こんにちは。ティーダです。
先日の2022年1月31日から2月10日で、「主要内資製薬会社の決算」が出そろいましたね
今回は各社の決算内容をざっくりまとめた上で、各社の注目トピックを厳選して紹介していきます!
今後も決算ごとにまとめ記事を書いていくので、普段の企業研究ブログと併せて読んで頂ければ製薬業界全体のトレンドを掴めるようになると思います!
継続的に一緒に勉強していきましょう!!
各社の決算一覧まとめ
こちらが主要内資製薬企業の決算まとめです。(売上高&営業利益)
大日本住友製薬と塩野義製薬以外は概ね前年同期に比べて、順調に増加していることが分かります。
特に中外製薬と第一三共の成長が凄まじいですね!
各社の厳選注目トピック
ここからは説明会資料を全て見た私が厳選した「各社の注目トピック」について簡単にまとめていきます。
(疲れました。。。)
詳細な情報が大事なトピックは少しツッコんで解説もしていきます。
武田薬品工業
- ENTYVIO® (エンタイビオ) のバイオシミラーの販売は特許終了直後にはない見込み
- Novavax社のワクチンについて、既に政府との購入契約完了。2022年初頭の供給見込み
- 移植後の難治性サイトメガロウイルス(CMV)感染に対してLIVTENCITYがFDA承認
- TAK-721 (好酸球性食道炎) の開発プログラムを中止
- γδT細胞エンゲージャー療法の開発をさらに加速させるため、Adaptate Biotherapeutics社を買収
エンタイビオ (現在売上約4000億円) は2026年にUSでバイオシミラーの参入がある想定でした。
しかし、そのタイミングでのBS製品上市はなく、2032年頃まででの特許満了まで売上を順調に伸ばせる見込みです。
また、最近流行のエンゲージャー療法に今後展開していく計画ですね!
大塚製薬
- イーケプラとスプリセルの共同販売契約終了を売上面では乗り越え、前年比で増加。
しかし、利益面では他の要因とも併せて減収になった。 - グローバル4製品 (エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ、ロンサーフ) で合計4898億円の売上。中計内での予定を2年前倒しで達成。
- 2022年は過去最高の売上高を計画
全体的な売上面では好調です。
特にグローバル4製品については売上高を順調に伸ばせています。
Ph3に入っている開発品も多いので、それぞれが上手くいくことで将来性も高いと考えています。
アステラス製薬
- セレコックス、リピトール、エリガードの販売終了による売上減少を、XTANDI (20%up 4116億円) 、ゾスパタ、パドセブ、エベレンゾといった製品の成長でカバーした (+500億円)
- 1000名規模のMR要員が減少(日本、欧州、米国、中国、韓国等)することで、180億円/年の費用削減予定
- ASP2138 (Claudin18.2 + CD3の二重特異性抗体) のPh1を2022年4-6月に開始予定
- ASP1948 (抗NRP1抗体:Treg除去) をPoC未達により開発中止
- ASP0739, ASP7517 (aAVC) の最初の患者への投与完了
- ASP5354 (蛍光造影剤) のPh2結果取得。Ph3へ進む
XTANDIの売上が順調に進捗しています。
しかし、2027年にXTANDIパテントクリフがある中で、Ph2以降の開発品が少し乏しい様子です。
Focus Areaアプローチの開発品も2025年度を目処に開発後期に入れたいとのことですが、実際の売上が経つのは2030年以降になるので、クリフをどう乗り越えるのでしょうか?
今後の戦略に注目です!
