こんにちは、ティーダです。
今回は、2022年3月30日に行われた「JCRファーマのR&Dミーティング」について個人的な見解も含めて解説していきます。
JCRファーマがR&Dミーティングという形で技術や開発品について説明するのは創業以来初めてです!
(もしやってたら誰か教えて)
つまり、今回のJCR独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo技術」に相当の自信と思い入れがあるのでしょう!!
それだけ素晴らしい技術だと思いますし、苦節15年以上かけて発明したこの革新的な技術に対して賞賛しかありません。
1975年の創業から、組替えタンパク質の製造やバイオシミラーで主に利益を立てていましたが、今後はJ-Brain Cargo技術を活用した新薬創製型の製薬企業に進化していくことが期待出来ます。
今後、BBB通過技術保有企業として世界的にも注目度の高いJCRファーマを一緒に勉強していきましょう!
J-Brain Cargo技術とJCRの強みが融合
ライソゾーム病の病態と既存治療法
遺伝的な酵素の欠損・機能不全により、細胞内のリサイクル機構であるライソゾーム内に基質が蓄積し、発症する疾患の総称
現在までに50種類以上のライソゾーム病が知られています。
全身への欠損した酵素を補充する既存療法は革新的でしたが、酵素補充療法では血液脳関門は通過せず、中枢神経疾患には効果がありません。
結果的に、神経認知機能が顕著に低下し発達も遅れてしまうというアンメットニーズが残っていました。
血液脳関門通過技術 J-Brain Cargo技術とは?
J-Brain Cargo 技術は、生体内で起こっている「高分子に血液脳関門を通過させる機序」を利用しています。
例えば、トランスフェリン受容体は高分子トランスフェリンを乗せて、受容体依存性トランスサイトーシスと呼ばれる機序で血液脳関門を通過します。
そこで、J-Brain Cargo 技術では、「トランスフェリン受容体に対する抗体」と「目的タンパク質」を結合させ、血液脳関門を通過して目的タンパク質を脳内に送達することが可能です。

この機序は極めて直感的でシンプルに聞こえますが、
- 適切な抗体の親和性
- エピトープ部位の選択
- 融合部位
- リンカーの多様性
などの最適解を見出すことが重要です。
この融合タンパク質は二つの方法で細胞に入ります。
- トランスフェリン受容体を介して、血液脳関門を通過し脳内へ目的酵素を輸送する機能
- マンノース-6-リン酸受容体と目的酵素上のマンノース-6-リン酸が結合することで、筋肉や肝臓に対して目的酵素を輸送する機能
その結果、末梢系と中枢系へと同時に酵素を送達することが可能になります!
JCR では、J-Brain Cargo 技術周辺の知的財産を堅固に築き上げており、現時点で特許出願は 32
件、特許登録 15 件、論文発表は 10 件となっています。
J-Brain Cargo技術の更なる進化 〜VHH抗体の活用〜
J-Brain Cargo技術の更なる改良にも積極的に取り組んでいます。
今回紹介されていた技術は、トランスフェリン抗体のVHH抗体です。
ラクダ科の生物が持つ重鎖抗体のヘビーチェーン領域だけを使用した抗体をVHH 抗体と呼びます。
このVHH抗体を目的タンパク質 (抗体医薬など) と結合させることで高分子を脳内に送達させることが可能です。

- 親和性は通常の抗体と同程度
- 分子サイズが小さいため、隠れたエピトープも認識可
- 安定性が高い(熱、有機溶媒、pH)
- 大腸菌・酵母等で安価に大量生産が可能
- 加工が容易(二量体化、二重特異性など)
既に社内で開発したVHH抗体と結合した抗体医薬が、マウスとカニクイザルにおいて、脳移行性能を持つことを確認しています。
今後は、VHH抗体と組み合わせることで、従来のIgG抗体と組み合わせるよりもメリットのあるモダリティへの応用を考えています。
複雑な抗体-酵素融合タンパク質を生成可能な技術
J-Brain Cargo技術を活用した開発候補品の多くは抗体と酵素の融合タンパク質になります。
つまり、酵素単体と比較するとその分子構造は複雑であり、発現量や安定性において特殊な挙動を示すことから、開発の障壁となることがあります。
しかし、JCRファーマには複雑なタンパク質を効率的・安定的に発現させることがタンパク質工学の技術が備わっています。
今回の資料では、通常では「発現が低いタンパク質」や「安定性が低いタンパク質」に対して、効率的・安定的・高活性で発現させた実績が紹介されています。
このタンパク質工学技術を生かすことで、J-Brain Cargo技術を活用した開発品を今後も継続的に創製できると考えています。
イズカーゴ (ムコ多糖症II型)〜世界初のJ-Brain Cargo適用医薬品〜
非臨床試験結果
- 疾患マウスモデルにおいて、イズカーゴの反復投与でほぼ完全に末梢組織および中枢器官中の病原性基質を減少させていることが確認されました。
- 末梢組織では従来の全身性酵素補充療法との違いはありませんが、中枢器官では、イズカーゴのみが基質濃度を下げており、全身性酵素補充療法では減少していませんでした。
臨床試験結果
- イスカーゴ投与によって、脳脊髄液中の基質濃度の顕著な減少が認められました。そして、酵素補充療法へ切り替えると再び脳内基質の顕著な増加が認められました。
その後、再びイスカーゴ投与に切り替えると脳内基質が再度明確に減少しました。 - 中枢組織のみではなく末梢組織の症状についても酵素補充療法と同等の薬効が確認されました。
- 発達年齢スコアについて、酵素補充療法に対して有意な改善が確認されました。
(同一遺伝子変異を持つ兄弟間の比較でも確認) - イスカーゴは、若い患者だけではなく、既往歴が数十年の患者にも効果があることを確認しました。
次世代パイプラインと将来の成長戦略
JCRは、ライソゾーム病市場としては以下の市場性・将来性を認識しています。
- 100億ドル前後の市場性
- 年平均成長率約10 %(2020年~2027年)
- 発症頻度:7.6 – 25(10万出生)(先進国)
- 80%以上の患者に治療法が提供されていない
- 新生児でのスクリーニングによる診断数増加
- 中枢神経症状での高いアンメット・ニーズ
そんな中で、JCRではライソゾーム病に関して、以下のように複数の開発品を所有しています。

