【2022年版成功例】世界で最も有望なバイオベンチャー15選

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです。

皆さん、今最も世界で先進的な技術を保有している有望なバイオベンチャーってどこだと思いますか?

Nextモデルナ社やバイオンテック社はどんな領域から出てくるのでしょうか?

なかなか自分の専攻する領域でも世界最先端をフォローアップするのは難しいでしょう。

そこで、今回は、2022年9月12日に、Fierce biotechが選んだ「2022年の世界で最も有力なバイオベンチャー15選」を紹介します。

Fierce Biotechは毎年、世界中の数百のバイオベンチャー企業を評価し、その技術の強さ、パートナーシップ、市場での競争力など、さまざまな要素に基づいて15社を選抜しています。

いずれも今後10年15年後には皆さんの前に現れる可能性のある世界最先端の技術です。

この記事を読むことで、今後訪れる技術革新の波に乗る準備をしましょう!

今回の記事の原文は以下です。

Just a moment...



Agomab Therapeutics:クローン病の画期的治療薬

同社は、臓器不全や線維性疾患に対する治療薬に注力している企業です。

特に、クローン病における線維化を対象とした消化管制限型 ALK-5 阻害薬 (AGMB-129) の開発で注目されています。

AGMB-129は、他のクローン病治療薬と併用することで、線維化症状をもつ患者さんの病状を抑え、瘢痕化を止めるのに役立つと考えられています。

他にも、ALK-5阻害剤を他臓器の線維化治療に応用する計画です。

また、複数臓器の線維化治療薬候補としてMET受容体部分アゴニストも所有してます。

AGMB-129自体は、2021年にOrigo Biopharmaから買収した開発品になりますね

Amphista Therapeutics:次世代標的タンパク質分解技術

同社は、次世代の標的タンパク質分解技術を構築している企業です。

具体的には、「Eclipsys」と呼ばれる標的タンパク質分解プラットフォームを保有しています。

従来のタンパク分解技術では、タンパク質分解効率が臓器や組織間で異なることが課題でした。

そこで、同社では異なるメカニズムと高度に広く発現している分解タンパク質を利用することで、課題の解決を目指しています。

これによって、第1世代の標的蛋白質分解酵素誘導薬の限界を超え、有効性が高く、適用範囲が広い、治療薬の開発が可能になると期待しています。

最近話題のPROTACはやはりここにも入ってきました

Arbor Biotechnologies:膨大な遺伝子編集ツールボックス

同社は、多様な遺伝子編集ツールボックスで遺伝子治療法を開発する企業です。

ゲノムの90%以上をカバーする遺伝子編集のツールボックスを所有しています。

このように幅広いツールボックスを持つことで、疾患メカ解析から始めて、ツールボックスを調べ、適切な手段を選択出来ると考えています。

さらに、そのツールボックスを拡張するために、人工知能を使って、サイズ、標的とするゲノムの位置、編集効率や正確さなどで差別化できるような遺伝子編集技術を生み出しています。

現在は、肝臓と中枢神経系における遺伝子疾患のための治療薬開発に注力しています。

「複数のツールを所有して、ターゲットごとに最適解を選ぶ戦略」は中外や第一三共も目指している戦略です

AviadoBio:遺伝子治療の革新的な投与法

同社は、革新的な遺伝子治療で神経変性疾患を治療する企業です。

遺伝子治療による前頭側頭型認知症 (FTD) や筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などの衰弱性神経変性障害に焦点を当てています。

