【世界の最前線を見ろ!】バイスペシフィック抗体の世界最先端のトレンドを徹底解説

バイオベンチャー分析

こんにちは、ティーダです

今回は、前回に引き続き、バイスペシフィック抗体の徹底解説シリーズの第二弾です。

前回は、「バイスペシフィック抗体の歴史基本的な5つのメカニズム、上市品メカニズム等」を紹介してきました。

そして、第二弾である本記事では、「バイスペシフィック抗体に関する世界最先端の技術トレンド」についてバイオベンチャーの技術を元に紹介していきます。

バイスペシフィック抗体は、世界中の製薬企業が注目しており、日進月歩で技術革新が起こっている技術です。

今回紹介する技術達は10年後には当たり前となり、皆さんの周りに出現するでしょう。

今のうちに学んで自分の研究や投資に是非生かしてください!



今回紹介する技術一覧

今回は、個人的に興味深いユニークなバイスペシフィック抗体の技術について紹介します。

逆に成熟している技術については紹介しないので、有名どころは自分で調べて頂けると幸いです。

以下の論文が参考になります。
https://www.nature.com/articles/s41587-021-00850-6

以下には、今回紹介する技術を一覧で紹介しておきます!

各プラットフォームごとにユニークな特徴があるので、そこに絞って簡潔に紹介していきます!

F-star:Fcab

同社のプラットフォームは、抗原結合活性を有するFcフラグメント (Fcab) です。

「通常抗体のFc領域」にFcabと呼ばれる抗原認識ドメインを新たに導入します。

Fcabの特長
  • Fc部位自体の機能性に影響を与えることはない
  • Fcabはモノクロ抗体と同等の抗原結合性と免疫エフェクター機能を有する
  • 優れたタンパク質安定性、製造の簡便性を持つ

さらに、最も大きな利点としては、既存抗体のFc領域を、Fcabに置き換えるだけで、全長のバイスペシフィック抗体を簡単に作製可能なことです。

この簡便性により、スクリーニング用の新規バイスペシフィック抗体の大規模ライブラリーを迅速に構築することが可能です。

2022年6月、中国Sino Biopharm社によってF-star社の買収が発表されています。

買収額は、1億6100万ドルになるそうです。

Y-Biologics:ALiCE

同社は、Fcabと似たプラットフォーム (ALiCE) を所有する韓国のベンチャーです。

こちらのプラットフォームでは、「抗CD3抗体のFv部分」「ガン抗原抗体のFc部分」に持ってくることで、バイスペシフィック抗体にすることを可能にしています。

Affimed:ICE

同社のプラットフォームは、「CD16A」と「ガン抗原」を橋渡しするバイスペシフィック抗体です。

CD16Aとは?

NK細胞とマクロファージに主に発現しており、シグナルが入ることで細胞傷害活性を引き起こす
ADCC活性に重要なタンパク質

同社のICE技術では、2本の手でCD16Aとガン抗原を橋渡しすることで主にNK細胞にシグナルを伝えています!

ICEの特長
  • 血清中IgGと競合せずにCD16Aに強く結合可能
  • V/Fの遺伝子多型に左右されない
    • 一般的にCD16AのV/F型やF/F型の患者ではADCC活性が弱い
  • CD16B (好中球発現) には結合しない高い選択性

Innate Pharm:ANKET

さらに、Innate Pharm社のANKET技術では、NK細胞を活性化するために、NKp46に対する結合部位を追加しバイスペシフィック抗体をデザインしています!

これによって、腫瘍内の数少ないNK細胞を強く活性化して、ガン細胞に対する傷害活性を引き出すことが可能です!

T細胞だけじゃなくて、自然免疫系細胞と橋渡しする技術を一つは紹介しておきたかった!

Harpoon Therapeutics:TriTAC

同社の技術は、非常に小さく、血中半減期を長くしたバイスペシフィック抗体です。

上市品のBlincyto® (Blinatumomab) はscFvのバイスペシフィック抗体であるため、血中半減期が短いことが弱点です。

そこで、抗アルブミン抗体を連結させることで血中半減期を延ばすデザインを採用しています。

TriTACの特長
  • 血中半減期が長い
  • サイズが小さいため、固形ガンの中まで浸透し、T細胞の活性化が可能
    • 通常のバイスペシフィック抗体の1/3程度らしい
  • 製造が比較的容易

IGM Biosciences:IgM platform

同社の技術は、IgM抗体をベースとしたバイスペシフィック抗体です。

IgM抗体とは?

天然IgM抗体は、感染の初期に分泌され、その5量体構造には10個の抗原結合部位があるため、高い結合能を持っているが、個々の結合部位では結合は低い

従来のバイスペシフィック抗体では、T細胞の強烈な活性化によってサイトカイン放出症候群が起こることが課題としてありました。
(最初に承認されたCatumaxomabもこの副作用で使用が制限されていました)

その課題を解決しうるのが同社のプラットフォームです!

同社は、「高親和性のIgG様抗原結合ドメインを含むIgM抗体」を設計しました。

開発品IGM-2323は、CD20結合ドメイン10個に対してCD3結合ドメインを1個だけ含む「非対称型バイスペシフィック」です。

IGM-2323は、ガン細胞に結合すると、その大きなサイズと平坦な方向性により、T細胞受容体の集積が最小限に抑えられ、T細胞の過剰な活性化を回避できます!

これによって、「適度なT細胞活性化」によって、ガン細胞を傷害することが可能になります!



Revitope Oncology :PrecisionGATE

同社の技術は、「同じ腫瘍細胞上に発現する2つの異なる抗原」と、「CD3」が結合したときのみ活性化するバイスペシフィック抗体です!

同社は、CD3結合ドメインを2つの不活性な部分に分割し、それぞれを腫瘍抗原結合ドメインの1つに結合させることで、条件付きT細胞活性化アプローチを可能にしています。

さらに、「腫瘍内プロテアーゼによるマスクドメイン切断」により、腫瘍内だけで2つのCD3ドメインが結合し、活性化するというメカニズムも採用しています。

これによって、バイスペシフィック抗体のターゲット細胞に対する特異性をより高めることが可能になります!

何でも詰め込みだしたら製造するのが大変そうですね。。。

最後に

今回は、「次世代バイスペシフィック抗体で研究されている最先端技術」について紹介してきました。

「抗体技術って世界中で色々考えられてるんだな〜」という感想です笑

そして、実は今回紹介した技術は「ある内資企業」は単独で大半を所有しています。

それが中外製薬です!

いや〜バイスペシフィック抗体技術を色々勉強していたのに、「中外がほぼ全て持ってる」っていう謎の気づきが生まれましたね。

前回の記事でも書きましたが、現在バイスペシフィック抗体が続々と承認され始めています。

今後必ず来る「バイスペシフィック抗体の波」に乗り遅れないように今後もウォッチしていきましょう!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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