こんにちは。ティーダです。
先日の2022年4月25日から5月13日で、「主要内資製薬会社の決算」が出そろいましたね
今回も各社の決算内容をざっくりまとめた上で、各社の注目トピックを厳選して紹介していきます!
各社の決算を全て見てまとめるのは本当に疲れます。。。。(笑)
前回の決算のまとめ記事もあるので、経時的に見れば製薬業界全体の流れや各社のニュースを追えるようになると思います!
継続的に一緒に勉強していきましょう!!
各社の決算一覧まとめ
こちらが主要内資製薬企業の決算まとめです。(売上高、営業利益、通期予想)
売上高は全ての企業で前年比で増加しています。
これは円安が大きく影響しています!
営業利益は、武田、大塚、住友、塩野義、田辺三菱で減益です。
田辺三菱は今期も赤字ですが、前期は585億円赤字だったので、改善は見えています。
来期には黒字転換を予想しています。
来期の通期予想を見ると、中外製薬と第一三共の売上高が同じになることが予想されています。
(営業利益は4倍違いますが、、、)
各社の厳選注目トピックス
ここでは説明会資料を全て見た私が厳選した「各社の注目トピック」について簡単にまとめていきます。
武田薬品工業
- 売上高は増収も、円安で販管費や研究開発費が増加したことが影響し、営業利益は減少
- エンティビオは5,218億円の売上 (+22%増)
- 単年度では最多の新規候補物質の承認を取得
日本(4件)、中国(3件)、米国(2件)、欧州(1件) - Novavax社のコロナワクチンについて、日本における初回接種および追加接種での承認取得
- TAK-609 (ハンター病) は開発中止
- TAK-755 (免疫性血栓性血小板減少性紫斑病) はPh2完了、PoC試験へ移行
- TAK-906 (糖尿病性胃不全麻痺) を開発中止
- JCRファーマとの血液脳関門通過技術を用いた遺伝子治療について共同開発締結
ベルケイド (売上1100億円) とビバンセ (売上3271億円) のUS特許が近日中に満了することが懸念されています。
しかし、現状の成長製品10品と新製品の勢いによってそのマイナス影響を克服できることを強調していました。
財務状況に対して投資家が不安に思っているため、その不安を払拭するような資料作りをしている印象でした。
大塚製薬
- グローバル4製品 (エビリファイメンテナ、レキサルティ、サムスカ、ロンサーフ) は前年同期比で+18.0%の1,356億円
- 減損損失238億円の計上により、営業利益は58.6%減少
- バダデュスタットの腎性貧血に対する開発中止によって、アケビア社との契約終了。
減損損失236億円を計上
- バダデュスタットの腎性貧血に対する開発中止によって、アケビア社との契約終了。
- 大鵬薬品工業の自社創製FGFR阻害薬フチバチニブをFDAに申請受理
- カリナンパール社を買収して、CLN-081/TAS6417を獲得 (ブレークスルーセラピー指定製品)
- ASTX727 (急性骨髄性白血病) でPh3試験でPoC獲得
バダデュスタットの減損による減益が見られましたが、グローバル4製品の成長は順調です。
期初に立てた予想売上は達成を見込んでいます。
少し気になるのは、AVP-786の開発の遅延です。
コロナによる患者リクルート難航を理由に遅延していますが、一度Ph3試験を失敗したことがある製品だけに減損の懸念は拭えませんね。
アステラス製薬
- 3期ぶりの増収 (4%増)。通期予想に対しては未達。
- イクスタンジは5343億円 (16.6%増) 、2022年度は6425億円 (20%増) を見込む
- 遺伝子治療薬 AT132の開発計画の見直し (312億円) 、DNAワクチン ASP2390の開発中止(113億円) 、GITR抗体 ASP1951の開発中止 (52億円) で、合計約500億円の損失を計上
- fezolinetantは、MOONLIGHT 1試験 (アジア) およびSKYLIGHT 4試験 (US) の結果を取得
- ミトコンドリア領域のASP1128 (PPARδ調節薬) を開発中止
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象としたAT702、AT751、AT753を開発中止。
来期、約200億円の損失計上予定。
ASP1951, ASP1948, ASP8374は全てポテンザ社を2018年買収時に獲得した製品ですが、今期までで開発は全て失敗したことが明らかになりました。
また、オーデンテス社の買収時に獲得した、AT132は開発差し止め、AT702, AT751, AT753は開発中止。残りはAT845とAT466のみです。
これは買収時のパイプラインの見極めが甘いと思われても仕方ない気がしますね。
fezolinetantについては、MOONLIGHT 1試験はPoC未達、SKYLIGHT 4試験はPoC達成という結果です。
会社的には、MOONLIGHT 1試験はアジア実施の非米国INDの試験のため、FDAの承認審査には影響ないと考えています。
Ph1試験進行中のASP1570は低分子DGKζ阻害剤だそうです。
このターゲットは、ギリアドとカルナバイオ社の共同開発品と同じターゲットになります。
BMSなどの競合も入っているので、有意性を示す必要がありますね!
