こんにちは、ティーダです。
今回は、2022年12月5日に開催された協和キリンの2022年のR&D説明会を個人的な見解も含めて、徹底解説します。
協和キリンは2年に1回程度の頻度でR&D説明会を実施しています。
国内でも抗体医薬品にかなり強みを持っている協和キリンの技術力を測るための大事な説明会と認識しています。
個人的には、R&D説明会の宣伝が足りなかった気がします。。
もっと発信してもいいのに、ぬるっとR&D説明会やってますよね
協和キリンに関する他のブログ記事もあるので、こちらも読むと一層理解が深まります!
開発品の紹介
まずは開発段階にある製品について2つ紹介されています。
KW-3357(妊娠高血圧腎症)
この疾患に対して、同社はKW-3357 (製品名アコアラン) を適応拡大しようと考えています。
KW-3357は、ヒト血漿由来アンチトロンビン (AT) の遺伝子組換え製剤で、AT欠乏に起因する疾患に対して上市済みです。
こちらの製品は協和キリン独自のポテリジェント技術で、ヒト血漿由来のATに匹敵する持続性を持たせた薬です。
アコアラン自体の販売は日本血液製剤機構が行っているので売上高は分からなかった。。。
KW-3357投与によって、「AT活性が低く、妊娠の早期終結リスクが高い患者」に対して、妊娠継続日数の延長を目的に進めています。
現在国内Ph3試験を実施しており、2023年の夏頃に終了する予定です。
KHK4951(Tivozanib点眼)
この疾患に対して、同社は自社創製で、抗がん剤として上市済みのVEGFR阻害剤 (Tivozanib) を点眼剤にして適応拡大しようと考えています。
nAMD治療ではすでに複数製品が上市されていますが、それらは硝子体内への注射が必要です。
しかし、Tivozanibを点眼剤にすることで、非侵襲的な治療を望むnAMD患者へ貢献出来ると考えています。
Tivozanibは協和キリンが創製後、導出し、導出先企業が抗がん剤として2021年承認取得しました。
しかし、協和キリンは非がん領域の開発・販売権を買い戻し、nAMD治療薬として開発しています。
独自の新規点眼製剤
過去にVEGFR阻害剤の点眼剤は複数開発されていたが、眼深部への送達に課題があり、上手くいっていなかったらしい
そこで、協和キリンは新規点眼製剤を開発しました。
この点眼製剤を使用することで、ラットでの試験で、通常製剤に比べて飛躍的に局所での薬物濃度が上昇しました。
Ph1試験が完了し、数名の患者で効果が認められているそうです。
現在Ph2試験に向けて準備中です。
nAMDには様々な会社が参入していますね。中外のバビースモもその一つです。
キリンは疾患に対するこだわりは少なく、モダリティベースで創薬する戦略のようですね
Early-stage R&D活動
データ駆動型創薬:InveniAI社との提携
InveniAI社の提携は以下の3つのステップで進行しています。
- STEP1:既存パイプラインの新規適応疾患の探索
- STEP2:次世代抗体技術の標的探索
- STEP3:
- 新たに複数の新薬研究に関して共同研究を締結
- AI Innovation Labへのアクセスが可能
特に、協和キリンは二重特異性抗体の標的探索にAI技術活用を進めており、新たな組み合わせを探索しているそうです。
がん抗原とCD3みたいな単純な組み合わせではなく、ヘムライブラみたいなユニークな標的を同定できると良いですね!
自社抗体技術の深化:Synaffix社
協和キリンは「革新的な抗体医薬の継続的創出」について、以下のようなサイクルをイメージしています。
その中でも、今回はADC技術のために提携しているSynaffix社を例に紹介しています。
Synaffix社は以下のような強みを持っています。
上記のSynaffix社の技術を用いることで、協和キリンの有望な自社抗体をADC化することが可能になります。
協和キリンとSynaffix ADC(抗体薬物複合体)創製技術に関するライセンス契約を締結
https://www.kyowakirin.co.jp/pressroom/news_releases/2021/pdf/20210804_01.pdf
Synaffix社は2020年の世界ADC賞でペストプラットフォーム賞を獲得していますね!
