是非読んでください!

中期経営計画についても以下の記事でまとめています!こちらも是非!

 



全体のイントロダクション

まず、第一三共は2021-2025年の中期経営計画の中で、明確に「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」というビジョンを掲げています。

その中で、ガン治療戦略の柱となるのは以下の3つです。

  • 3ADC (エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXd)
  • ADC技術における次の製品 (DS-7300:B7-H3-ADC、DS-6000:CDH6-ADC)
  • ポストDXd-ADCとなる多様なモダリティ (mRNAワクチン、腫瘍溶解ウイルス、CAR-T療法、AAV etc…)

上記の3つの柱を成長させることで、中期経営計画のビジョンを達成していこうと考えています。

DXd
第一三共独自の抗がん剤で、ADCにおいて抗体と複合体を組む化合物のこと。

R&D戦略

DXd-ADC

ここでは、第一三共の最も大きな強みであるADCについて開発品と今後の展開について説明しています。

最初に紹介されていたのは、World ADC Awards 〜最も有望な新薬候補〜 において、第一三共の3ADCが3年連続 (2019-2021) で受賞したことです。このことからも第一三共のADC技術が世界トップレベルであることが分かるかと思います。

エンハーツ (HER2-ADC) のビジョンと臨床試験結

まずは、エンハーツの開発戦略全体について説明しています。今後のビジョンとしては、

  1. HER2陽性乳がんにおいて、標準治療として確立する (ほぼ完了)
  2. HER2低発現乳がんについても適応を拡大する
  3. HER2を標的としうる他のガン種 (胃ガン、肺ガン、大腸ガン) についても適応を拡大する

計画になっています。

最新の治験結果として、初めての無作為化Ph3試験で非常に強力な効果を得られたことを示しています。 (無増悪生存率を72%上昇)
さらに、乳がんは非常に脳転移することが知られているガンですが、脳転移を起こした患者においても無増悪生存期間を延長できることがこの治験で示されました。

また、他ガン種への展開のための臨床試験も複数の試験を計画しています。
エンハーツはこれからも第一三共の非常に大きな収入源として成長することが期待出来ます。

Dato-DXd (TROP2-ADC) のビジョンと臨床試験結

TROP2を標的としたDato-DXdについての開発戦略としては以下の3点を挙げています。

  1. 非小細胞肺ガンに対する薬として参入し、再発・難治性ガンに対する単剤と免疫療法との併用剤として1次治療へと展開する
  2. 乳がんに対して適応を拡大する
  3. TROP2が発現する他ガン種に対して適応を拡大する

Dato-DXdについては、TNBC患者を対象としたPh1試験で抗腫瘍効果が認められました。さらに、Topo-Ⅰ阻害剤のADCで治らなかった患者に対しても効果があったことが明らかになっています。

現在は転移性乳がんや肺ガンについても臨床試験を開始しています。

HER3-ADCのビジョンと臨床試験結果

HER3-ADCはアストラゼネカ社との提携はなく、自社で開発を進めています。
以下にHER3-ADCの開発戦略を挙げています。

  1. EGFR変異非細胞肺ガンに対する単剤療法の適応
  2. HER3陽性乳がん患者に対する単剤もしくは併用療法で導入
  3. その他のHER3発現ガン種に対するさらなる適応拡大

現在、EGFR変異非細胞肺ガンに対してのPh1の用量試験を実施しているところになります。

その他のADCプロジェクト

DS-7300 (B7-H3を標的とするADC):
現在B7-H3を標的とした承認薬は存在しません。
そして、DS-7300は最新のPh1/2において、有効性および忍容性を示しました
今後、単剤療法や標準療法との併用による早期治療ラインを目指す予定です。(今後主要な癌学会にて公開予定)

DS-6000 (CDH6を標的とするADC):
CDH6自体は卵巣ガンと腎細胞ガンに発現が高いタンパク質です。
そして、2021年1月開始のPh1において、腎細胞ガンと卵巣ガンに対して早期の有効性シグナルを確認しています

更なる成長の柱 〜開発中製品〜

このパートでは、ADC以外の更なる成長の柱となる製品について紹介されています。
しかし、圧倒的にADCに比べてインパクトは小さいし、使用しているスライドの枚数もそれぞれ 1枚ずつで注力はしてなさそうでした

バレメトスタット (DS-3201:EZH1/2阻害剤)
血液ガンに対する治験がPh2で進行中

DS-7011 (抗TLR7抗体)
自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスに対するPh1a/b試験が来年初めから開始する予定

