こんにちは、ティーダです。
今回は、先日開催された第一三共のR&D Day 2022を個人的な見解も含めて、徹底解説します。
さて皆さん、最近第一三共のADCsの臨床試験って多すぎて何がどう進んでいるの分かりにくくないですか?

一つの開発品で試験を何本もやってて、よく分からん!

プレスリリースも多すぎて、どの開発品のどのがん種への試験なのかも分からない。。。

これは会社としては素晴らしいことですが、外部の人からは少し困りますよね!
(多分完全に把握出来ている社員も少ないでしょう笑)
今回のR&D説明会資料もデータもスライドも多くて非常に分かりにくいです笑
そこで、本記事を通じて、私が皆さんの頭の中を整理したいと思います。
一緒に第一三共のR&Dの現状について整理していきましょう!
https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/materials/2022/RD%20Day%202022_final_J.pdf
また、第一三共に関する記事は当ブログには複数あるので、是非読んで理解を深めてください!
全体概観:「3 and Alpha」 戦略
まずは、現在の第一三共の主なパイプラインを整理します。
- 3ADCs (超重要製品)
- エンハーツ (anti-HER2):乳がん、胃がん、非小細胞肺がん、大腸がんなど
- Dato-Dxd (anti-TROP2):非小細胞肺がん、乳がんなど
- HER3-DXd (anti-HER3):非小細胞肺がん、乳がん
- Rising Stars (次世代のADCs)
- DS-7300 (anti-B7-H3):食道扁平上皮がん、前立腺がん、小細胞肺がんなど
- DS-6000 (anti-CDH):腎臓がん、卵巣がん
- ポストADCs (将来的な貢献期待)
- DS-5670 (COVID-19 mRNAワクチン)
- DS-9606 (第二世代ADC)
- 希少疾患関連製品 etc…
特に3ADCsは乳がんや肺がんに発現する抗原が多いことから、乳がんや肺がん患者において臨床試験が実施されています。
以下からはがん種に分けて各種開発品の進捗を説明していきます。
乳がんにおける進捗
まず、乳がん全体で実施されている主な臨床試験は以下の通りです。

エンハーツ®
〇 DESTINY-Breast02/03 (HER2+)
この試験がエンハーツ躍進の第一歩で、HER2発現乳がんの標準治療として強固な位置づけを獲得しました。
従来のADC製品 (T-DM1) よりも全体的に強い薬効を証明し、今説明会で良好な追加アップデートもありました。
〇 DESTINY-Breast04 (HER2-low)
この試験が今年世界を驚かせた試験結果です!
従来は存在しなかったHER2低発現という乳がん患者に対して適応を持つ世界初の薬剤として承認されました。

今年のASCO 2022でも発表後スタンディングオベーションが起こった非常に素晴らしい試験結果です。
乳がん領域でのエンハーツは以下の試験を実施しています。
- DESTINY-05:
HER2+乳がんのアジュバント療法 - DESTINY-06:
HER2低発現乳がん (化学療法未治療) - DESTINY-09:
HER2+乳がんの1次治療 - DESTINY-11:
HER2+乳がんのネオアジュバント療法
今後は、1次治療やアジュバント療法などに適応を拡大させていく計画です。

HER2の発現量を診断するキットの開発が難航しているそうですね。
DESTINY-CRC02という大腸がんに対するPh2試験も今年度中に結果が出るそうです!
Dato-DXd
〇 TROPION-PanTumor01 HR+/HER2- or TNBC
こちらは幅広いがん種を組み込んだPh1試験です。
どちらの乳がんにおいても有望な結果が得られており、現在実施中のPh3試験 (TROPION-Breast01/02) の良い結果が期待されます。
〇 BEGONIA
PD-L1抗体との併用Ph2試験になります。
この試験では、TNBC患者において、Dato-DXdとPD-L1抗体の併用は高い奏効率を示しました。
乳がん領域でのDato-DXdは以下の試験を実施しています。
- TROPION-Breast01:
HR陽性乳がんの2次治療 ←重要!! - TROPION-Breast02:
TNBCの1次治療 ←重要!! - TROPION-Breast03:
残存病変を有するTNBCに対する単剤もしくはPD-L1抗体併用
まずは、TROPION-Breast01/02を成功させ、上市することが最も大切な一手になります。

HER3-DXdについても、乳がんでの試験が今後実施されるでしょう!
肺がんにおける進捗
肺がん全体で実施されている主な臨床試験は以下の通りです。

エンハーツ®
〇 DESTINY-Lung01/02
この試験で良好な結果が得られたため、HER2変異NSCLC2次治療以降を対象に承認を取得しました。
肺がん領域でのエンハーツは以下の試験を実施しています。
- DESTINY-Lung04:
HER2遺伝子変異NSCLCの1次治療 - DESTINY-Lung05:
中国でHER2遺伝子変異NSCLCの2次治療
こちらも順調に適応を早期治療に移動させている様子ですね!
Dato-DXd
〇 TROPION-Lung02
転移性NSCLCを対象としたDato-DXd + PD-L1抗体、もしくはDato-DXd + PD-L1抗体 + プラチナ製剤のPh1試験で、良好な結果が得られました。
この結果を受けて、免疫療法との併用が期待され、Ph3試験を計画しています。
肺がん領域でのDato-DXdは以下の試験を実施中です。
- TROPION-Lung01:
NSCLCの2次/3次治療を対象としたPh3 ←重要!! - TROPION-Lung07/08:
非アクショナブル遺伝子変異のNSCLCに対するPD-L1抗体との併用
まずは、TROPION-Lung01を成功させることで上市を目指しています。