同社の特徴としては、ターゲットとするのが難しい臓器として知られる脳に作用するため、脳内に直接ウイルスを注入するという脳外科的なアプローチをとっています。

AVB-101と名付けられたFTDの前臨床1回投与型遺伝子治療は、今年4月に米国と欧州からオーファン指定を受けました。

遺伝子治療のDDS技術を手がける企業です

Generate Biomedicines:自然界にないタンパク質を薬に

同社は、機械学習を用いて、自然界にない新たなタンパク質を創り出し、治療薬にする企業です。

自然界に存在する全てのタンパク質の構造や配列と独自の実験データを用いて学習させた機械学習ツールを開発しています。

このツールによって、自由自在に人工タンパク質を作り出すことが可能になっています。

研究戦略としては、ターゲットを見つけ、そのターゲット内のヒットさせたい部分を決定し、その部位に特異的に結合して機能を発揮する「人工タンパク質」を作り出し、医薬品とします。

機械学習による人工タンパク質作製は非常に面白いですね!個人的には一番好きな企業です

Lexeo Therapeutics:アルツハイマー病の遺伝子治療薬

同社は、AAVを用いた遺伝子治療によって、遺伝子が関与する循環器・中枢神経疾患へアプローチする企業です。

現在注目されている開発品は、アルツハイマー病に対する単一投与による開発品LX1001です。

この治療法は、APOE4ホモ接合型アルツハイマー病患者の中枢神経系にAPOE2を導入し、変性疾患の進行を停止または遅らせるように設計されています。

現在、Ph1/2試験の段階にあり、低用量でT-tauとP-tauを減少させることを示しました。

他にも、「フリードライヒ運動失調症」や「セロイドリポフスチン症2型」に対するプログラムも所有しています。

フリードライヒ運動失調症はアステラス製薬も取り組んでますよね!



LifeMine Therapeutics:真菌から低分子医薬を発見する

同社は、真菌からヒトの標的に作用する低分子を探索するプラットフォームを所有する企業です。

  • 既存の真菌由来の薬剤がヒトと真菌に共通する標的に作用すること
  • 真菌ゲノムにはいまだ知られていない、ヒト標的に作用する低分子が数多くコードされていること

に注目した創薬です。

同社のAvatar-Rxプラットフォームは、アルゴリズムを用いて菌類ゲノムをふるいにかけ、膨大な真菌ゲノムから、標的に対して目的とする作用を及ぼす新たな低分子を同定することが可能です。

これまでアンドラッガブルと考えられていたヒト標的に作用する新規低分子薬を真菌類から同定、開発を進めることを期待しています。

機械学習と真菌っていう異色技術を組み合わせて、低分子を発展させるのは胸熱です。

ReCode Therapeutics:新たな遺伝子治療送達プラットフォーム

同社は、肝臓以外の臓器へ遺伝子治療のデリバリーを拡大する技術に取り組んでいる企業です。

現在の送達システムを用いてmRNA等を送達する場合、主に肝臓に取り込まれるため、他の臓器に影響を及ぼす多くの疾患を対象にできません。

そこで、同社の選択的臓器標的 (SORT) プラットフォームは、体内で臓器を仕分けする補助分子 (SORT分子) を加えることにより、mRNA、siRNAなどを特定の臓器や細胞に到達させることが可能です。

現在は、原発性線毛機能不全症 (PCD) 、嚢胞性線維症 (CF) に対するSORT LNPの吸入mRNA治療薬2品目が前臨床開発に入っています。

SORT LNPは2022年1月27日のNature誌記事「Seven Technologies to Watch in 2022」の1つに選ばれました。

mRNAワクチンなどに利用されているLNP送達システムを超える革新的技術と評価されています。

世界で最も注目されているバイオベンチャーじゃないのかな??直ぐに買収されそう笑

Scorpion Therapeutics:真のがん領域プレシジョンメディシン

同社は、次世代型のプレシジョンオンコロジー医薬の開発を目指す企業です。

同社のプラットフォームである「Precision Oncology 2.0」は、標的発見、メディシナルケミストリー、トランスレーショナルメディシンといった領域の最先端技術を統合して、革新的な低分子薬を創製する技術です。

  • 既知のがん遺伝子に対するファースト・イン・クラスの薬剤の設計
  • アンドラッガブルとされている標的に対する薬剤の開発
  • がん治療を変革する可能性のある新たな標的の発見とそれに対する薬剤の開発

という3つの戦略で開発を進めています。

現在は、STX-478という変異体選択的PI3Kα阻害剤と、STX-721というエクソン20挿入変異を有するEGFR発現NSCLC治療薬を所有しています。

具体的な凄さが分からん。。。技術なのか??ノウハウなのか?

