【メイドインジャパンの最高峰】第一三共のASCO 2022を徹底解説

製薬企業分析

こんにちは、ティーダです。

今回は、日本を代表するガン領域のリーダー企業に成長しつつある第一三共の「ASCO2022での発表内容」について徹底解説していきます!

ASCOは、米国臨床腫瘍学会の略称で、世界中のガン臨床データが発表される世界最大規模の学会です

2022年6月のASCO2022で、第一三共は主にADC関連製品に関して最新の治験データを公開しました。

そこで、第一三共のASCO2022での発表内容を通じて、第一三共の開発品最新状況と戦略、将来性について徹底解説していきます!

参考にした資料は以下の第一三共のASCO関連資料です。

https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/materials/2022/ASCO%20Highlights%202022_JP.pdf

https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/materials/2022/ASCO_ESMO%20BC%20presentation%20materials.pdf

他にも当ブログでは第一三共についてまとめた記事があるので、そちらも参考にして下さい!



ASCO2022での発表概要

以下に、第一三共のASCO2022での発表概要を載せています。

  • ENHERTU:9演題
  • Dato-DXd:1演題
  • HER3-DXd:5演題
  • その他:3演題

内資企業でこれだけ多くの臨床データをASCOで発表する企業はないでしょう!

ガン領域の治験費用は非常に高いので、内資の資金力では多数の治験を同時に実施出来ません。

第一三共はアストラゼネカとのコラボの元で、これだけの治験を実施出来ています。

第一三共がどれだけガン領域で世界的にプレゼンスを獲得しているのかがよく分かります。

ちなみに、Seagen社のASCO2022での、ADC関連の発表は21演題でした。
上市品が4製品もあると発表内容も増えますよね!

今回の発表内容の中で、個人的に選んだ重要なデータのみピックアップして紹介します

ENHERTU (HER2-ADC)

まずは、今回の目玉であるエンハーツ (HER2-DXd) についての発表内容を振り返りましょう!

転移性乳がんの定義自体に変革を起こす!

今回エンハーツの臨床試験の中でも、最も注目されていたのはDESTINY-Breast04という試験です。

DESTINY-Breast04の概要

HER2低発現の転移性乳がんに対する3次治療のPh3試験で、化学療法との比較試験になります。

既にHER2陽性乳がんに対しては抗HER2療法が複数承認を受けており、予後は大きく改善しています。
しかし、HER2陰性乳がん患者では治療選択肢が限られています。

そして、DESTINY-Breast04の結果は主に以下のようでした。

  • エンハーツ投与患者全体では、化学療法に比べて全生存期間(OS)を6.6カ月延長、無増悪生存期間 (PFS) を4.8ヶ月延長
    • HR陽性 (333名) :PFSは4.7ヶ月延長、OSは6.4ヶ月延長
    • HR陰性 (40名) :PFSは5.6ヶ月延長、OSは9.9ヶ月延長
  • 死亡リスクを36%軽減
  • 安全性も既存データと同じで、新たな副作用は認められなかった。

この結果で、最もインパクトが大きかったことは転移性乳がん患者の従来の定義を変える可能性を示唆したことです。 (以下図)

従来はHER2陽性/陰性でしか分類をされておらず、HER2陰性の患者に対しては抗HER2療法は奏功しませんでした。(上図左)

しかし、エンハーツの高い薬効によって、従来HER2陰性患者中の「HER2低発現集団」に対して、エンハーツが奏功することを見出しました。

これによって、従来の転移性乳がんの分類に変革が訪れ、今後の患者分類はエンハーツが効くか効かないかで分類されるようになるのでしょう!

革新的な薬が対象疾患の従来の定義を変えてしまうことはまれに起こります。

そのような薬剤は多くの場合で、圧倒的な市場を開拓/占有し、独占的なポジションを取る可能性が非常に高いです!