第一三共
- 売上高が初の1兆円台に乗った
- エンハーツ:
2022年度は売上高1284億円を予想 (対前期 +630億円)
HER2低発現乳がんに対して、FDAの画期的治療薬指定 (本剤5つ目の指定獲得)
HER2変異NSCLCに対する申請受理及び優先審査の指定 (US) - Dato-DXd:肺がんと乳がんで有効性確認、新たに4がん種を試験に追加
- HER3-DXd:HERTHENA-Lung02試験 (EGFR変異NSCLC 2L, Ph3) を2022年度上半期に開始予定
- DS-7300 (B7-H3-ADC) :Ph1で有効性シグナルを確認。小細胞肺がんに対するPh2試験を開始予定。
- DS-5670 (コロナmRNAワクチン) :
初回免疫投与は、2022年度上半期にPh3試験を開始計画
追加免疫投与は、2022年中の実用化を目指す
エンハーツとリクシアナの成長によって、売上高は堅調です。
また、3ADCと他のADCについても臨床試験の進捗は順調です。
懸念としては、米国でシージェン社との特許訴訟が継続していますが、社長は事業への影響はないとコメントしていました。
コロナワクチンはまだ少し時間がかかりそうですね。
LNP-mRNAの技術に関する具体的な言及がなかったのが少し気になりますが、次のR&D説明会などでまた話はあるでしょう!
中外製薬
- ロナプリーブをはじめとする新製品やロシュ向け輸出等により、想定通り大幅な増収増益
ロナプリープは608億円分を政府に納入 - リサイクリング抗体技術について、アレクシオン社との訴訟和解金919億円を獲得
- バビースモ:nAMD/DMEに対する承認を取得
- RG6321 (PDS):新たな眼科領域開発品として、国内P1/2試験を開始
- 導出品ミチーガ®国内承認:アトピー性皮膚炎に伴うそう痒に対してマルホ社が承認を取得
- RG7992 (非アルコール性脂肪肝炎) は開発中止
- RG7828 /mosunetuzumab (濾胞性リンパ腫) は開発開始
コロナ特需も受けて順調な1Qになりました。
4半期で1870億円の営業利益は凄まじいですね!!
ロナプリーブについては3月末に政府と22年度の供給契約を結び、今期の売上高は2.6倍の1990億円となる見通しです。
しかし、オミクロン株との相性によってはキャンセルの可能性もありうる?
エーザイ
- レンビマが1923億円 (43.6%増) を中心に、グローバルブランドの伸長によって増収増益
- レンビマは、2022年度も2180億円を想定。小児適応試験も順調に進行中。
- 「メルクとのレンビマ関連受領金 (約350億円) 」と「BMSとのMORAb-202契約一時金 (約500億円) 」を獲得
- アデュカヌマブについて、エーザイの負担額上限を約400億円に設定を締結
- レカネマブ
- FDAの迅速承認申請を完了
- Clarity AD (301試験) にて、順調な進行と良好な安全性・有効性が期待するデータが出てきている
- 2022年度中に日米欧で承認申請を計画
- 新規CBP/β-catenin阻害剤 E7386のPoCを獲得 (Ph1b)
アデュカヌマブに振り回された1年でしたね。
しかし、レカネマブへの移行が非常に素早く、今年度中に日米欧に申請とは驚きます。
ガン領域の開発品も順調に進んでいるので今後が楽しみです!
住友ファーマ
- 大塚製薬との提携⼀時⾦収益 (303億円) により前期⽐増収
- ulotaront、SEP-4199を含む4化合物に関する⼤塚製薬との共同開発・販売に関する提携契約の締結
- スミトバント社関連の費⽤増で減益
- 中期経営計画2022は未達の見込み
- コロナ影響などで、新製品の市場浸透が遅延していることで売上高500億円の下⽅修正
- 売上高減少の影響で、コア営業利益も300億円の下⽅修正
- ラツーダは2023年2⽉に独占販売期間終了予定
- DSP-3456 (治療抵抗性うつ) をPh1試験開始
2022年に完了する中期経営計画2022は未達になることが公表されました。
また、ラツーダのUS売上高は特許切れによって2022年度から減少していく見込みです。
これからどうするのでしょうか?