Shape Therapeutics:RNA編集による遺伝子治療

同社は、RNA編集ツールとAAVベクター基盤技術を活用し、神経変性疾患や希少疾患に対する遺伝子治療の創出を目指す企業です。

同社は、RNAskipRNAfixRNAswapといった複数のRNA編集ツールを所有しています。

その中でもRNAfix」はRoche社への導出が決まっています。

RNAfixでは、目的に応じて設計されたRNAfix遺伝子をAAVベクターに組み込み標的細胞に送達させると、ADARが標的のRNA配列に誘導され塩基を変換することが可能です。

さらに、自社のカプシドディスカバリープラットフォーム「AAVid」では、機械学習アルゴリズムを組み込むことで、目的に応じて送達能を最適化されたAAVの作製が可能です。

RNA編集ツールからDDSシステム、製造プラットフォームまで一連を保有・一元管理しているようですね!

Storm Therapeutics:世界初のRNA修飾酵素阻害剤

同社は、がんやその他の疾患を対象としたRNA修飾酵素阻害剤の開発に取り組む企業です。

現在、150種類以上のRNAの化学修飾が確認されており、これらの化学修飾は、RNA修飾酵素ファミリーによって触媒されます。

近年、RNAの可逆的な化学修飾の発見と、RNAの活性を変化させ細胞内のプロセスを制御する役割により、がんやその他の疾患の発生におけるRNA修飾の重要性が明らかになり、創薬標的として注目を集めています。

現在は、リード候補品STC-15の臨床試験を開始するために、FDAの許可を待っているところです。

この候補薬は、遺伝子酵素であるMETTL3に対する阻害剤で、特定の固形癌や白血病を治療できる可能性があります。

低分子医薬のターゲットの幅を広げる戦略ですね!

Strand Therapeutics:次世代のmRNA医薬品

同社は、次世代のmRNA制御技術によって、ワクチンを超えたmRNA医薬の開発に取り組む企業です。

以下のような技術を用いて、従来のmRNA医薬の限界を超えようと取り組んでいます。

  • 独自のノウハウを用いて設計した自己増殖型のmRNA骨格
  • 細胞質中のmiRNAを検知して標的細胞特異的に翻訳がオン・オフされる仕組み
  • 既存の低分子化合物に反応するRNA結合蛋白質を利用して発現量を調節できる仕組み

現在は、STX-001というIL-12をコードした自己増殖型mRNA医薬がリード候補品で、2023年にPh1試験を開始予定です。

STX-001がチェックポイント阻害剤やCAR-T細胞療法への反応性を高めることを期待しています。

BioNTech社も似たようなことをやっているよな〜

Synthekine:毒性の低い人工サイトカイン

同社は、毒性懸念を排除した、人工サイトカインを薬にしようとする企業です。

選択的サイトカイン部分作動薬は、野生型サイトカインの受容体結合表面を改変することで、目的受容体への結合を増強すると同時に、毒性をもたらす受容体への結合を減弱させます。

その結果、特定の細胞でサイトカインシグナルを選択的に作動させ、有効性を最大化し、毒性を最小化することができる人工サイトカインを作製可能です。

リード候補品はSTK-012というIL-2部分作動薬で、固形癌の治療薬として開発中です。

がん治療用のIL-12や炎症性疾患治療用のIL-10など、他のサイトカインのパーシャルアゴニストも開発中です。

Nektar社のPEG化IL-2が失敗して、リストラが起こっている記憶が刻み込まれています笑

米Nektar社、PEG化IL-2薬の開発中止で70%の人員削減へ
 米Nektar Therapeutics社は2022年4月25日、研究開発プログラムを絞り込む戦略計画の刷新を行ったと発表した。米Bristol Myers Squibb社と共同開発していたIL-2プロドラッグであるBEMPEG/NKTR-214(bempegaldesleukin)が、開発中止となったことを受けたも...

