【最新R&D事情まとめ】2022年度エーザイ R&D説明会を徹底解説

製薬企業分析

こんにちは、ティーダです。

先日、2022/9/13にエーザイのR&Dベーシック説明会が開催されました。

内容としては、

  • ニューロロジー領域
    • レカネマブ
    • 後続アルツハイマー関連パイプライン
  • オンコロジー領域
    • 創薬戦略
    • 前臨床のパイプライン

という既出情報を含めたエーザイの研究開発を網羅する内容でした。

そこで、今回はこの説明会の重要そうな点をピックアップしてまとめていきます。

この記事を読むことで、「エーザイの研究開発の2022年現在地点」を良く理解出来るでしょう。

前回の事業説明会2022の内容もまとめていますので、こちらも参考にしてください!

エーザイのIR資料は独自路線を極めすぎて、ちょっと読みにくいです笑



ニューロロジー領域

超注力品:レカネマブ

まずは、エーザイの命運を握っている超注力開発品レカネマブ (BAN2401) についてかなり詳しく紹介されています。

レカネマブとは?
  • 毒性の強いAβプロトフィブリルを標的とする抗体で、モノマーやフィブリルに対しての親和性は低い
    • 副作用発生頻度が低く、素早く脳内アミロイドを除去し、臨床アウトカム改善を期待
  • Ph2でPoC確認済み、PoMも達成
  • Ph3を現在実施中
エーザイR&Dベーシック説明会資料を改変

臨床試験結果

201試験 (早期ADに対するPh2試験) では以下の結果で、PoCを達成しています!

  • 用量依存的に有意なアミロイドPET値の低下
    • 最高用量投与患者の81%がアミロイド陰性に転換
  • レカネマブ投与群のベースラインからの病態進行は、プラセボ投与群と比較し、有意な変化を示した (症状進行抑制)
  • Aβプラーク低下と臨床症状の変化に相関あり
  • 脳脊髄液を用いたバイオマーカー測定でも投与群で改善

Ph2試験結果については一貫して症状改善結果が認められ、有望な印象です!

申請に向けた現在の取り組み

上記のPh2試験結果を受けて、Ph3試験:Clarity ADが進行中です。

試験としては、Ph2試験結果を反映して様々な角度からの評価が組み込まれた「より強力な薬効を示すデザイン」になっています。

2022年9月に最初の主要評価項目について結果が分かる予定です!
(現状は順調に試験は進行しているようです。)

迅速承認制度に基づく生物製剤ライセンス申請を米国FDAが受理しています。

また、日米欧において、Ph3試験結果に基づく2022年度中の申請準備が進行中です!

後続ADパイプライン

さらに、レカネマブ後続品として包括的にアルツハイマーを攻める研究戦略を提示しています。

戦略のイメージ図としては以下です。

エーザイR&Dベーシック説明会資料を改変

アミロイドβ戦略だけでなく、「タウ」「神経・シナプス変性」をターゲットとした創薬にも注力しているようですね。

先日、αシヌクレインのイメージングについての共同研究結果も報告されていましたが、αシヌクレインは神経変性に関わる創薬ターゲットとして有名ですね。

慶応大学医学部内にEKIDという研究所を設置し、AD患者の臨床検体や臨床データを元にした新規創薬研究も進めています!



オンコロジー領域

続いて、第2の注力領域であるオンコロジー領域について紹介します。

現在のオンコロジー領域は、レンビマ (約2000億円/年) 、ハラヴェン (約400億円/年) を中心に、エーザイの売上全体を支える非常に重要な疾患領域です。

エーザイが現在取り組むオンコロジー領域の戦略を示した図が以下です。

エーザイR&Dベーシック説明会資料を改変

難治性がんへの低・中分子

この創薬コンセプトでは、レンビマとキイトルーダの併用治療に対して耐性を獲得しているがんの研究を起点にしています。

E7386:CBP/β-catenin阻害剤

Wnt-βカテニンシグナルの細胞内シグナル伝達分子であるβカテニンを阻害します。

PROSM BioLab社との共同創出品です。

非臨床では、レンビマ&PD-1抗体&E7386の三剤併用で優れた薬効が認められており、単剤Ph1試験でも少数群ですが腫瘍縮小効果が認められています。

現在、キイトルーダとの併用Ph2試験を実施中で、三剤併用も治験を検討中です。

E7386は単剤ではなく、キイトルーダとの併用投与がメインになっていくでしょう!

次世代ADC:MORAb-202

抗葉酸受容体α抗体 (ファルレツズマブ) とハラヴェンを組み合わせたADCになります。

既存の免疫チェックポイント阻害剤に抵抗性の「漿液性の卵巣がん、子宮内膜がん、腹膜がんなど」において葉酸受容体αが高発現していることが明らかになっています。

また、ADCに特徴的なバイスタンバー効果によって、がん関連線維芽細胞 (CAF) への細胞傷害作用も期待されています。

プラチナ抵抗性卵巣がんを対象としたPh1試験において、優れた抗腫瘍効果と問題ない安全性が確認されいます。

現在米国Ph1/2試験が実施中で、新たなPh2試験も計画しています。

新規ADC創薬戦略

スプライシングモジュレーターをペイロードにしたADC

BMSとの戦略的提携を展開した創薬プランになります。

スプライシングモジュレーターをがんに送達させることで、がん細胞内で異常なスプライシングを誘導します。

その結果、異常なmRNAが生成され、ネオアンチゲンが誘導され、がん免疫が活性化するという仕組みです。

これによって、免疫原性が低いPD-1抗体等が効かないがんに対して、免疫を活性化出来ることを期待しています。

個人的な見解

レカネマブに期待大!あと2週間で結果出る?

この記事を書いている2022年9月に、レカネマブのPh3試験のPrimary EndpointのReadoutが出るそうです。

この試験結果を起爆剤に全ての申請・承認が始まるので、本当にドキドキですね。

あとは、アデュカヌマブような微妙な結果になったときにエーザイがどうするのかが注目です。

Ph3試験を再度やり直すのか?アデュカヌマブと同じように申請して、臨床で使って貰うように働きかけるのか?

いずれにしてもエーザイにとってのターニングポイントは今月です!!

エーザイ得意の低分子創薬をADCに展開させるのは良い戦略

エーザイと言えば、アルツハイマーが有名ですが、創薬技術としては低分子技術が世界トップクラスだと思っています。

しかし、低分子だけでは今後創薬として難しいことは言われているので、様々なモダリティに展開していこうと考えたのでしょう。

その中で、PROTACADCは低分子に強いエーザイにピッタリのモダリティだと思います。

ADC技術では、リンカー設計等が重要なポイントになっているとは思いますが、エーザイでは自社内で技術を確立して、継続的な応用に繋げている点も素晴らしいですね。

2007年に買収したモルフォテック社がADCの起点になっているでしょうか?

最後に

今回は、エーザイのR&D説明会について内容をまとめて紹介しました。

エーザイが現在取り組んでいる研究開発がよくまとまった良い説明会だったと思います。

レカネマブのPh3試験が間近に迫っていますので、株価と共に注視していきましょうね!

また、新規ADC技術についてターゲットタンパク質や開発品情報が近いうちに出てくるだろうので、注目して行きましょう!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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