パイプラインの中にラツーダクリフを埋める製品はないように思えます。
田辺三菱と同様に親会社に吸収される未来がいよいよ現実化してきた気がします。
田辺三菱製薬
- 重点医薬品の売上高が増加したものの、薬価改定や新型コロナウイルスワクチン等の研究開発費増加によって営業利益は減益
- MT-5547 (変形性関節症) について、事業計画を見直した結果、回収可能価額が予定を下回ったため、減損損失を158億円計上
- 来期は黒字化を見込む
- ラジカヴァ経口剤が米国で承認
- 5種混合ワクチン (MT-2355) を日本で承認申請
まだラジカヴァを擦ってますけど、さすがにそろそろ限界では?
黒字転換して長期的に成長していくビジョンが全く見えないのですが、将来的にどうするのでしょうか?
協和キリン
- 国内医薬品売上は38億円の減収
ダーブロックが11億円 (569.7%増) となるなど新製品群が伸長したものの、薬価改定の影響に加え、パタノールの大幅な減収 (18億円、71.9%減 )が影響 - 海外売上は、グローバル3品が順調に進捗
クリースビータが222億円 (36.6%増)、ポテリジオが42億円 (33.7%増)、ノウリアストが11億円 (18.9%増) - ME-401 (血液がん) は、単群試験での迅速承認は困難なことが明らかになったため、ランダム化試験を実施
- KHK4083/AMG451 (アトピー性皮膚炎) のPh3が2022年中頃に開始予定
- KW-6356 (パーキンソン病) のPh3試験が2022年下期に開始予定
KHK4083/AMG451 (アトピー性皮膚炎) については、かなり複数本のPh3試験が走る予定だそうです。
また、Amgen社との開発戦略とロイヤルティの詳細が公表されていました (初めてですよね?)
日本以外では2桁%台の売上ロイヤルティを受け取れるそうです。
また、マイルストン収入で累計1000億円程度を受け取る予定です。
KHK4083/AMG451は次期ブロックバスターとして非常に期待です!
やはり自社製品でブロックバスタークラスを出せる企業は生き残りそうですよね!
小野薬品工業
- オプジーボ (13.8%増) とフォシーガ (64%増) 等の貢献で全体的に増収増益
- オプジーボは2022年度は1550億円 (37.8%増) の売上高を見込む
- 共同研究費や治験準備費用が増加したことや、開発中止を計上したことで研究開発費は759億円 (21.6%増) に膨れた。
- 2022年から5年間で、6000億円のR&D投資と2500億円以上の戦略投資を予定
- オプジーボの胆道ガンに対するPh2試験を中止
- 「オプジーボとIDOⅠ阻害剤」、「オプジーボとTIM3抗体」、「オプジーボとPEG化IL-2」のそれぞれの併用試験を開発中止
- ONO-7912はPh3試験で有効性が認められず開発中止
オプジーボの稼ぎ時が来ています!
2031年の特許切れまでにどれだけ売り上げられるかが楽しみです。
個人的には、「継続的な成長に向けた戦略」という資料の内容が薄すぎて、何を計画しているのかが全く分かりませんでした (笑)
塩野義製薬
- 国内医薬品売上はサインバルタ後発品参入、インフルエンザ薬売上がほぼゼロ等の理由で減収
- ドルテグラビルの特許侵害訴訟の和解によって、一過的に約300億円を獲得したため、全体では増収を達成
- COVID-19関連の研究開発への投資に伴い、研究開発費は過去最大金額となる730億円となり、前年比では減益
- コロナワクチンは6~7月を目処に申請予定
- 2022年度に、コロナ関連で売上高1100億円を予想
- S-637880 (神経障害性腰痛) は安全性懸念のため開発中止
- BPN14770 (脆弱X症候群) とSDT-001 (小児ADHD) はPh3を開始
- 日本国内における研究援助・奨励を行うシオノギ独自の新財団を設立
なんといってもコロナに振り回された1年でしたね。
コロナワクチンは近日中に治験を終え、申請に向かうことが想定されます。
コロナ経口薬は既に2022/2/25にPMDA申請していますが、未だ承認は下りていません。
しかし、5/13に国会にて緊急承認制度が可決されたため、そちらへ切り替えも考えているそうです。
コロナ経口薬は9月頃の承認を見込んでいるとのことでした。
各企業を並べて見ると?
今期もそれぞれの企業で色々な出来事が起こっています。
決算全体を見ていると
順調に成長している企業:
中外製薬、第一三共
まだ先行きが不透明な企業:
アステラス、大塚製薬、エーザイ、武田薬品、協和キリン、小野薬品、塩野義製薬
先行きが厳しい企業:
住友ファーマ、田辺三菱
という印象を受けました。
今後の決算でそれぞれがどう変動していくのかが目が離せませんね!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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