Verge Genomics:Alと遺伝子解析だけで行う創薬

同社は、人工知能だけでALSなどの神経変性疾患に対する治療薬の創製を目指す企業です。

神経系疾患は、臨床試験の成功率が最も低い分野です。

その原因として、動物モデルやin vitorレベルのデータが、最終的に人間の脳で作用することになる薬の予測因子としては不十分だったことを挙げています。

そこで、同社は、患者から直接採取したデータを高度なAIと遺伝子分析によって解析するアルゴリズムを開発しました。

そのアルゴリズムでは、動物モデルや細胞レベルのデータを排除する代わりに、コンピュータが予測した結果を実際の患者組織でテストし、その結果をプログラムにフィードバックして、学習させています。

その結果、同社はわずか3年ほどで、ALSの新規ターゲットと作用機序を持つ臨床候補物質を生み出すことが出来たそうです。

AI創薬にまだ魅力は感じないけど、ヒトのデータだけで創薬出来るのは画期的!

Volastra Therapeutics:染色体不安定性を狙ったがん治療薬

同社は、染色体不安定性を利用したがん治療薬を開発している企業です。

染色体不安定性の中でも合成致死を利用した治療薬の開発が注目されています。

合成致死とは?

がんにおける遺伝子変異によって、ある遺伝子ががん細胞内で不活化していることがあります。(BRCA1/2等)

そして、不活性化した遺伝子とパートナーの関係で機能を補助する遺伝子が存在する場合があり、このパートナーの遺伝子を阻害すると細胞が致死する現象のことを「合成致死」と言います。

合成致死を利用するメリットとしては、正常細胞に対する影響が少なく、がん細胞を殺せる点にあります。

同社のプラットフォーム「CINtech」は、イメージング技術やモデル細胞株の解析などを組み合わせて、標的の同定から治療薬候補の発見、開発、さらには、効果が期待できる患者集団の同定に至るまでの広範な過程を支援するプラットフォームです。

現在、K1F18Aをターゲットにした候補品が存在します。

古き良きコンセプトを新規技術で開拓しています。

個人的な見解

遺伝子治療に注目が集まっている

全体的に遺伝子治療に関するベンチャーが多かったように感じました。

おそらく遺伝子治療にはまだ複数の技術的な課題があり、メガファーマもそれらの課題を解決出来る企業を求めているのでしょう!

また、mRNAに関しても新たな技術や送達システムなどで注目を集めていることが改めて認識できましたね。

抗体医薬関連が一つも無かったところがちょっと不思議でしたね〜
ベンチャーじゃなくて大手が既に大きく進出してるからなのか?

機械学習を組み合わせたプラットフォームが当たり前

今回選ばれた企業が所有するプラットフォームのほとんどで機械学習等のドライ解析関連の技術が複合されているようでした。

やはり、人間の頭で処理出来るデータだけでは創薬には追いつけない時代なんですね。。。

つまり、ウェット研究者もドライ研究技術を理解出来ないといけない現実が既に来ていることが分かりましたね。

是非以下の記事から、バイオインフォ・ドライ研究を始めるための一歩を踏み出してみましょう!

最後に

今回は、「2022年最新版の世界的に注目されているバイオベンチャー15選」を紹介してきました。

最新の注目企業の一覧を見ることで、世界の創薬トレンドを掴むきっかけになると幸いです。

また、自身の研究分野に生かせる技術があったら積極的に関連企業を調査してみてください!

私はほとんどが知らない企業で、非常に勉強になりました笑

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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バイオベンチャー分析
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