【潰れる?やばい?】田辺三菱製薬の中計21-25と将来性を徹底解説

製薬企業分析

こんにちは。ティーダです。

今回は2021年3月3日に公開された田辺三菱製薬の中期経営計画21-25について、最新情報と個人的な見解も含めて解説しています。

田辺三菱製薬は創業340年を超える田辺製薬を母体とした製薬企業です。

しかし、2007年に三菱系の製薬と合併し、2020年には三菱ケミカルホールディングスの完全子会社になりました。

2019~2021年度の3期連続で赤字が続いており、今後の成長戦略が注目されているところです。

そこで、約1年前に策定された田辺三菱の2021~2025年度の中期経営計画と最新情報を合わせながら徹底解説してきます!



中計16-20の振り返り

まずは2016~2020年度の間に設定していた中計の振り返りをします。

一言で言うと、
米国での販売基盤構築は実現したが、開発品の治験遅延によって経営目標値の未達

全体的に課題の根本としては、自社創製品で売りが立つ開発品が出せないという点だと思います。

国内売上高も30%以上が「ステラーラ」や「シンポニー」など販売委託製品が多いため自社品で売りが出ていません。

将来的に導入先企業が日本営業所を新設したら、販売権を返還しなくてはならないリスクもあります。
(ギリアドと鳥居薬品のようなことは起こりうると思います。)

これらの根本的な課題を解決することが次の中計に求められています。

中期経営計画の概要

中計の戦略骨子

「プレシジョンメディシン」と「アラウンドピルソリューション」の実現

プレシジョンメディシン:
有効性/安全性が高い患者層を特定し、最適な患者層へ治療満足度の高い薬剤を届ける

アラウンドピルソリューション:
治療だけでなく、予防・未病、重症化予防、予後にも目を向け、患者の困りごとに応える

「薬 + ソリューション」で、複数の疾患集団において予防から予後まで範囲を拡大する戦略です。
「この疾患なら田辺三菱製薬」と呼ばれる強みを築き上げることを目指します。

「プレシジョンメディシン」と「アラウンドピルソリューション」自体は、すでに他社でもよく言われている戦略です。

例えば、「塩野義」は「感染症」で、「エーザイ」は「アルツハイマー」で、同じことを提唱しています。

この戦略でどうやって田辺三菱らしさを出していくのかに注目ですね。

プレシジョンメディシン

プレシジョンメディシンの実施代表例として、Diesimelagon (MT-7117) の開発を挙げています。

Diesimelagon (MT-7117) は赤芽球性プロトポルフィリン症 (Ph3) と強皮症 (Ph2) を対象に治験が行われている薬です。

赤芽球性プロトポルフィリン症:
プロトポルフィリンIX濃度やメラニン濃度等の層別解析から、患者ごとに適切な用量選択を実現

全身性強皮症:
バイオマーカーを使ってレスポンスが高い層を見出す検討をPh2試験で計画

アラウンドピルソリューション

アラウンドピルソリューションについては、ALS治療薬のラジカヴァMT-1186 (ラジカヴァ経口剤) を例に挙げています。

ALS患者の「早期診断」「服薬支援」のソリューションを開発し、治療薬を中心に予防、診断から重症化予防、予後までをサポートすることで、患者と家族のQOL向上に貢献したいと考えています。

さらに、これらの取り組みで収集した医療データを解析し、さらなるビジネスの創製を目指します。



中計21-25での研究方針

研究開発方針の骨子は以下です。

研究開発方針の骨子
  • 中枢神経・免疫炎症領域を中心にプレシジョンメディシンの実現
  • ワクチン領域に注力し、予防医療に貢献

2022年5月の主な開発パイプラインは以下の様になっています。(全ては載せていません)

田辺三菱製薬HPを参考に作成

現在のパイプラインの中、以下の4品目を主体として、米国を中心に大きな成長を考えています。

重点4品目
  • MT-1186 (ラジカヴァ経口薬) :ALS
  • ND0612:パーキンソン病
  • MT-7117:赤芽球性プロトポルフィリン症
  • MT-2766:新型コロナウイルスワクチン