2023年1~3月に出る予定のTROPION-Lung01の結果がめっちゃ大事!
Dato-DXdで一番大事な試験です!!
HER3-DXd
進行性EGFR変異NSCLCのPh1試験にて、良い結果が得られているため、現在はピボタル試験を実施しています。
肺がん領域でのHER3-DXdは以下の試験を実施中です。
- HERTHENA-Lung01:
EGFR変異NSCLCの3次治療 (Ph2) ←重要!! - HERTHENA-Lung02:
EGFR変異NSCLCの2次治療 (Ph3)
まずは、HERTHENA-Lung01を成功させることで、承認申請を目指しています。

2023年1~3月に出る予定のHERTHENA-Lung01の結果によっては、HER3-DXdもアストラゼネカと提携出来るかもしれないですね!
Rising Stars
ここでは、次世代ADCであるRising Starsの2製品について紹介します。
DS-7300 (anti-B7-H3)
多様ながん種において早期の有効性を示すPh1/2結果が得られています。
その試験結果を受けて、小細胞肺がん (SCLC) におけるPh2試験を開始しています。
DS-6000 (anti-CDH6)
卵巣がん、腎細胞がんを対象としたPh1試験にて、有効性および管理可能な安全性データが得られています。

ますます開発が加速していき、開発費が凄いことになりそうですね笑
R&Dの今後の戦略
ここでは第一三共のADC製品に関する今後の展開を紹介しています。
- より早期の治療フェーズと他がん種への適応拡大
- 併用療法および逐次療法を通じて、有用性を最大化
上記で紹介した現状の戦略を見てもらっても分かるとおり、大きな戦略としては適応拡大による価値最大化ですね。
がんは広がりがある疾患なので、PD-1抗体等と同様に益々売上を伸ばしていくことが期待されます。
また、特定のがん種で圧倒的な地位を獲得することで、そのがん種に対して次々と新規開発品を送り込んでいくことも計画しているようですね。

がん種単位で地位を確立していきそうですね
DXd-ADCの可能性を拡げる併用療法
併用戦略を軸とした価値最大化にも力を入れています。
特に、ADCを軸として、新規メカニズムの自社製品を組み合わせることで抱き合わせで臨床試験を進めることを計画しているようですね。

また、ADCに対する耐性のメカニズムについて研究史、新たな併用薬の開発・連続投与療法の裏付けを実施する計画です。

小野薬品がPD-1抗体で出来なかった戦略を第一三共なら出来るのか!?非常に注目です。
機関投資家の質問
DS-7300は今後どう展開するのか?
Ph1/2試験では、たまたまSCLC患者が多かったため、良好なシグナルが見えた。
今後時間が経つにつれて、投与されたがん種が増えていき、適応がん種に関する更なるデータが出て来ると考えられる。
その場合は他がん種にも試験を広げていきたい。
なぜHER2低発現乳がんでエザルミア (EZH1/2阻害) 併用試験を実施するのか?
非臨床モデルで腫瘍退縮結果が認められたため。
メカニズムとしては、エザルミアによるエピジェネティックな作用によりHER2発現を上昇させる可能性がある。
まずは、用量漸増試験から始める予定。

HER2発現上昇作用とかあるのか!?それなら最高の併用パートナーじゃん!
Ph1センターオブエクセレンスについて
Ph1を適切に実施出来るセンターを創出して、Ph1試験を効率よく実施出来るように整えたいと考えている。
Ph1はPh2/3と異なり、実施するのが比較的大変で、最適な施設の選抜が重要になる。
特定のセンターを作ることで、第一三共の今後の治験を有利に進める計画。
個人的な見解
ADCsの安心感と更なる飛躍に向けた一手
全体的に臨床試験結果への信頼度・期待度が半端じゃないですね!
「まあ、基本的に成功するやろう」という安心感を投資家に与えていると思います。
また、最後の方で話していたPh1センターオブエクセレンスという取り組みは非常に素晴らしいと思います。
これは第一三共が複数のがん領域開発品を自社から継続して出していることの証明だと思いますね!

他の内資企業でPh1用の治験センターを創出しようとしているところってないんじゃない??
今年度中に結果が出る重要試験が2つ!!
TROPION-Lung01、HERTHENA-Lung01はそれぞれが初の承認申請に関わる試験です。
どちらも今年度中にトップラインデータが出てきます。
この試験を皮切りにエンハーツのように複数のがん種と早期フェーズへの試験が始まります。
第一三共の盤石の布陣が出そろいますね!!
第二世代ADCもPh1が始まっているそうなので、楽しみです。
最後に
今回は、第一三共のR&D Day 2022を解説してきました。
乳がんと肺がんという切り口のみでADC製品を切り取る形で紹介しています。
他のがん種についても既に承認を取っている製品もあり、複雑ではありますが、今回の記事で一旦整理が出来ればと思います。
とりあえず直近のDESTINY-CRC02、HERTHENA-Lung01、TROPION-Lung01のデータが出てくるのを楽しみにしましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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