今後のエンハーツ開発戦略

エンハーツでは、全部で12試験が走っています。(以下図)

この中で次に注目されているのはDESTINY-Breast06試験です。

DESTINY-Breast06試験は、「化学療法未治療のHER2低発現患者」に対するエンハーツ単剤投与試験で、この試験が成功することでHER2低発現患者に対する価値がより高まります。

この試験ではHER2-Ultralowの患者も組み入れていて、
「どこまでHER2が低発現でもエンハーツは薬効があるのか?」の疑問にも答える試験になっています。

また、併用試験 (08) やTNBCに対するPD-L1併用 (BEGONIA) なども加速していく計画です。

脳腫瘍に対するADCの可能性!?

エンハーツは、DESTINY-Breast03試験で、非活動性脳転移を持つ乳がん患者において、頭蓋内奏効を示すことが報告されています。 (CR:27.8%, PR:36.1%)

これは既存HER2-ADC (T-DM1) では認められないエンハーツだけの特徴です。

そこで、「未治療の活動性脳転移を持つ乳がん患者」を対象とした医師主導治験が行われました。 (TUXEDO-1)

その結果、未治療の活動性脳転移を持つ乳がん患者」においてもエンハーツは有効性を示すことが明らかになりました。

  • TUXEDO-1 は主要評価項目を達成
  • 奏効率は73.3%
  • 頭蓋外および頭蓋内奏効率は同程度

この結果から推察されることは、脳内のHER2陽性転移ガンに対してもエンハーツが薬効を示する可能性です。

つまり、脳腫瘍で発現するタンパク質をターゲットとした新規ADC製品の創製が可能かもしれません!

第一三共のADCが世界に認められた瞬間

2022年6月6日、DESTINY-Breast04に関する口頭発表後には、会場でスタンディングオベーションが巻き起こりました。

発表者した先生も号泣で、患者団体の方も泣いていたそうです。

このスタンディングオベーションはASCOでは稀にしか見られないそうで、世界にエンハーツが、第一三共のADC技術が認められた瞬間でした!

Dato-DXd (TROP2-ADC)

Dato-DXdは、TROP2を標的としたADC開発品です。
同様のTROP2を狙ったADCをギリアドが先行して開発しています。

今回発表された内容は、トリプルネガティブ乳がん (TNBC) 患者に対して、PD-L1抗体との併用試験になります。 (BEGONIA)

  • Dato-DXd + デュルバルマブ (PD-L1) は高い奏効率を示した!
    • ORRは74%
    • PD-L1発現に関わらず抗腫瘍効果が確認
  • 各単剤と同様の安全性を示し、新たな安全性シグナルは認められなかった。
    • 用量制限毒性なし
    • 主な有害事象は口内炎および軽度の悪心・脱毛症であった
    • ILD/肺炎は報告されなかった

この試験の次は、TROPION-Breast02という「TNBC患者対象の単剤Ph3試験」が計画されています。

治療手段がまだ少ないTNBCに対する新たな治療選択として価値を高めていく戦略です。

ギリアドのTROP2-ADC (Trodelvy) は既にTNBCに対する治療薬として承認されています。

今後はTrodelvyの市場を崩す戦略を立てて、エンハーツも組み合わせながら治験を組んでいく必要がありますね!

HER3-DXd (HER3-ADC)

HER3-DXdは、HER3を標的としたADC開発品です。

今回発表された内容は、「様々な乳がんサブタイプにおけるHER3-DXd有効性」を確認するPh1/2です。

  • 多数の前治療歴を有するHER3発現乳がん患者に対して抗腫瘍効果を示した。
    • HR+/HER2−:ORR, 30%
    • TNBC:ORR, 23%
    • HER2+:ORR, 43%
  • HER3高発現および低発現において抗腫瘍効果を示した。
  • 有害事象による治験薬投与の中止率は低かった(10%)
    • ILDは7%;大半の症例はグレード1および2、グレード5が1例
    • 独自の副作用として、血小板減少症が認められた

DS-6000 (CDH6-ADC)

DS-6000は、CDH6に対するADC開発品です。

上で紹介した3ADCの次ぐ成長ドライバーとして期待されているRising Star (DS-7300、DS-6000) の一つになります。

今回発表された内容は、腎細胞ガンと卵巣ガンにおける用量展開試験を見るPh1の結果です。

  • 忍容性は概ね良好であり、用量展開パートの用量を8.0mg/kgに決定
  • 多数の前治療を受けた卵巣ガン/腎細胞ガンの患者において、早期の臨床シグナルを確認
  • 用量展開パートにおいて、卵巣ガン/腎細胞ガンの患者登録を開始し、8.0mg/kgを投与開始