第一三共
- 営業利益が37.6%の大幅増益!エンハーツ売上高増加 (約2倍に成長) とその他製品の順調な成長に起因
- USでの長期収載品を外部へ委譲して、新薬を軸とした収益構造への変換
- Dato-DXdについては、2021年11月にTNBC対象Ph3試験を開始
- HER3-DXdはFDAより画期的治療薬の指定を受けた
- DS-5670 (コロナワクチン) はブースター投与のPh3試験を2022年度上期に開始計画
- DS-7011 (抗TLR7抗体) はまもなくPh1試験開始
3ADCについては非常に順調に進んでいる印象です。
ADC以外の進捗が大きな動きがないのが少し心配ですね。。。
コロナワクチンについては、既存mRNAワクチンとの副作用の強弱などで戦略は変わってきそうです。
しかし、Ph1もまだ終わっていない段階では承認まではかなり遠いでしょう。
中外製薬
- 2022年度の売上見通しは創業初の1兆円越えを計画 (1兆1500億円)
- Ph3試験は32試験を保有
- OWL833 (2型糖尿病) について、導出先のPh1bで良好な有効性と安全性を確認
- SKY59/クロバリマブについて、2021年10月からPh3開始 (ブロックバスター級)
- SRP-9001/RG6356 (デュシェンヌ型筋ジストロフィー) を導入契約締結
売上高や利益の成長に非常に勢いがあります。
さらに、後期開発品にもブロックバスター級が複数あり、パイプラインも約70プロジェクトあります。
正直全く欠点のない状態です。
来期は売上高で第一三共を抜いて、アステラス製薬も数年の中には抜かれる可能性が高いですね!
中分子医薬品で開発入りしたLUNA18がどうなるかは世界中が注目していると思います!
エーザイ
- MORAb-202による契約一時金 (496億円) が利益と売上に大きく上乗せ
- グローバル4製品 (レンビマ、ハラヴェン、フィコンバ、デエビゴ) の売上高が前年比519億円増加
- ADUHELM®のPh4を2022年5月から開始予定。主要評価完了は試験開始から4年後の見込み
- ADUHELM®の価格を約半分に引き下げ (2022年1月より)
- レカネマブ (抗Aβプロトフィブリル抗体) の段階的なFDAへの申請を進行中 (Ph2b試験)
2022年9月末までにPh3試験を完了予定 - MORAb-202 (抗FRα抗体-ADC) については、2022年Ph3試験開始を計画 (BMS共同開発)
ADUHELM®とレカネマブの抗Aβ抗体に関する話題が非常に重要になります。
現在、PMDAとは審議中ですし、欧州CHMPには一度はじかれて、再申請中です。
長年注力してきたアルツハイマー薬の行く末 (≒エーザイの将来) が近年中には決定するのでしょうか?
Ph4の試験結果を待たなければならないとしたら約5年間は売上が立たない予想になります。。。
また、MORAb-202は非常に有望な抗がん薬で、2026年に特許切れを迎えるレンビマの次のガン領域の柱に成長する可能性がある製品です。
大日本住友製薬
- ラツーダが流通在庫調整による出荷減や価格の低下等で34億円減収
- ブロバナの独占販売期間が終了し110億円減収
- 通期予想も、USでのラツーダの流通在庫の調整による出荷減少や価格の下振れにより、売上高を240億円分の下方修正
- DSP-1181 (強迫性障害) はPh1結果を受けて、開発中止
- DSP-7888 (膠芽腫) はPh3結果を受けて、開発中止
- SMC-01 (2型糖尿病治療アプリ) はPh3結果を受けて、開発中止
- 医療機器などのフロンティア事業が2022年度~2027年度にかけて2製品/年で上市予定
- iPS細胞医療についても2024年度に最初の製品を上市予定 (パーキンソン病)
DSP-1181はAIを用いて探索期間が12ヶ月未満と話題になった化合物です。
見事にPh1の結果が得られず、開発は中止になりました。
同様にAI創薬で同定されたDSP-0038も現在Ph1ですが、こちらはどうなるか注目です。
ラツーダの売上が少し上下しただけで売上・利益が大きく上下します。
つまり、現状の他製品でラツーダのブレすらもカバーできないということです。
さらに、ラツーダの次の柱となる開発品もない状態でどうなるかに注目です。
開発品もPh3での中止が目立ちます。
やはり田辺三菱のように親会社に吸収合併されるのでしょうか?
田辺三菱製薬
- 前年は営業利益がマイナスだったが、今期は黒字に転換
(直近2期連続で通期営業利益は赤字) - MT-2766 (コロナワクチン) については、カナダでは年始に実用化予定。USでは承認申請準備中。日本では、Ph1/2実施中。
- MT-1186 (ALS治療薬) のUSでの承認申請を受理
ステラーラやシンボニーといった導入品が売上に最も貢献している時点で、非常に困難な経営の会社という印象です。
開発パイプラインも非常に少ない上に、ほぼ導入品しかない状態です。
「ALS治療のリーディングカンパニーへ」という計画ですが、「ラジカヴァ」と「エクサヴァン」 (サノフィのリルゾールの製剤を変えただけ) の2製品で、リーディングカンパニーというのは少し難しいのでは?