キザルチ二ブ (FLT3阻害剤)
FLT3陽性血液ガンに対する適応を取得予定。
既にPh3試験で、主要項目 (全生存期間) を達成しており、申請準備中

更なる成長の柱 〜研究中のプラットフォーム技術〜

第一三共はADCだけでなく新規モダリティの開発を進めることで、創薬標的や疾患に適応した最適なモダリティーを選択する戦略を計画しています。
その中で、現在取り組んでいるADC以外のモダリティーについて以下で3点紹介しています。
それぞれの技術について各1枚ずつのスライドだけで、全然注力している印象はないですね

LNP-mRNAワクチン
現在コロナワクチンに関して進めているmRNAワクチンプロジェクト。
コロナ以外にも新興・再興感染症に対するワクチン等の新規研究テーマが複数進行中。
(ガンとかもやっているのでしょうか?その場合はモデルナやバイオンテックとどう差別化するのでしょうか??)

次世代siRNAプラットフォーム (iMED-siRNA)
効果的なノックダウン効率、長時間の作用持続、肝臓以外の臓器への薬物送達を可能にする新規siRNA技術

遺伝子治療 (AAV)
社外バイオベンチャーとの協業を通じて、技術を確立し、まずは希少疾患をターゲットに開発を進める予定。2027年以降は非希少疾患も含めて拡張を進めていきたいと考えている。

研究開発の転換

第一三共も組織改編について少し言及されていました。

従来は世界レベルでの研究開発において、多段階を経る意思決定が非効率でした。

そこで今後は、統一されたグローバル組織へと組織改編を進めることで、よりグローバルでの競争力を強化することが可能と考えています。(具体的な話はしていない)

機関投資家のQ&A

全体的にエンハーツの治験に対しての言及が多かったですが、個人的にはそこまでR&D説明会の内容としては興味がないので、ピックアップは少ないです。。。

Q:エンハーツの開発戦略として、HER2低発現乳がんにおいてどう開発していく予定ですか?
A:現在実施中の治験で、HER2低発現乳がんにおいて、転移性2,3次治療で効果が見えたら、HER2低発現でもより早期の患者集団 (1次治療) を狙っていきたいと考えている。

Q:エンハーツのPh3試験で非活動性脳転移患者で効果が見えていたが、今後活動性の脳転移についても効果を示していく必要があるかと思いますか?
A:もちろん今後は活動性脳転移でも効果を示していく必要がある。実際他社は活動性脳転移について試験を行い適応を広げていく流れがある。

Q:外部企業を買収して、新たなモダリティーを拡充する予定はありますか?
A:マルチモダリティー戦略を進める上での技術的な買収は現状はこれ以上は必要ないと考えている。ターゲットに関しては外部との協業を通じて取得する可能性はある。

エンハーツの治験の話がほとんどです。これはR&D説明会なのか??普通の決算会議に見えるけど、、、

個人的な見解

第一三共のADCは世界トップクラスで、ドル箱になっている

標的さえよいものが見つけられれば、世界トップクラスのADC技術を活用して治療薬を創製できるプラットフォームは非常に強力だと思います!
ただ、標的の探索については中外製薬のように大々的にアカデミアとの協業はしていない印象でした。自社だけでどこまでいけるのでしょうか?

しかし、この調子でADCを進めていけば、しばらくは第一三共は安泰なんじゃないでしょうか?

また、アストラゼネカ社と開発で組めていることは非常に大きなメリットで、内資企業にはこれだけのガン治験を複数平行できる開発資金や開発力は普通はありません。(年間治験だけで1000億とか余裕でかかります)

ADC以外の開発品は結構少ない。。。

マルチモダリティーを掲げている割には他モダリティーの研究が全然進んでいる印象がない!

ADCで資金を貯めて、大型買収を起点に他のモダリティーにも参入していくような流れが一番理に適っている気がしますが、Q&Aでは否定していたので、自社で全てやっていくのでしょうか??

合理的で、迅速な判断が可能な組織構造を求める傾向はどこも同じ

アステラスでも中外でも同じことを言っていますが、従来の内資的ピラミッド型の組織構造では世界のベンチャーも含めた創薬スピードには敵わないことに気づき始めているようです。

今後他社でも抜本的な組織改革が進んでいくことが予想されます。
その際に最も不利益を被るのは受動的に仕事をしていた人々ではないかと思います。

最後に

終始ADC関連の話ばっかだったな〜という印象でした。
まあ押してる技術だし、強みだから仕方ないけど、マルチモダリティーを掲げている割には中外とかと比べて全然有言実行出来てない気がしますね。。。

もし私が第一三共の研究員だったらADC以外を担当しているときの肩身が狭そうです (笑)

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