機関投資家の質問

Q:DESTINY-Breast04試験において、HR陽性に比べて、HR陰性で有効性が高いようだった。なぜなのか?今後のエンハーツの開発方針に関わるのか?
A:この患者集団は主にTNBCのため、化学療法に対する感受性が高いのかも知れない。明確な理由は分からない。実際には症例数が少ないため、差は無いかも知れない。HR陰性/陽性で同等の薬効を示す可能性が高い。

Q:HER2陰性でも薬効を示す患者が存在する。HER2-Ultralowという患者集団でも薬効が見える可能性はあるのか?今後の展開は?
A:どれくらいHER2低発現までエンハーツが効くのかは関心を持っている。実際、DESTINY-Breast06では、HER2-ultralowの患者を集めている。また、HER2-zeroの患者でも30~40%の奏効率を示すデータが得られている。

HER2-zeroで効く抗HER2療法ってなんなんですかね笑

おそらく測定方法の違いによるブレなんでしょうけど。

Q:DESTINY-Breast04, 06の次はどういう戦略で治験を進めるのか?
A:DESTINY-Breast08がメインと考えている。複数の薬剤との併用で幅広いパートナーを見ている。

Q:実際にASCOの会場にいて、DESTINY-Breast04に対するスタンディングオベーションの感動はどうだったのか?
A:患者団体で、涙を流している方もいた。発表者も泣いていた。ASCOでは非常に稀な現象である。
患者に貢献していることを再確認出来た。第一三共としては初めて、AZのCEOでも3回目らしい。

Q:DESTINY-Breast06ではHER2-Ultralowも組み入れているが、実臨床でHRE2-Ultralowを診断出来るのか?
A:HER2-ultralowの定義は診断パートナーと提携している。DESTINY-Breast06では新たなアッセイ方法を導入して患者を層別化しようと考えている。

個人的な見解

脳腫瘍に対する効果もあったら最強やん

個人的に最も驚いた結果の一つが、「活動性脳転移を持つ化学療法未治療の患者」に対してエンハーツが効いている試験ですね!

これは、同じHER2-ADCであるT-DM1では認められない現象で、第一三共のADC独自の現象でしょう!

T-DM1も同じHER2抗体を使っているので、抗体依存的なメカニズムでは無いと思います。

T-DM1はリンカーが非乖離型で、エンハーツは乖離型なこととか、搭載化合物の活性に依存する表現型なんですかね〜?

今後、脳腫瘍に対するADCの研究も進むでしょう!
世界で唯一無二のプラットフォームになってきています。

副作用症状が薬剤ごとで異なる

今回の複数のADC開発品の副作用状況を見ていると、開発品ごとに副作用の出方が異なるようです。

主な副作用
  • エンハーツ;間質性肺炎 (ILD)
  • Dato-DXd:口内炎、軽度の悪心・脱毛症
  • HER3-DXd:ILC、血小板減少症

ターゲットベースで起こる現象なのかと思っていましたが、同じHER2-ADC (T-DM1) ではILD起こらないことから、「ターゲット × ADCシステム」の組み合わせで複合的に起こっている副作用なのでしょうか?

何にしても、各薬剤ごとに副作用確認時の対応プランを練る必要がありますね。

エンハーツのILDはかなり詳細なガイドラインが設定されていますが、他剤でも重要になるでしょう!

しかし、逆に第一三共ADCの次の進化ポイントはそこにあるかも知れない!

副作用原因を特定することで、さらに優位性をキープ出来る技術に進化可能だと思います。

最後に

今回は、ASCO2022で第一三共が発表した臨床試験データについて紹介してきました。

今回の発表内容と当記事を見ることで「第一三共のADC開発品の現状と課題、将来性」についてかなり深く理解出来たと思います。

やはり、第一三共のADCは本当に素晴らしい技術であることが再確認出来ました。

今後もRising Starの次を継続的に生み出していくことに期待しています!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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