中計では2025年時点で約5000億円を田辺三菱製薬だけで稼ぐ計画です。
現状のパイプラインで実現可能なのでしょうか?今後の戦略に期待です。
協和キリン
- 国内事業はネスプの売上減や、共同販売の終了で減収したが、USでのクリースビータの成長により全体としては増収増益
- 2022年度は、クリースビータの海外売上高を1152億円を予想 (34%Up)
- ME-401 (濾胞性リンパ腫) について、Ph2で良好なデータを取得
- RTA 402について、アルポート症候群への適応についてFDAから否定的見解
開発品が少ない様子です。。。
めぼしい製品はAmgen社と共同開発するKHK4083 (アトピー性皮膚炎) のみ。
前臨床の有望な製品を開発に上げる必要がありますね!
二重特異性抗体などに期待です!
小野薬品工業
- 通期の業績を上方修正。
SLGT2阻害薬「フォシーガ」が好調なのと、ロイヤリティ収入も順調なことが起因。 - オプジーボは2021年度国内売上高を1100億円を予想
- オプジーボが、世界で初めて原発不明がんに対する適応を獲得 (日本)
- オプジーボとONO-7914 (STINGアゴニスト) や、ONO-7122 (TGF-β阻害) との併用について、日本Ph1を開始 (自社品)
- 抗 CD47 抗体 (ONO-7913) について、日本でPh3開始 (導入品)
- オレンシアについて、Ph3試験を中止
- ONO-4059について、ギリアド社に導出していたが、返還
オプジーボは非常に順調に成長しています。
各ガン種に対する適応拡大も進んでおり、処方シェアが拡大中です。
オプジーボにからめて開発品を出すのは良い戦略だと思います。
しかし、やはりオプジーボ以外の自社品で目立った開発品はないように見えます。
オプジーボを中心に攻める戦略は間違っていないと思いますが、今後の開発品に注目ですね!
塩野義製薬
- クレストールのロイヤリティ収入の減少によって、減収減益
- コロナ関連プロジェクトへの研究開発費の投入により前年比で90億円増加
- S-217622 (コロナ治療薬) のPh2a試験の結果で、投与によるウイルスの減少を確認
- S-268019 (コロナワクチン) については、4試験を実施中 (Ph2/3試験、中和抗体比較試験、追加免疫試験、発症予防試験)
- S-600918 (睡眠時無呼吸症候群) について、治験結果を受けて開発中止
- 不眠障害治療アプリを導入。2022年2月に申請予定
- Cabotegravir (HIV薬) について、長時間作用型予防薬や長時間作用型治療薬としてFDA承認
塩野義はなんと言ってもコロナ関連プロジェクトでしょう。
後期開発品も少ないため、2028年頃に迎えるパテントクリフに対して、コロナ関連プロジェクト補おうとしているようです。
最新のニュースではコロナ治療薬について早期承認を目指して、2月末頃にPh2bまでの結果で承認を獲得しようと試みています。
もし、治療薬が上手くいくのであれば海外メガファーマとの提携も見えてくるので、売上もかなり見込めるのではないでしょうか?
今後の展開に注目です!
個人的な見解
全体的に好決算が出ていた印象です。
しかし、会社によっては近々パテントクリフを控えている中で後期パイプラインが乏しい会社も多い印象でした。
自分が就職・転職するなら?
圧倒的に中外製薬は魅力的ですね。
また、第一三共や大塚製薬も大型品が複数あることからしばらくは安泰な印象です。
塩野義はコロナで一発逆転があれば復活する可能性もあるのではないでしょうか?
このスピードで治療薬を出せるということは非常に大きな強みになると思います!
(コロナが出せなかったら危ういですね。。。。)
アステラスとエーザイと協和キリンは直ぐには倒れることはないと思いますが、10年後は少し心配ですね〜後期パイプラインの不足が心配です。
最後に
今回は各社の決算をざっとまとめてみました!
これからも決算のたびになるべく簡単に決算まとめ記事を書いていきます!
この決算記事を定期的に見ていけば、各社の状況を定点的に観察できるので、企業研究に非常に有用だと思います。
これからも頑張って一緒に学んでいきましょう!
最後までご覧頂きありがとうございました!
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