中枢神経領域方針

ALSを入り口として、原因遺伝子や病態生理が共通する神経難病に対してアプローチする戦略です。

具体的には、ミトコンドリア病、ハンチントン病、多系統萎縮症などが例示されています。

2021年4月から、中枢神経疾患領域の創薬標的探索力を強化するため、米国に研究拠点を新設しています。(ニューロディスカバリーラボ)

医薬品の研究開発を行う企業など約40社が入居するケンブリッジの施設内に開設されています。

この新施設と連動して、創薬標的の検証と特定を進める計画です。

免疫炎症領域の方針

有効な治療薬のまだない自己免疫疾患を中心に、患者を層別化したフェノタイプ創薬を実施予定です。
(全身性強皮症、全身性エリテマトーデス etc…)

慶応大学リサーチパークとの共同研究を通じて、臨床検体や患者情報をバイオインフォマティクス技術で解析し、創薬研究に繋げていく計画です。

ワクチン領域の方針

ワクチン領域については2つの事業があります。

  1. メディカゴ社による植物由来の VLP ワクチンの開発
  2. 国内感染症予防への貢献をめざした BIKENグループとの協業

VLPワクチンについては、現在新型コロナで開発を進めているワクチンを皮切りに、インフルエンザやロタウイルスなどに展開いく予定です。

中計21-25での事業展開方針

事業展開方針の骨子は以下です。

事業展開方針の骨子
  • 米欧は、今後の成長ドライバーとして、後期開発品を着実に上市に結び付け、事業規模を拡大
  • 日本は、利益の源泉を維持すべく、今ある基盤の深掘と新たな基盤への拡大
  • 中亜は、日米の上市製品を展開し、グローバル自社品の価値最大化をめざす

以下でより具体的に解説します。

米欧の事業展開方針:
ラジカヴァ/MT-1186、MT-7117の価値最大化を通じて、基盤強化と顧客開拓

国内の事業展開方針:
重点品と上市予定6品目を中心に現業を深掘りし、アラウンドピルソリューションや健康医療データ収集を利用した新たな基盤を構築する

中国・アジアの事業展開方針:
米日の上市品を速やかに浸透させ、価値を最大化し、事業基盤を強化する

個人的な見解

自社品の枯渇が最大の衰退原因

開発パイプラインを見ていると、注目開発品の多くが導入品や買収先の開発品です。

自社創薬力が低下しているように感じられます。

実際に中計16-25の振り返りでも指摘されているポイントです。

以前は、SGLT2阻害剤など素晴らしい薬を創ってきた田辺三菱がなぜ自社品を出せなくなってしまったのでしょうか?

やはり、基盤技術・プラットフォームを持たない企業は継続的に自社品を創製するのは難しい時代であることを感じました。

今中計資料にも記載がありしたが、親会社である三菱ケミカルとのシナジーを足がかりに打開することを期待します。

方針に独自性がない

今回提唱された「プレシジョンメディシン」と「アラウンドピルソリューション」は他社も既に取り組んでいる戦略ですし、世界では当たり前になりつつあります。

田辺三菱独自の戦略やアイデアがないことが少し残念でした。

例えば、親会社とのシナジーを独自の切り口には出来ないのでしょうか?

蛇足ですが、全体的に資料の作り込みが足りていない印象です。

枠線から文字がはみ出していたり、文字と括弧が被ったりしています。

あまり他社のIR資料では見られないミスが散見していますね。。。。

最後に

今回は田辺三菱の中計21-25を徹底解説してきました。

研究方針や事業方針について簡単に理解出来たかと思います。

「自社創薬力の低下」に対する打ち手をいくつか講じているようですが、それらが見える化するのはまだ少し先でしょう。

正直、明日は我が身だと改めて身が引き締まりました。

2022年度には黒字化を予想している田辺三菱製薬が今後どのように進んでいくのか今後の動きに注目です。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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