上記のパイプラインの他にも、より早期のパイプラインには10疾患のライソゾーム病をターゲットとした早期創薬プログラムが進行中です。
ライソゾーム病の治療状況を見ると、JCR のポートフォリオは以下の2種類の価値を提供できると考えています。
- 既存の標準治療がある適応症に対して、更なる画期的なイノベーションを提供
- 標準治療が確立されていない適応症において疾患初の治療法を提供
ライソゾーム病の6疾患での世界での市場規模としては、
- ムコ多糖症Ⅱ型 (イスカーゴ) :870億円
- ポンペ症 (JR-162) :1100億円
- ムコ多糖症Ⅰ型 (JR-171):280億円
が大まかに見込まれていて、JCRが既存疾患を蹂躙して、市場を占有することも期待出来ます!!
将来的な成長戦略
JCRは、他社と協業することで、さらなる成長を見込んでいます。
具体的には以下の様なスキームで、J-Brain Cargo技術を中心とした強みを生かして、他社と協業する戦略です。

新しい疾患 (例えば、筋組織への薬剤送達を強化するような治療薬) や、多くのライソゾーム病
でアンメット・ニーズとなっている整形外科疾患への対応についても社内研究を進めています。
また、J-Brain Cargo 技術を JCR のコア業務外の疾患領域に応用する場合は、主にパートナーが既に創出している治療法を活用する戦略を計画しています。
投資家からの質問
A:現行の通常IgGを用いたJ-Brain Cargo技術を将来的にVHH抗体に切り替える予定なのか?
Q:ケースバイケースで、モノに応じて使い分けることを考えている。全て VHH に切り替えることは考えていない。
A:他社との差別化ポイントはどこなのか?ジェネンテック社も既に抗体医薬に似たような技術を所有している。
Q:JCRでは細かなタンパク質工学のチューニングできる点が強み。
BBB 移行バインダーのアフィニティや血中半減期などを考慮してタンパク質をチューニングしていくことはJCRが強みにしている点。
A:遺伝子治療について、なぜ武田をパートナーに選ばれたのか?武田とこのタイミングで提携したことによって得られるメリットはなに?
Q:武田は遺伝子治療の新しい技術に積極的に投資しており、シャイアーの買収でも技術と製造機能を獲得している。また、長年の全身性酵素補充療法の販売実績をもつこともメリット。
A:J-Brain Cargo技術では今後もトランスフェリン受容体 (TfR) を使用していくのか?
Q:現在は基本的には TfR がメインだが、ArmaGenと一緒になったことでインスリン受容体も使用可能。また、ArmaGenにはBBB研究の世界的権威もいるので、今後も広がりはある。
A:抗体と薬剤を結合するリンカーは既に確立されているものが複数あるのか?。
Q:アミノ酸リンカーであれば、確立できている。しかし、核酸医薬等と結合する際に、ケミカルリンカーがよいという話になれば、専門の他社と協業する必要がある。
A:安定化・活性化した変異型のタンパク質を人に投与したときに、アレルギーなどの副作用が起こる可能性はどう考えているのか?
Q:副作用のリスクよりも治療をするメリットの方が高いと考えている。また、今の技術ではかなりの確度で抗原性 (副作用の程度) が予測ができる。
個人的な見解
タンパク質工学は現代創薬での重要な強み
ご存じの通り、近年の創薬モダリティはタンパク質をベースにした薬が増えています。
しかし、普通の人が想像する以上に「タンパク質製剤を高効率で安定的に製造すること」は難しい技術です。
実際、近年CDMO (医薬品受託製造) 企業が増えているのも、製造技術が新規モダリティに追いつかない企業が多いことと関係するのでしょう。
その点では、JCRファーマの長年に経験を元にした、複雑な融合タンパク質を高効率かつ安定的に生産できる技術は非常に有用です。
協和キリンや中外製薬もタンパク質のエンジニアリングには強みを持ちますね。
J-Brain Cargo技術の展開は無限大!安定な収入源になる!
従来の中枢系を狙う薬は低分子薬がほとんどでした。
そのため、J-Brain Cargo技術は、中枢疾患を狙う薬にとって大きなブレイクスルーになるでしょう。
また、ライソゾーム病自体が不足/欠損した酵素を補充することで明確な症状改善が見られる疾患です。
なので、0から創薬ターゲットを探索/同定するというステップを必要としないことも大きな強みです。
50種類近くあるライソゾーム病全てをJCRが対象疾患にすることも可能でしょう!素晴らしいですね!
アステラス製薬も遺伝子でライゾーム病の一種であるポンペ病を狙ってるけどこれは勝てないんじゃないか?
最後に
今回はJCRファーマのR&D説明会について徹底的に解説してきました。
結論から言うと、JCRファーマの将来性は非常に素晴らしいということです!!
既に小野薬品や大日本住友、帝人、武田薬品、エーザイなどと協業していますが、今後はどこか海外メガファーマが入ってくるのかなどが楽しみですね!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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