機関投資家からの質問
KHK4951(Tivozanib点眼)について、市場でのポジションはどう考えている?
薬効自体は、抗VEGF抗体の注射剤と同等までは難しいと考えている。
しかし、「寛解状態に入った患者」に対して点眼剤を提案することで価値を出せると考えている。
二重特異性抗体はどうなっているのか?
2020年に説明したように、既に進んでいるものがいくつかあり、来年度にFPI (First Patient In) を計画している。
今後はInveniAI社と提携した製品も出るかもしれない。
来年FPIするのにここで教えてくれないんか〜
過去の他社VEGFR阻害点眼剤はなぜ失敗したのか?
社内データから、やはり薬剤の後眼部への到達が足りていないことが原因があると考えている。
KHK4951で使用している自社技術の詳細は、ナノ粒子などの技術も使っているが詳細は言えない。
Synaffix社のADC技術の利点・欠点
一つ目は、抗体のアミノ酸改変が必要ないことは利点と考えている。
これによって、活性や免疫原性が変化するリスクが抑えられる。
二つ目は、抗体に合わせた複数のペイロードをSynaffix社が持っていること
さらに、特定の糖鎖に対して特異的にペイロードを付加出来るため、製造時の取り扱いがよくなる。
アミノ酸配列を変えないことの利点はあんまり上手く言えていない様子
KW-3357の市場規模は?
国内患者の年間2万人のうち、2割程度の約4000人が適応になる
投与量は72U/kgだから、50kgの患者に使用するとなると大体3600U/人
1800U/瓶の薬価が8万円くらいだから、16万円/日/人で使うとして、期間は7日間なので、112万円/人
患者数が4000人/年としたら、約45億円/年の売上高かな?
患者数的にもそこまで大きな市場ではなさそう。。。
KHK4951(Tivozanib点眼)について、全身性副作用が出るのでは?
副作用としては、高血圧が出る可能性があるので見ている。
今のところは、副作用は出ていない。
個人的な見解
回答者に少し違和感あるけど。。。
個人的に説明会を聞いて一番思ったことは、発表者さんの回答の歯切れの悪さですね笑
- 「点眼剤」なのに「経口剤」って何度も言う
- 研究ベースの難しい質問に対しての返答が答えになってない
- 自社品の薬価を知らない
あと少し細かいけど、「KOLは〜」って何度も言うのは、KOLを盾にしている感が少しありますよね
「先ほども申し上げたように〜」って何度も言うのもあんまり良くないんじゃないか?
今後は、社長とか、現場研究者とか何人か入れて開催した方が協和キリンにとっても良いのでは?
一人で全部応対しているの他社で見たことないぞ笑
聞いてて一番気になっただけなので、どうでもいいことですが笑
でも、こういうところから会社の雰囲気が読み取れますからね!
もう少し具体的な技術とか非臨床開発品の話が欲しい
開発品紹介が既に上市されている2製品に関する話で、前臨床のパートもかなり抽象的な話が多かったですね。
分からないけど、投資家さんとかは「新しい開発候補品のメカニズム」とか、「新しい創薬プラットフォームの話」とかを聞きたかったじゃないか?
前回R&D説明会でもあまり具体的な話はしてないから、会社としてそういう方針なのかな??
近年の特許だけざっとみると、
- GPC3とTfRに結合するバイスペシフィック抗体
- CD3に結合するバイスペシフィック抗体
- CD40とfapに結合するバイスペシフィック抗体
- Fn14抗体及びその使用
- IL-36抗体とその用途
- CADM3に結合する抗体
とか色々出てる様子ですけどね〜
多分来年臨床入りする二重特異性抗体とかは、がん抗原とCD3のやつとかじゃないかな?
最後に
さて、今回は2022年度の協和キリンのR&D説明会を紹介しました。
個人的には二重特異性抗体などの新規臨床候補品に非常に興味があります。
さらに、ADC製品についても、2種の標的に対する契約を結んでいるので今後の展開が気になりますね。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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